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第1章.冴えない毎日

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11.部活説明会

 学院ホールにて、スクリーンに動画が映し出される。七、八人でハンドベルを演奏する様子が流れている。学は手元のプリントに目を落としていた。


 部長 藤咲ふじさきレイラ

 顧問 山下富久やましたとみひさ

 コーチ 末続恭子すえつぐきょうこ


「今、先輩方は引退し、私ひとりで演奏しています。主に演奏する場所は学校、教会、老人ホーム、養護施設などです」


 壇上でその部長、藤咲レイラが小さく言った。


 あれから一週間。今日の午後は部活動紹介のため、一年生全員が学院ホールに集められていた。各部長が映像、画像に合わせて部活動説明をする。


 学は説明する彼女を眺めながら、偶然なのだろうが、部員が彼女ひとりになってしまったのは初対面の下級生に「入らない方がいい」などと言えてしまう彼女に原因があるような気がしていた。


 各部活動で、新入生歓迎のための日にちを設けているらしい。ハンドベル部は毎週月・木曜が活動日とある。


(部長に断られちゃあな)


 胸の中で悪態をつく学だが、映像の中のような複数人で演奏するベルにも魅力を感じていた。色々思うことはあるが、中学までの世界には存在しなかった見知らぬ楽器が気になって仕方がないのは事実。


ーー誰にも構わずやりたいことやれよ。


 西田の言葉が脳裏によみがえる。


(明日、木曜か)


 214教室が部室となっているらしい。


(やっぱり、行ってみようかな)

 

 本当に、ハンドベルなんかやりたいのかと思う。楽譜はようやく読めるぐらいの知識しかないし、幼い頃半ば強制的に2〜3年習わされたピアノぐらいしか、楽器に触った経験はない。


 第一、あの時はとっさに彼女を助けようとあんなことを言ったのではなかったか。本心から言ったなどとはにわかに自分でも信じられないのだ。



 ……などとごちゃごちゃ考えつつ、今学はひとり214教室の扉の前にいる。


 扉の向こうから何やら言い争う声が聞こえて来る。誰かいるようだ。恐る恐る重い扉を開けると、中から年配の女性の声が飛び出して来た。


「あなた方が本格的に演奏をしたいと言ったからそうしたのに、去年の藤咲さんの事件の後、皆辞めたじゃないですか。今年も部員がいなかったら、再びうちの部に吸収されますから。そしたらあなたにも辞めて貰います。よろしいですね!」


 つかつかと足音が近付いて来る。掴んだドアノブを反対側から引っ張られて、学は少し前につんのめった。はっと前を見、それが宗教主任の石室陽子いしむろようこ牧師であることに学は驚いた。礼拝の時はあんなに穏やかな顔なのに、今見せた表情はほぼ鬼の顔だった。


 石室は学に何の感情も示さぬまま、するりと出て行った。開け放たれた扉の向こうには、目元を赤くした、コーチとおぼしき若い女性が立っている。


(何だよ、来て早々この展開……)


 学は首をすくめたまま、残された女性と対峙した。


 彼女はスリムな体に沿った花柄のロング丈のワンピースを着ていた。学を見付けると、スリッパをパタパタ言わせて慌てて笑顔でやって来る。


「こ、こんにちは!」


 甲高い声で、彼女は空元気に挨拶をした。学はとりあえず、扉を閉め教室の中に入る。


「私、コーチの末続恭子と申しますー。あ、どうぞこちらに座って!」

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