カワセミくん大いそがし 1992年6月12日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1992年(平成4年)6月12日号掲載
カワセミくん大いそがし
午後五時二十分、入院中のヒナたちへの給餌が一段落した。暗くなるまでまだ間がある。よしっ、ひとっ走りカワセミの様子を見に行ってこよう。
保護区の中でカワセミが巣穴を掘っているのが見つかったのは四月初め。四月末か、遅くも五月早々にはヒナがかえっているはずだ。カワセミの巣穴は、新池の崖を掘りくずして作った土の崖の中ほどにあり、五十メートル離れた対岸からよく見える。巣穴の前にはくいを立てて止まり場にしてある。
池の中にはアシが青々としげり、ツバメが何羽もアシの葉先をかすめるように飛びまわっていた。しげみの中でバンの声がする。
十五分ほど待っただろうか。巣穴の前のくいに鳥が止まった。鮮やかなオレンジ色、カワセミだ。双眼鏡で見ると嘴が上下とも黒いので雄とわかった。何かくわえているようだが、小さくてはっきりしない。雄のカワセミは、くいの上で向きを変えてからさっと舞いおり、巣穴の口に一瞬止まって、すぐ穴に入った。そして数秒もたたないうちに再び姿をあらわし、もう一度くいに止まってから鴨場の方へと飛び去った。
更に待つこと十分。また杭に戻ってきた。やはり雄。獲物は若いザリガニらしく、茶色くて嘴からはみ出している。獲物が大きすぎたのか、くいに止まって考えこむ様子で、一分ほどすると獲物を持ったまま上池の方へと飛び去った。どうするのか気になって待ってと、三分後、同じ獲物を持って戻ってきた。そしてまた同じ方向へ飛び去った。どこかで石か枝に獲物を叩きつけ、食べやすくしていたのかも知れない。次に戻った時にはくいに止まらずに巣穴へ飛び込んだので、結末が見とどけられなかった。前回同様、巣穴には数秒と留まらず、すぐ飛び出して鴨場へ向かった。
あたりはそろそろ薄やみがせまってくる。となりの上池をひとまわりして、繁殖中の四組のセイタカシギの卵を大いそぎで確認し、もう一度カワセミの巣穴の見える位置に戻った。上空をカワウがつぎつぎに飛ぶ。ツバメたちはそろそろねぐらにつくのか、数が減ってきた。
巣穴のあたりで何かが動いた、と思っているうちに、カワセミが飛び出した。入るところを見そこねたらしい。四十分間に少なくとも出入り三回、この間まったく声を出さなかった。ヒナに餌を運んでいることは間違いなさそうだ。順調ならば六月初めにはヒナが巣立つことだろう。




