四月六日 カワセミの巣づくり 1992年5月1日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1992年(平成4年)5月1日号掲載
四月六日、カワセミの巣づくり
土手に上がる前から、チーッ、チーッと鋭い声が聞こえていた。
三月なかばごろから、保護区の新池を見に行くたびにカワセミを見かけた。時には二羽がにぎやかに鳴きあったり、求愛らしい行動が見られることもあった。冷えこみや雨で桜の開花も行きつ戻りつといったこの春だが、汗ばむくらいの好天が何日かあったあと、一週間ぶりで池をのぞいた。中央の土手には、友の会の森田さんが昨秋独力でカワセミのためにひろげた土の崖がある。声はその近くで聞こえる。近よったとたん、崖の中途から飛び出した鳥がいる。目で追った。まちがいない、カワセミだ。
土の崖はわざとオーバーハングさせてあるので、上から見おろしても何もわからない。水面に人影が映ったのか、小魚のカダヤシの群れがいっせいに岸から遠ざかるのが見えた。カワセミにはかっこうの獲物だ。
崖の横手を水面近くまで下りてみると、あった! 掘りくずした土の小さな山。その真上、水面から七十センチほどのところに、径五センチほどの穴がある。よく見ると、すぐ横にもっと大きな土の山。無理にもう一歩下りてのぞきこむと、同じような穴が見つかった。五十センチほど離れてさらにもうひとつ、なんと合計三つもの巣穴。
三つの巣穴を見くらべてみた。手前の穴の下にある土の山は両手にひとすくいくらい。中央の穴の下は洗面器に一杯分はあるだろう。奥の穴から掘った土の山は雨に打たれたらしく、水中に没しているので、よくよく見ないとわからない。中央の穴は張り出しの下でいかにも具合がよさそうだし、ふちには糞のあとがある。たぶんこれが本命だろう。
ここまで見とどけて、崖から離れた。巣作りのまっ最中なのか、そろそろ産卵にかかるのか、もう卵を抱きはじめているのか。洗面器一杯の土を掘り出したら、どのくらいの深さの巣穴が掘れるのか。ゆっくり観察したいところだが、当分はそっとしておこう。今年こそ、ヒナを連れたカワセミ一家の姿が見られるかもしれない。森田さん、きっと大喜びされるだろうな。
青草の中に点々と開いたイタドリのまっ赤な芽を目に残しながら、新池の土手を後にした。




