暑い、暑い、暑い! 1990年8月3日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1990年(平成2年)8月3日号掲載
暑い、暑い、暑い!
高温、少雨、多湿と典型的な夏日が続く。あごを出しそうな陽気だが、日が暮れると、勝手口の笹の葉先に一つ一つ露のしずくがついて、通るたびに腕や首すじがひんやりとする。きらきら光る小さな水滴に思わず見とれてしまった。
暑さと乾燥、大歓迎、という連中も結構多いようだ。7月20日ごろのこと、餌場の世話を終え、岸の草むらをわけてボートの様子を見に行こうとしたら、大きな蛇を見つけた。全体はこげ茶色、ぼんやりと縞が浮いた、いわゆるカラスヘビ・タイプの青大将だ。脱皮したばかりらしく、うろこはつややかで、にぶい虹色の光沢があった。ほっそりしたしっぽの先から10センチきざみに目測して、1メートルちょっとになったところで、ようやく頭が見えた。全長は2メートル近い。ところが頭のそばに、もう1本、そっくりなしっぽがあるではないか。2メートルの「大蛇」が仲よく2匹。軽くしっぽをつまんでおどかしてはみたものの、さすがにそれ以上やぶこぎをする勇気がなくなって、こそこそと引き返した。
風のないむし暑い夕方、羽蟻が一斉に羽化した。街灯のまわりで何百匹もの羽蟻が飛び回っている光景は、十年このかた見ていないものだ。蛍光灯のすぐ下に巣を構えたオニグモは、次々とかかる羽蟻を追って、あっちこっち走り回っては獲物を糸でくるんでいたが、張りかえたばかりの真新しい網は、あっという間に糸の包みと破れ穴だらけ。クモもしまいにはくたびれたのか、獲物がかかっても放っておく始末。
暑さでうだりながら、定例のフナムシの調査から戻った東邦大学の実験助手さん。「暑いとフナムシがものすごく元気で、つかまえようとすると、ぴょんぴょんはねて逃げるんですよ。吸虫管で吸うと、口にまで飛びこんじゃって」
ひええ!ぞろぞろしたフナムシが苦手な彼女。いくら研究室のテーマとはいえ、食欲減退、少々げんなり、といった様子。
鳥たちは暑さをそれほど気にしてはいないようだ。それでも、干潟で太陽にあぶられたッまっ黒なカワウは、口をあけ、皮膚が露出したのどを盛んにふるわせて、体熱を放出している。舌を出してはあはああえぐ犬と同じ理屈だ。日ごろ端正なポーズで紳士然としたアオサギは、翼をだらりと下げてひろげ、見るからにだらしない格好で日光浴中。
暑い、暑い、暑い!それでも、北からの旅鳥たちがふえてきた。鳥たちの秋は、もうはじまっている。




