あわてカイツブリ 1990年7月6日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1990年(平成2年)7月6日号掲載
あわてカイツブリ
6月6日の朝のこと。何気なく窓から外を眺めたとたんに、すぐ目の前の丸浜川の水面に、ぬれた草のごちゃごちゃしたかたまりが浮いているのに気づいた。ただのかたまりではない。水にひたって黒ずんだ葉ばかり集めた様子といい、丸くまとまった形といい、カイツブリの浮き巣そのままだ。
昨日までこんな巣はたしかになかった。水位上昇で浮き上がって流れ出してしまったのだろうか。浮き巣と言っても、ふつうはアシや杭のような支えがあるもので、舟のように漂うわけではないが、この巣は発泡スチロールの破片の上に作られたらしく、文字通り「浮いて」いる。見ているうちにも、少しずつ風に吹き流されて動いているのがわかる。
親鳥も気の毒に、と思って見ていると、不意に水面が波立って、すぐそばにカイツブリがぽっこりと浮かんだ。ほどなくもう一羽が姿をみせて、巣にはい上がった。まだ巣を見捨てたわけではないらしい。いや、それとも作り始めたばかりなのだろうか。
何はともあれ、せっかく観察舎のまん前にきてくれたのだから、それどころか、前代未聞の「丸浜川でのカイツブリ営巣」なのだから、どうにかして無事に巣作りをさせてやりたいと、急ごしらえの巣台を作った。はじめは浮いている巣を固定するつもりだったが、まだ卵もなく、集めた巣材もわずかなので、縁をつけた板きれをロープでもやって浮かべ、誘いの枯草を少し乗せておいた。カイツブリの夫婦はその日いっぱい丸浜川ですごし、翌朝は真新しい巣台に上がって、いくらか巣材を運ぶ様子も見せたが、二日後には姿を消した。
あわてもののカイツブリ夫婦。万が一、巣を作り、卵を抱き、ヒナをかえすことになったとして、家庭排水を水源とする丸浜川で、餌の魚をまかなうつもりだったのだろうか。もしそうだとしたら、そこまで水中の生物がふえているのであれば、すごい!




