トビにご用心 1989年11月10日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1989年(平成元年)11月10日号掲載
トビにご用心
ながらくごぶさたいたしました。11月1日から再開館。また利用者をお迎えできるのがうれしい。冬鳥も日増しにふえている。
でも目下のところ、頭の痛い問題児が1羽。10月22日の夕方、禽舎のかけがねがあけられて、長期入院中のトビが逃げ出してしまったのだ。二年前、六郷川付近から持ち込まれたもので、ヒナから飼われたらしく、翼が治っても一向に自立する様子がなかった。
これまで野鳥病院に入院した猛禽類のうち、フクロウやサシバなどヒナから育てたものは、観察舎を巣穴がわりにして、おなかがすくと餌をもらいに戻ってきた。そして自分でも獲物をとるというリハビリをしばらく続けてから、野外に復帰するのが普通だった。
ところがこのトビ「ピーヒョロ」は、数回の脱走歴にもかかわらず、自力で餌を探す気配がない。トビが逃げたと気をもむ間もなく、たいてい警察から連絡が入った。「大きくて、ワシみたいな鳥がいるんです」
すわ、と網をもってかけつけると、どこかのお宅のベランダや軒先から家の中をのぞきこみ、何かくれないか、とものほしげな目つき。室内に入って抑えこまれたり、半日かけて無双網で捕獲したり、まあ、結局は出戻り。あきらめて、一生飼い殺しにするほかはないということになった。健康な鳥をせまい禽舎に閉じこめておくのはいやだがやむを得ない。同じ理由で放鳥できない牢名主みたいなハシブトガラスもいる。
そこへこの脱走さわぎ。今回は観察舎とすぐ裏の福栄四丁目かもめ自治会のあたりに落ちついている。私たちとご近所の方々は、落ちつくどころではない。飛び方などは見違えるほどじょうずになったのに、運動のつもりか、屋根からすうっと舞いおりてきては、背後から人の頭をけとばすことがあるのだ。攻撃するというより、人をからかっているらしいが、翼を開くと1m半もあるトビのこと。近くを飛ぶだけでぎょっとする。まして頭や耳をけられたら大ショックである。
被害を出すまいと、主人が朝6時すぎから8時半ごろまで見張りをしながら餌をやっている。悪さをするのはたいてい朝で、午後になると芝生でくつろぐ人のそばにおりては、なれなれしくごちそうになっていることが多い。写真のモデルになったり、子供に追い回されたりして、ワルの気振りすら見せない。それえもつかまえようという気配がわかるのか、主人や私が近づくと、さっさと逃げる。
善良なトビらしいまっとうなくらしができるようになるのか、また出戻りの飼いごろしか、それとも悪さがこうじて、最悪の射殺に行きつくか。祈るような気持で見守っている。
トビにけとばされた方、本当に申し訳ございませんでした。心よりおわび申し上げます。




