こがらしに乗って 1990年1月1日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1990年(平成2年)1月1日号掲載
こがらしに乗って
「わっ、白鳥? 白鳥が飛んでるよ!」
昼食を終えて図書室から外を見たとたん、大きな白い鳥が三羽、保護区上空から南へ通過して行くのが見えた。時は12月14日12時43分。大あわてで観察室の窓にとびつくと、三羽はぐるっと方向を転じて保護区の上空を悠然と旋回し、ぐっと高度を落としてすぐ目の前を飛びすぎると、さらに一周してから観察舎の真正面、百メートルと離れていない水面に着水した。純白の成鳥二羽と灰色がかった当歳の若鳥が一羽。くちばしの黄色い部分が大きいオオハクチョウの家族だった。
観察舎から白鳥が見られたのはおよそ四年ぶり。前回は1986年の元旦に見られた六羽のコハクチョウだった。保護区の中には白鳥が好むような餌はないので、長期間の滞在例はないが、時たま美しい姿を見せてくれる。たいていは比較的小柄なコハクチョウの方で、オオハクチョウの記録は何と1976年以来二回目のことだった。
暖かい日が続く今冬は、いつになっても冬らしい実感がわかない。12月になっても勝手口のカンナがまっ赤な花をつけている。ようやく身のひきしまるような北風が吹いたと思ったとたん、白鳥の飛来。何かいいことがあるかな、とうれしくなってしまった。
好奇心たっぷりにあちこちと泳ぎまわる若鳥。庭の親鳥はずっと落ちついた様子で、それとなく若鳥を見守っている。「何だい、このでっかいの。へんなやつ!」とでも言いたげに、セグロカモメがしつこく白鳥たちのまわりを飛ぶ。
水面をゆっくり泳いでいた三羽は、まるで私たちにあいさつでもするように近づいてくると、目の前五〇メートルほどのUFO島の浅瀬に上がり、カモメたちと一緒にくつろいでしまった。一羽などは長い首を背中にまわして寝てしまうほど。
一時半ごろ、セグロカモメが急に飛び立った。警戒した白鳥の若鳥が二〇メートルほど水面を走ったのを合図に、三羽は沖へ向かい、島かげに姿を消した。
午後二時すぎ、白鳥たちは観察舎の直前を右から左へ次第に高度をあげて飛んだ。もう一度降りてほしいとの願いもむなしく、新浜鴨場上空で北西に向ったが、一羽だけ東へ向きを変えた若鳥を親たちが追うようにして、北北東の方向へ飛び去った。わずか一時間余りの休息だった。
開館十年を迎えた新館の全面改修工事が終わり、千葉県では観察舎の活動内容の充実をはかるため、友の会をまじえた協議会を発足させた。今年も忙しいがよい年になるのではないかと思う。新年おめでとうございます。みなさま、どうぞ本年もくれぐれもよろしく。
週に何回か、観察舎の仕事、特に傷ついた鳥たちの世話を手伝ってくださる方、いらっしゃいませんか。餌や水やり、小屋の掃除といった地味な仕事ですが、鳥や動物が好きな方には面白いと思います。興味がおありの方、蓮尾までご連絡ください。




