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新浜だより 行徳新聞掲載再録  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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所帯やつれ  1989年(平成元年)10月6日号掲載

新浜だより(行徳新聞再録) 1989年(平成元年)10月6日号掲載


   所帯やつれ


 窓のすぐ外を白い鳥が飛んだ。「うちのコサギ」かな、と思っていると、もう1羽のサギが後を追って飛んで行った。どうも様子がおかしい。

 「うちのコサギ」はもう何年もこのあたりに住んでいる。衰弱して野鳥病院に保護され、回復後放鳥されたものだ。とっくの昔に野外復帰しているはずなのに、ちょいちょい戻ってきては餌をねだる。禽舎の屋根にとまったり、冷凍ワカサギのバケツから凍ったままの魚をさらったり。なれなれしくて、遊びに来た子供たちの手からじかに餌を受け取ったりするので、けっこう人気のあるスターだ。

 でも、古顔をかさにきて新参の鳥にいばりちらすのは面白くない。栄養がゆきとどいてよくふとった「うちのコサギ」が、やせおとろえた「よそのコサギ」をおどかして、餌場のごちそうから意地悪く追い払うのを見ると、腹が立つ。

 そんなわけで、「うちのコサギ」が「よそのコサギ」を追うのは珍しくなかったのだが、この時は何と「うちのコサギ」が追われる立場。おまけに追っ手は、ひと目でそれとわかる今年生まれの幼鳥だった。

 若鳥がおとなを追いかける理由はただひとつ。

「おかあさん、おなかすいた。何かちょうだい!」

 なーるほど。「うちのコサギ」も所帯持ちになったというわけだ。

 9月初めにこうした光景を見かけて以来、もう3週間以上。あいかわらず「うちのコサギ」は若鳥たちに追いまわされている。ジジ ジ ジ ジ、ジャーッとしわがれた甘え声が聞こえてくると、あ、またやってるな、と、にやりとしてしまう。3羽の子供たちにつきまとわれて、さすがの「うちのコサギ」ももうくたくたというありさま。純白でしみひとつない若鳥にくらべ、うす黒くなった体羽といい、魚の油で汚れた口もとといい、見るからに所帯やつれした姿だ。それでも、追いすがる若鳥たちにしつこくせがまれては、餌を吐きもどしてやっている。

 「うちのコサギ」が雄か雌かはわからない。でも、これまでの意地わるい態度とはうって変わって、大きな図体のヒナ達の世話にやつれきった姿は健気でいじらしい。それいしても、若鳥たちはいい加減自立してもよいころ。これも餌付けの弊害なのかしら。

 丸浜川も新池も、カダヤシがどっさり。小魚が多いせいか、カワセミをちょいちょい見かける。新池ではユスリカの蚊柱がめっきり減ったようだが、カダヤシに食べられてしまったのだろうか。私達が目標としている「食物連鎖の回復」がそのまま見られているような気がする。


 行徳野鳥観察舎は10月末まで休館中。改修工事もだいぶ進んでいますので、今しばらくお許しください。


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