春の渡り 1989年(平成元年)4月7日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1989年(平成元年)4月7日号掲載
春の渡り
3月22日の夕刻、もう6時はまわっていただろう。新池で進められている水鳥ー望べくはセイタカシギー繁殖用の島作りの様子を見てから自転車で帰ってくると、堤防から白い鳥の群れが一斉に舞い上がった。ずいぶん遅い時間までセグロカモメがいるなあと思いながらよく見ると、鳥たちは全身純白で、カモメらしい灰青色などどこにも見えない。驚いたことに白鷺だった。60羽近いコサギとダイサギが4羽。サギたちは次々に堤防上に舞い下り、ずらりと並んだ。冷たい北風に向って首をややのばし、冠羽が風になびいている。レースのようなみの毛を飾った成鳥ばかりだ。見るからに到着したてといったおちつかない様子で、いつでも飛び立てる姿勢をとっている。明らかに渡り途中の群れと思われた。
5分ほど雑用をしてから堤防を見ると、サギたちの姿はもう消えていた。おそらく鴨場の林で夜を過ごしたのだろうが、更に北上を続けたのか、このあたりにとどまったのかは不明。
時はまさに春の渡りの季節。それでも、たとえばカモが渡る様子などというものは、私はまだ一回も見たことがない。夜渡るためなのだろうとは思うが、餌場と休息場の間を編隊を組んで飛ぶ様子と、いざ、遠い旅に出ようという様子がどのように異なるのか。
カモにとっては数百キロの距離はどうということもなく、ちょっとそこまで、とさりげなく出発するのかしら。
サギは昼間渡り、夜はねぐらにつくらしく、夕方大きな群れがかなりの高さから舞い下りてくるところを何回か見ている。餌場から帰る群れ、いわば「通勤族」はせいぜい十数羽の単位だし、ためらうこともなく、まっすぐ林か水浴びの水面におりる。渡り途中の群れはいかにも土地に不慣れな様子で、何度も何度も上空を旋回し、おりかけてはまた舞い上がる。ようやく着地してからも警戒を解かず、ちょっとしたことにもびくびくして飛び立つ。
「渡り」そのものは見られないにしても、気をつけていると鳥たちが動いている様子は何となくわかる。そろそろ夏鳥のツバメが到着するし、逆に冬鳥のオオジュリン(アシ原に住むホオジロ類の一種)などは目立って少なくなってきた。昨年11月に保護区で標識されたオオジュリンが、3月に宮城県の蕪栗沼で再捕獲されたとのこと。どんどん北上しているのだろう。
純白に近いユリカモメの大群が、しきりにまとまって飛ぶ。チュウヒ(タカの一種)におどされているのだが、五百羽以上もの群れがぎっしりかたまって舞うのは実に美しい。このまま旅立つわけではないが、春の渡り時に特有の行動だ。
よく練習して、気をつけて行ってらっしゃい。秋には無事に帰っておいで。




