ホースをつたって 1989年(平成元年)3月3日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1989年3月3日号掲載(平成元年)
ホースをつたって
「ねえ、誰か新池にマハゼを放した人、いないの?」
「いや、ぼくはザリガニとモツゴとカダヤシだけ」
「おれたちが取ってきたのはフナとバラタナゴ」
ご存じ、保護区の中に造成された新池は、二面併せて面積約1ヘクタール。水質浄化と水鳥誘致を兼ねて、行徳地区の家庭排水の流路である丸浜川を水源としている。丸浜川からポンプで揚水された水は、ごく浅い上池から30㎝前後の水深を持つ下池に入り、径5㎝のホース3本を用いたサイフォンで排水される。サイフォンからは小さな流れができて、ウラギク湿地と呼ぶ干潟に通じている。
さて、この下池に沈めておいた「ぽーぽ」(塩ビ管や竹筒を何本かまとめてくくったウナギとりの仕掛け)を上げてみたら、何と20㎝近いマハゼが4尾もいたのだ。「天ぷらに最高!」という声に、あわてて再放流。
魚やザリガニは何度も放しているが、誰もマハゼを入れた覚えはないという。いくら何でも、丸浜川から吸い上げられたとは考えにくい。そうすると、一番もっともらしい説明は、ウラギク湿地から流れをさかのぼり、ホースをつたって池に入ったというものだ。現に夏の盛り、サイフォンの「泡出し」(ホースに気泡が入って水の流れが止まるため、週何回か泡を出す作業が必要)が遅れて流れが干上がった時、小さなハゼが何尾か干物になってしまい、ひどく気がとがめたものだった。この時池に入ったハゼが生きのびていたに違いない。
2月11日、今年もセイタカシギが巣を作ってくれるようにとみんなで新池の島づくりをした。そのため半月前からポンプ揚水を止め、池の水位を下げた。サイフォンのところも水位が下がり、ホースのまわりしか水がなくなってしまった。
2月3日のこと、泡出しをするためにホースを持ち上げると、中に隠れていた大きなザリガニが水と一緒に流れ出して、ひどく迷惑そうだった。2本目のホースを上げると、大急ぎでもぐりこんだばかりの同じザリガニが、またはさみをふりたてて流れ出た。続いて3本目のホース。なぜか水が出ない。何かがつまっているようで、しゅうーっ、しゅうーっと空気が吸いこまれ、反対側の口から水が流れているようだ。そのうちに、ずぼぼぼっ、という奇妙な音がして、水と一緒にホースの口から流れ出たのは‥‥‥何と、胴回りがたっぷり20㎝はあろうという成長しきったでっかいウシガエルだった!
5㎝計の3本のホースは、百m離れた海と新池をつなぐささやかな接点、りっぱな水路だ。生きものたちの暮らしの場、あだやおろそかにはできまいぞ。




