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新浜だより 行徳新聞掲載再録  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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スズガモは海へ  1988年2月5日号掲載

新浜だより(行徳新聞再録) 1988年2月5日号掲載


   スズガモは海へ


 この季節、冬至をとうに過ぎて日足はのびはじめているのだが、朝の日の出は一年のうちでいちばん遅い。暗いうちに家を出る方も多いことだろうし、とことん朝に弱い私でさえ、雨戸を開ければまぶしい朝日にお目にかかれるありがたい(?)時期だ。

 ところが、のぼる朝日を背景にして金色に輝く水面に黒ぐろと浮かんでいるはずのスズガモの姿がない。保護区のスズガモの大群がやや不安定になってからもう6年たつが、今冬ほど大群が入る日が少ないのは初めてのことだ。しゅんせつ工事で観察舎の前を大型のクレーンショベルが通過した去年でさえ、これほど水面がさびしくはなかった。何しろ11月末からこっち、1万羽を超す群れは12月24日に見られたきりなのだ。

 そのかわり、今年はあちこちにカモの群が見られるという。保護区に入っていたスズガモ達の餌場である塩浜沖や船橋の海浜公園地先に数万羽のスズガモが落ち着いているのはもちろん、木更津の小櫃川にもスズガモやオナガガモ、ヒドリガモが合計9千羽くらいいたとのこと。東京湾で冬を越すカモが少なくなっているというわけではないらしい。

 スズガモが入らない保護区は、まるで活字がない新聞のようにがらんとしている。でもよく見ると、種類だけは例年どおりに出そろっている。スズガモがいない分、マガモやコガモがひきたって見えるようだ。狭い場所にカモがごちゃごちゃと集まっているのは、保護区のように銃猟から避難しているためか、餌付けが行なわれているか、どちらかの場合がほとんどで、人間の干渉が少ない本来の生息地の状態とは異なる。

 今冬、保護区にスズガモの大群が見られない最大の理由は、たぶん餌場の海で密猟などの危険がなくなり、保護区に逃げこまなくてもよくなったためではないかと思われる。暖冬やその他の原因もあるのかも知れないが、はっきりしたことはわからない。

 毎年、2月15日の狩猟期明けの後、何日か雨が続くと、それがスズガモの大群とのお別れになっていた。カモにとっては海でのびのびと過ごせる方がよいに違いない、と、頭では考えても、眼前にひろがるおびただしい大群が消えてしまったさみしさは、何とも言えないものだ。スズガモにとっては今年は暮らしやすい年なのだろう、と、一生けんめいに自分を納得させようとしているところ。まだ塩浜沖(三番瀬)の浅瀬が埋め立てられたわけではないのだから。




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