いたずらハクセキレイ 1986年2月21日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1986年2月21日号掲載
いたずらハクセキレイ
休み明けの日、観察室の窓ガラスがひどく汚れているのに驚いた。たしかひと通りふき終えてきれいになっていたはずなのに・・・・・・。そばに寄ってよく見ると、どうも小鳥の足跡らしい。二階南側の角が一番ひどく、窓六、七枚に被害が及んでいる。中にはくっきりとした泥の足跡までひと組残っていた。間違いない。ハクセキレイのしわざだ。
この冬、観察舎付近に住みついているハクセキレイは、クリーム色がかった顔の色から見て、当歳の若い雄と思われる。この鳥はガラスなどにうつる自分の姿におそろしく執拗な攻撃を続けている。まず標的にされたのが、玄関前にとめてあった三次館長の車で、サイドミラーに向って毎日何度となく体当たりしていた。当鳥にしてみれば、「おれのなわばりから出て行け!」というわけなのだが、鏡にうつっている「相手」がおいそれと退却するはずがない。興奮すればするほど、「相手」だって同じ強さでけんかを挑むことになり、どちらかが痛い目にあって逃げ出すという終わりがこない。さんざん愛車にふんを落とされて音を上げた館長は、ミラーに袋をかぶせてようやく難を逃れた。
正月休みの間、いつもの鏡が見当たらず、拍子抜けしたハクセキレイの絶好のお相手が窓ガラス。休館中で人はいないし、朝は太陽を受けてちょうどよく姿が映る。毎日せっせと通いつめては「一人ずもう」を続けていたのだろう。
こうしたなわばり争いは、十二月から一月まで続いたが、二月に入るとやや下火になった。自分の影を相手にする無益さに気付いたというよりも、乏しくなった餌を探すのに忙しくなったためではないかと思う。
ハクセキレイだけではなく、モズ、ジョウビタキなどもはっきりした冬のなわばりを作っている。冬、身近に見られる鳥たちが、いつもおなじみの顔ぶれだと思うと、何となく楽しい。それにしても、裏階段の手すりにとまって、ネズミモチの実を食べたまっ黒なふんを落として行く憎たらしいヒヨドリは誰だろう。
十一月二十八日にスズガモの大群が姿を消してから二ヶ月半。元旦だけは三万羽以上の大群と六羽のコハクチョウが入ってくれたのだが。他のカモまでいなくなり、がらんとした水面がさみしい。




