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新浜だより 行徳新聞掲載再録  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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白鳥の来た日 1986年1月10日号掲載

新浜だより(行徳新聞再録) 1986年1月10日号掲載


   白鳥の来た日


 十二月十三日昼前のこと、禽舎の世話が終わったところで、鳥の記録をつけておこうと三階の観察台に向った。浚渫工事の影響か、十一月まであれほど多かったスズガモは例によってほとんど見当たらない。ふと、遠い下北岬を見ると、黒々としたカワウの群の中に白いものが見えた。たぶんカモメだと思って望遠鏡を向けると、巨大な白いかたまりが三つ。白鳥だ!首を背の羽に埋めて眠っている。まわりにいるカワウはこの辺では最大級の鳥なのに、まるでこびとのように小さく見える。純白がまぶしい。一九七六年十一月以来九年、久々の飛来である。ここ数年、印旛沼をはじめ県下の各地で記録されているのに、なぜか保護区ではさっぱり見られなかったものだ。

 昼すぎ、記録写真をとりに、下北岬から百mほど離れた新淡水池に出かけた。成鳥二羽、若鳥一羽の一家族。種類はコハクチョウ。観察舎からもそれだけはわかっていたが、近くで見ると望遠鏡の視野からはみ出すほどの大きさ。つやもよく健康そうで、黄ばみもくろずみもない美しい鳥だった。灰色がかった若鳥はべったりと座りこみ、成鳥二羽は立ったまま休んでいるが、三羽とも目をぱっちり開けたままで、油断なくあたりをうかがっている。くつろいだ様子はなく、時々首を上げたり、落ちつきなく羽づくろいをしたりしている。初めての場所というだけでなく、ほんの三百mほどしか離れていない湾岸道路沿いに建設中の六階建ホテルの工事で、屋上でしきりに動いているクレーンが気になるらしい。

 まわりのヒドリガモやカワウは、資材が宙吊りになるたびに一斉に首を上げたり、水に入ったりして警戒していたが、白鳥一家はさすがに悠然と構えて、時々首を上げてのぞく程度だった。

 観察舎に戻ってしばらくしてから、カワウが舞い上がり、雁列を組んで上野方向に飛んで行った。白鳥たちは、まわりの鳥がいなくなってもまだ残っている。この分では夕方のカモの飛びたちまで残り、明日も来るかと期待していた。しかし、四時少し前、満ちてきた潮に追われて舞い立ったセグロカモメの跡に続いて、ひときわ大きい三羽が飛び立つのが見えた。まず南へ、次いで向きを変え、ぐんぐん近づいてくる。観察舎のすぐ前、約四、五十mのところで北東に向きを転じた。夕映えで金色に染まっている。三羽は楽々とはばたいて遠ざかり、幾重にも張られた高圧線を通過し、塩焼上空のあたりで北に方向を下り、やがて視野から消えた。

 観察舎開設以来十周年目の白鳥、何かいいことがあるかな、と夢をふくらませてくれた十三日金曜日のできごとである。



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