モズ君 こんにちは 1985年3月8日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1985年3月8日号掲載
モズ君 こんにちは
二月十八日の朝、焼却炉のそばから飛びたった小鳥に気付いた。灰色っぽい体、翼の白紋、長い尾―モズの雄だ。モズは遠くへ逃げようとはせず、すぐ上のニセアカシアの枝にとまり、こちらを見おろしてゆっくり尾を振っている。
注意していると、雄のモズはほとんどいつでも焼却炉のそばか裏庭にいることがわかった。とげだらけのタラノキのてっぺんや、干し草置き場のへりにとまってあたりを見回しているかと思うと、裏庭の地面におりて、掘りおこされた土くれをしらべている。犬の鼻さきの丸太にとまって、いらだった犬に吠えられたリ、おとなりの垣根でチュクチュクチュクキイキイと長いこと上きげんでさえずり、地面にさっと舞いおりては何かをつまんで飛び去ることもある。どうも意味ありげな様子だ。
雄モズは、焼却炉のすぐ裏の竹やぶにひどく執着していて、時には他の鳥を追い払うこともあった。ちょいちょい餌らしいものを運んでいるが、巣材の枯草や小枝を運ぶ様子はない。かと言って、雌モズを探したり、求愛するようなそぶりは見せないーこの結論はただ一つ、竹やぶに巣が作られ、つれあいの雌モズが卵を暖めているに違いない。
二月十八日かそれ以前に抱卵開始というのは、いくらモズでもずいぶん早い。でも、もし繁殖が順調であれば、三月早々にヒナがかえり、遅くも十日すぎになれば、ヒナの声が聞かれたり、餌と白いふんを交互に運ぶ親の姿が見られるだろう。
雄のモズはこの他に行徳高校はずれの水門付近に一羽、御猟場正門横の欠真間三角と呼んでいる泥地付近に一羽と少なくとも三羽は見られる。この付近で三つがいが巣をつくっていると思うと楽しみである。他の鳥にさきがけて、まだ肌寒い季節にヒナを育てるモズは、夏鳥が渡来して繁殖をはじめる五月になると、大半が山地へ移動し、秋のはじめにおりてくるとされる。
いつの間にか柳の芽がふくらみ、握りこぶしのようなニワトコの丸い芽も、少しずつ開いて花柄をのばしはじめた。春一番の南西風も吹いた。春告げ鳥のツルシギやコチドリの到着と、モズのヒナがかえるのと、どちらが先になるだろうか。




