将来
「・・・というわけで、内緒で婚約しちゃいました」
ミナが生徒会室で皆にそんなことを報告した。
ちょっとまて、そう思った悟は正しいと思う。
何せ、今は生徒会活動中の活動報告中だからだ。
俺たちの活動報告は、そんなものに含まれてない、と思う。
生徒会長がにちゃ~と笑った。
ああ、また弄られる。
自分もそうだったが、長く生きてきた妖にとって、ミナの反応は思いもよらないもので面白いらしい。
それに加えて、数百年引き籠った自分の反応も面白いらしい。
二人がそろうと弄られる。
「でも、それって、幸せだよね」
そんなことを愛しい少女が言うから・・・友人から楽しそうに弄られる位、自分は幸せになったのだろうと思う。
「おぬしら、生命の長さの違いはどうするつもりじゃ?」
生徒会長が聞く。
当然、そんな話を悟がしてないことくらいわかっているだろう。
自分だってわかっているのだ。
将来の結婚の約束までしたのだから、ちゃんとそういう話までしないと、とは。
だが、すぐに破たんした前回を考えると、そこまではっきり決めて、100%安全に結婚できると考えるのが怖いのだ。
・・・安心しきるのが怖い。
自分はまだまだだな、と自嘲しかけたところへ、ミナの声が聞こえた。
「子供、いっぱい作ろうと思って」
「「「「ぶっ」」」」
ミナを除く全員が吹いた。
もちろん悟も。
「あー、ミナや。そなたらの命について話しているのに、どうしてそんな答えになるんじゃ?」
・・・先見がある生徒会長にもわからない答えだったらしい。さすがだ。
「ん?生命の長さが変わらないから、子孫いっぱい作ったら、悟が寂しくない状態になるかなぁって」
あっけらかんとミナが答える。
・・・
・・・・
・・・・・
「あー、なら、がんばれ、絶倫」
ぽんっと生徒会長が肩をたたいた。
が、悟はその両肩が笑いをこらえて震えているのに気づいている。
いや、気づけば周り皆、同じ反応をしている。
「・・・・はぁ・・・」
溜息を一つ。そして、ミナに向かい合う。
「ミナ、生徒会長の力を使えば、ミナの寿命は俺と同じにできる。だが、それは人間じゃなくなることを示すし、親兄弟ともあまり会えなくなる」
「え?」とぽかんとした顔のミナ。
「まぁ、姫がそんなことを言いだすのは珍しいんですけどね」と副会長。
「そっかぁ・・・悟って愛されてるね」
そんなミナのセリフに、生徒会長はこれ以上楽しいことはない、と言うほど声高に笑う。
違う、愛されてるのはお前だ、と皆が心の中で突っ込んだ。
「まぁ、わらわにとって、年月など時の欠片にすぎん。そうなりたいと思った時に言うてまいれ」
「じゃあ、もうちょっと胸が育ってからお願いします」
ミナがあっさりとお願いする。
「・・・それでいいのか?」書記が口を挟む。
「人間じゃなくなるんだぞ? 親兄弟と決別するんだぞ?」
確かにその通りだ。
だから、悟は今まで言わなかったのに。
「ん? そんなの悟をとった時点で決まってるじゃない? 私は親兄弟より悟と生きるんだよ?」
ミナが言う。
実にあっさりとはっきりと、自分が何を選んだのかを的確に。
「茶でも淹れてくるか」と生徒会長が席を立つ。
「俺はじゃあ、その間にトイレ」と副会長も席を立つ。
「じゃあ、それまでにこのポスター貼ってきます」と書記が言う。
二人きりになった生徒会室で、ミナが傍に寄ってハンカチを目に当てるまで、自分が泣いてるなんて思わなかった。
自分が愛した少女が、世界の何より自分を選んでくれることがこんなに嬉しいなんて思わなかった。
親にすら捨てられた自分。
どこかで自分なんて、と思っていたのかも知れない。
紗枝の時も、身代わりでもいいと思ってた。
それを、この少女は・・・。
「っ・・・だ・・いじに、する」それだけを口にした。
「うん」そう簡単に答える彼女を、力いっぱい抱きしめた。
お付き合いいただいてありがとうございました。




