変化
「俺が変わった?」
「うん」
悟の質問に、源くんはごく簡素に答える。
だけど、その続きに言われた言葉は、ミナにとってもよくわからないことだった。
「悟が変わったから、皆がミナに興味を持った」
ミナの表情を見て、源くんは説明モードに入る。
・・・悟は、まだ入学したときは、変化なかったんだ。
とりあえず、うるさく言われて学校に来てみたけど、皆に馴染もうとせず、どっちかっていうと気配をけして。
まぁ、俺たちも、姫の先見で学校にいたって話からうるさく誘ったんで、他人任せだったのは否めない。
でも、あんなの、学校にいるふりをして、まだ引き籠ってるのと同じじゃないか。
半分そう思って、もう半分で、それでもこれだけたくさんの人がいるんだ、とその時を待ってた。
そうしたら、悟が彼女作ったっていうじゃない?
まぁ、俺が話を聞きにいったときは、フェイクだって聞いたけど、でもさ、さえちゃんの時にあれだけの思いをした悟が、また同じことをしてやるって言うんだよ?
それって、余程、その娘に惹かれてるよね。
そんな話をしながら、源くんが私をじっと見てくるから、つい赤くなる。
「その娘」って私のことだよね・・・。
ただ・・・悟の過去がいつの間にか、逆に悟を縛ってた。
裏を返せば、そんな過去が頻繁に思い出されるほど惹かれたってことなんだろうけど、ね。
なのに、悟は石頭で、どんどん別れる方へシフトしてるし、このままじゃいけないって皆で話したんだ。
まぁ、こころが読める悟のことだから大丈夫とは思ったけど、とりあえず、皆でその娘を見分しようってことになってね。
そしたら、口は固いは、考え方は柔軟だわ、向かっていく方向が普通じゃないわで・・・
今じゃ皆が気に入ってる。
彼女なら、さえちゃんと同じ結果にはならないと思ってる。
だから、こういう場になったんだよ。完全に別れてしまう前に。そして、また悟が引き籠る前に。
そう言って、悟を見ながら、源くんは「お前、また引き籠ろうとしてただろう」とじと目で見ていた。
悟は全部、聞き終えてから、そっぽを向いて
「お前たちがサトリやりゃいいのに・・・」とぼそっと文句を言った。
生徒会の皆さんの読みは当たってたってことだろう。
ここから唯一見える悟の耳がすごく赤い。
しばらくして、悟が落ち着いたのか、こっちを見た。
「ミナ」
私を呼ぶ。
「俺も、ミナが好きなのは自覚してる。 それに加えて、先見、聞き耳、透視、そして、100年以上生きて人間を観察してきたジジババの経験と観察眼から言っても、俺はミナに惚れてるらしい。」
そして、自分の手をしばらく黙って見た後、そっと覆っていた私の手をはずし、代わりに今度は悟の両手が私の手を包み込んだ。
「紗枝の話の後だ、すぐに返事できると思わない。それに、嫌われたかもしれないとも思う。・・・でも、怖いとか気持ち悪いとか、そういう負の感情がないなら、もしよければ、友達からでいい。やり直してくれないか?」
相変わらずネガティブだ・・・。
少し考えてみる。
さえさんの話を聞く前、生徒会室に現れた悟を見て、やっぱり好きだ、と思いを再認識したのは私だ。
その後の話で、どこかに嫌な性格があっただろうか。
「私ね、
友達の多いひとは好き。友達に愛されてる人は尊敬する。人との約束を守る人って信じられる。
話を聞いて、さえさんのことで怖いとか気持ち悪いってのは全然なかったよ。
私の気持ちは、春のフェイクからどんどん変わって、今じゃ悟が一番好きだよ・・・。」
言いながら涙が出てきた。
「・・・ほんとに、好きだよ」
「ミナ・・・」
二人っきりの世界に突入しそうだった私たちは、いきなり開いたドアにびっくりする。
ドアの向こうには、生徒会の皆が笑ってた。
「うまくいったようだの?」
生徒会長が代表してそう聞いた。
「ありがとうございましたっ」
悟がまだ素直に言えないみたいなので、私が大きな声でお礼を言う。
「ミナはいい娘じゃのぉ。 ん? サトリはどうなんじゃ~?」
ああ、生徒会長は遊んでる・・・。
でも、そんな様子も和やかだ。
「・・・一応、感謝、しますよ」
ボソッと恥ずかしいのか、目すら合わさずに、悟が言った。
「・・・感謝がイマイチこっちの心にとどかんのぉ・・・」
楽しげにそんなことを言いつつ、生徒会長は悟に向かって生徒会入りを命じた。
「田代悟、生徒会会計を命ずる」
せいぜいこれからのイベントの多い時期にこき使ってやるから身体で感謝を表せよ、そう言いつつ生徒会長はすごく嬉しそうだ。
・・・でもね、あれ? 会計?
「ちょっ、俺は? 俺、どうなんの?」
現在の生徒会会計の源くんが叫んだ。そりゃそうだろう。
「ああ、お前はクビだ。」
「「「えっ」」」
簡単なクビ宣言に、私と悟も驚く。
にんまりと笑う生徒会長。
「カラス、京都に義経がいる」
義経? どこぞで聞いた名前に?を飛ばしているうちに、源くんは急いで帰り支度をする。
「あ、姫、俺「わかっておる。転校手続きはしておいてやるから、頑張ってこい。詳細は後で送る」・・・うん!」
そんなやり取りが、あ・うんの呼吸で行われ、源くんは窓から消えた。
・・・人外の力使うほど急いだんだね・・・?




