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サトリの友達  作者: 李雨
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ヒーロー見参

ばたばたと走る足音が聞こえた。


「九郎、お前、ミナをっ・・・」

ドアを開けた途端、叫びかけた悟を見て、ミナの胸に懐かしさがにじむ。


・・・やっぱり、好きだなぁ。


そんなことを考えて、茫然と悟をみていたら、彼が近くに寄ってきた。

「ミナ?」

「へ?」

「クロウに何もされてない?」

「・・・へ?」


そんなミナの態度に、何かを悟ったのだろう。

悟が生徒会室にいる皆をにらみつける。


「生徒会長、どういうことですか、これは」

怒りを無理やり抑え込んだような無茶苦茶低気圧な、低い声で悟が聞く。


「引退前にな、おせっかいを焼こうかと思ったのじゃ」

ごく普通に返す生徒会長。

「ほんと、おせっかいですよ。彼女とは何でもない」

悟の冷たい言葉が、ミナの心をえぐる。

泣きそうになって俯いたミナを、傍にいた源くんが、そっと自分の方に抱き寄せた。

「大丈夫か? ごめんな」

小声で謝られる。

源くんのせいじゃない。

ミナは静かに首を横に振る。


が、そんな一連の動作を悟は見ていたらしい。

ぐっと眉間にしわが寄った。

「おせっかいってそっちのことですか? それなら、俺を呼ぶまでもない。クロウは知ってますよ」

冷たくいって目を背ける。

どうしよう・・・こんなに怖い空間になってしまった。

そもそも、私が悟に内緒で聞けばよかったんじゃないんだろうか。

そんなことを反省しつつ、オロオロしているミナと違って、生徒会長はあくまでも愉し気だった。


「ふふ、いいのぉ」

何がっ? 思わず心の中で突っ込む。

「サトリ、わらわははそなたのそういう姿、初めてみたぞい」

「わらわ」と来たか。

ジジババ通り越して、お姫様になったか。

またも、心の中でつっこむ。

その心を読んだわけではないのだろうが、「白姫、何を考えているんです?」と悟が聞いている。


「そなたの、そんな他人のために焦った姿も、嫉妬に苦しむ顔も、わらわは初めて見たからのぉ」

生徒会長は、あくまでも呑気に答えた。

「はぁ?」

ミナは思わず叫んでいた。まずい、この場の空気になりきるはずだったのに・・・。

それ、一体どういうこと?と先を聞きたいミナを無視して、生徒会長はなおも楽しげに話す。

「いや、さっき、そなたが数百年引き籠った理由を教えてやろうとしたらな、ミナがそんなことを陰で聞くのは嫌だ、本人から聞きたい、と言うのでな。だから、そなた視線だけでは、歪むかもしれんのでここで話をさせてやろうと思うてな、呼んだのじゃ」

「いらぬおせっかいです」

氷のように冷たい言葉が悟の口からでている。

「だいたい、そんなことを教えて、何が変わるっていうんです?」

「そんなもの、この捩れた現状が変わるじゃろ」

「変わりませんよ」

二人の会話は平行線だ。


「あの・・・」

ミナは思い切って口を突っ込んだ。

「悟の引きこもりの原因を私が知ったほうがいい理由ってのがあるんですよね?」

だって、普通に引き籠ったなら、もうそれが解決して登校し始めたなら、そこまで理由を他人に話せって言わないよね。むしろ、過去は過去でそっとしておこうって思うはず。

そうならない理由は、それが未来につながる場合だ。

同じことを繰り返すと思われたのか、それとも、何か知っておいたほうが悟に有利に働くのか、一体、何を知れば未来が現在から変わるというのだろう。


「私の先見じゃ」


これまた、実にあっさりした返事が返ってくる。


「生徒会長の先見って百発百中で当たるってやつでしたよねー・・・」

そう答える私。

「まさか、ご自分のことを話したんですか、貴女が」と驚く悟。

そんな悟に対しては、

「そなたと同じことをやったまで。何か問題あるかえ?」

という言葉が返っている。

「ああ、わらわだけではないぞ。生徒会全員だ」

驚愕と言うのがぴったり当てはまる表情で悟が私を見た。



「そうかー。生徒会長の先見なら、従ったほうがいいのかなー・・・。悟、話してくれる?」

生徒会長と悟の間の会話を軽くスルーして、簡単に聞いた私の顔を、悟がまじまじと見つめる。

そして、長々と溜息をついた。


「わかった。話そう。話したら、もう俺と関わらないでくれ」


・・・心が痛い。泣きそうだ。それを気力を振り絞って笑顔に変える。


「今、もうあまり関わってないよ。だから、関わらない方がいいって私が判断したら、そのまま関わらない。でも、決定権は聞いた私にあると思う」

そう言うと、投げやりに「勝手にしろ」と言われた。

「部屋を変えよう。皆は知ってるはずだ。もう一度聞く必要もないし、俺も大勢の中で話したい話じゃない」

悟について立ち上がったら、生徒会長から声がかかった。

「隣の応接室をとってある。それから、カラスを一緒に入室させよ」

「は?」悟が迷惑そうな顔をする。

「話しにくい話をさせるのじゃ。何かあっても、対応できるやつがいた方がいいし、カラスならお前のことをよくわかっているからな。まぁ、これも先見じゃ。おそらく、どうあがいても変わらんよ」


余程、生徒会長の先見には定評があるのだろう。

その言葉だけで、皆がその言葉に従った。






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