秘密の話は
「サトリのことじゃ」
そう言われて、その名称から、「ああ、彼も仲間なんだ」と思う。
あれ?
「えーと・・・『妖怪生徒会』?」
そう言うと、副会長が丸めた冊子で後頭部を殴った。
くっ、紙の束でも痛いんですよ、この人、赤鬼さんだから力が有り余ってて。
「変な名称つけるな」
「はーい」
「あー・・ちょっと聞きたいんだが、あんたが一番知りたいはずのヤツの話がでて、どうしてそっちへ頭が行くんだ?」
普通なら、「悟君がどうしたのっ?」って聞くトコだろ?と源くんが言う。
あまりに長く別れを言われた事実から逃避してたから、つい・・・。
「まぁ、その名称は正しいな」
源くんが肯定する。
『生徒会入りに必要なのは、現役員とのつながりやコネ、血縁関係』
妖だってわかってるやつが、仲間を選ぶからな、と言う。
「その言い方は誤解を招く。別に同種族だから肩を寄せ合っているわけではない。」
横から口を出した生徒会長によると、妖たちはもうずいぶん何度もこの学校に通っているらしい。おそらく、祖父祖母のあたりがみたら、そっくりの同級生がいた、と言うくらいに。
大体が50~100年くらいでここへ戻ってくる。
何度も戻ってくるくらいには、この学校を愛している。
皆、長生きして暇だから、何度も同じことを繰り返して受けている授業は当然成績がいい。
そして、学校のやり方にも設備にも、当然、精通している。
また、心を読む者、先を見通すもの、力の強いもの、幻惑するもの、透視するものなどの能力があるため、役員に嘘が通らないし、長生きして欲がなくなっているため、公明正大な運営ができるらしい。
そういや、前に学校に払うお金でゲーム機買ったとかで、学校で誰かに金を盗まれたことにして騒いだヤツが、とっととばれて退学にされていたなぁ、と思う。
「普通の人間が入ったなんぞ、数十年ぶりだな」
「・・・はぁ」
なんで入れたんだ、私。
そんな気持ちを読んだのか、「あんたには、皆が興味をもったから」と源くんが言った。
「どうして?」
私、ごく普通の高校生だよ?
「だから、『サトリ』だよ」
とくん、と胸が跳ねた。
「あいつは、この学校に来たのは、今回が初めてだ」
「え? だって、悟ってば、数百年ほど生きてるんじゃないの?」
「・・・それだけ生きてて、江戸の終わりごろから、ひきこもりやがったんだよ」
・・・数百年の引きこもり・・・
すごいな、おい。
「・・・いい焼酎ができそうな期間ですね」
茫然とそうつぶやく。
百年のなんたらってあったよね・・?
「あんたは、なんでそう・・・」
はぁーっと心底からの溜息をつきながら、源くんが呆れたように言った。
気が付くと、生徒会全員になんか呆れられてた。
「ま、そこがよかったんじゃろ」
生徒会長が笑いながら言ってくれた。
「きっとサトリにも理解できん斜め上を走っとる」
・・・それはお褒めの言葉じゃないと思う。
「えーと、で、何でしたっけ。悟が学校来たのが初めてっていうなら、本人に普通興味を持つのでは?」
「その辺はだな、引きこもりではあったが、その前からの付き合いもあってな。皆、顔なじみだったし、家に訪ねて行ったこともある。知らない奴ってわけじゃないから」
「で、どうして私?」
「モトカノだろ?」
「違うよ、それ。源くん、あの時、聞いてたじゃない」
それだけ言う。
まだ、フェイクだったとか、別れを告げられたとか、思い出すのは辛いし言いたくない。
「その理由も、おかしいんだよ」
どうして? 普通によくある話じゃない?
「サトリの引きこもりの原因から言わねばわからんじゃろ?」
生徒会長が口を挟む。
なんかどんどん生徒会長の口調がジジババになってきてる気がするんだけど・・・。
あ、今の視線が怖かった。このひとも心が読めるのかな?
「ああ、引きこもりの原因ね・・・」
源くんが、頭をかく。
「女が絡んでて・・・うげぇ」
言いかけたところで、源くんの口を押えた。
「あの、ごめん。 でも、数百年も引きこもるほど心に傷がついたのなら、私、本人にちゃんと聞きたい。そりゃ、皆、不思議な力があるから、ちゃんと知ってるかもしれないけど、こんな風に陰で聞いて知ってしまうのは嫌」
しばらく、どうしよう、というような静けさが満ちる。
そこへ、くすり、と小さな笑みが聞こえた。
「そういうところが、サトリを癒したのかもしれぬな・・・」
生徒会長がそう言うと、
「そうですね、顔に出る、口に出る、態度にでる、まったく隠し事をしない子ですからね」
と副会長。
なんか全然ほめられた気がしない。
「んじゃ、呼ぶか」
源くんが背中に手を回したと思うと、何もなかった背中から、黒い羽を一本取り出した。
羽は瞬く間に小さな鳥になり、窓から飛んで行った。
「すごーい・・・源くんて、軽いだけの子じゃなかったんだ・・・」
つぶやいたら、源くんが落ち込んだ。
「えー・・・そんな風に思われてたんだ、俺・・・」
あ、ごめん。
「ミナ、そやつは、実はかなり重いヤツじゃぞ。年を経たカラス天狗だけに、様々な術も使えるし、おそらくこの私の次くらいに有能じゃ」
生徒会長がそんなことを言う横で副会長や書記までうんうん、と納得していた。
「おお、能あるカラスは爪を隠す、ってやつですかぁ・・・」




