表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/11

第8話「もう絶対にこんなこと言ってやらないからな!」

 ーーー夕方

 

 校舎の外の石段に座り、ぼんやり空を見ていた。

 続きが気になったのは、本当だ。でも、怖いとは思わなかった。七人全員が廃人か死、か。


 俺には、そういう感覚は全くと言ってなかった。紋章が内側から焼くような感触も封じる時も解放する時も、ただ——扉を操作しているみたいな、それだけの感覚で。


 まるでそれは、“遺伝子”レベルで組み込まれているかのような、そんな気さえした.......

 

 なぜ自分だけが大丈夫なのか、は俺にもわからない。ただーーー


 「……怖がらせると思ったから、抑えてた」

 学園長に言いかけて、止めた言葉が頭に戻ってきた。


 「——何を考えているんですか?」


 声がしたので振り返ると、セレフィーナが石段を上ってくるところだった。


 今日の帰り道で、また鉢合わせた。この一週間、どういうわけか帰る時間が重なることが多い。

 

 「別に何も」

 

 「ダウト! 嘘はつかないでください! このセレフィーナちゃんには、全てお見通しです!」


「相変わらずお前は元気だな」


 「あなたはそうじゃなかったようでしたけどね」


 「.......ッ!?」


 「言ったでしょう。全てお見通しだって!嘘みたいな顔をしていましたよ」

 

 「俺の顔の話、よくわかるな」


 セレフィーナは俺の隣、石段に腰を下ろした。夕風が吹き、手入れの行き届いている銀の髪が少し揺れた。


 「今朝の冊子を読みましたか」


 「途中まではな」

 

 「どうでしたか?」


 「ある程度、概要はわかった。ただ.......」


 「ただ.....?」


 「途中で頁が破れてたから、続きがわからなかった」


 「破れていた?」


 「そうだ。続きが、なくなっててな」

 

 セレフィーナが少し眉を寄せた。


 「……どこで切れていましたか」


 「そうだな.....その前の文にはこう書いてあったな」俺は言葉を思い出した。


 「死神紋章持ちは、生きている間ずっと——って、そこで終わってた」


  セレフィーナがしばらく黙った。


 「もしかしたら……私知っているかもしれないです!」


 「続きを?」


 「たしか竜王国に、別の写本があります!完本かどうかはわかりませんが」


 「なんて書いてあったんですか」

 

 「それがよくは覚えていないんです……」


「おいっ!1番大事なところだろうが!」


「てへっ!私の可愛さに免じて許してください!」


「誤魔化すな!」


「まあまあ落ち着いてください!しっかり確認してから、お伝えしますので......」

 

 先ほどとは裏腹に彼女の声には、慎重なものがあった。内容を知っていて、でも俺にどう伝えるかを考えている——そういう風ににも見えた

 

「……まあ、いい。ありがとな、教えてくれて。そのうち、どこかの機会でも教えてもらえれば......」


 「必ず持ってきます!」

 

 「そこまで責任感を感じなくてもいいからな!」

 

「いや!あなたに関わることなので、絶対です!」

 

 俺はそれ以上は何も言うことができなかったため、大人しく引き下がった。


 夕日が落ちかけていた。石段の影が長くなっている。遠くで生徒の声が聞こえたが、ここまでは届かない。

 「……一つだけ、聞いてもいいか?」

 

 「どうぞ」とセレフィーナが静かに頷く


 「たしか、学園に来る前の話を聞きたいと言ってたよな」


 「はい!たしかに言いました!」

 

 「今じゃない!今じゃないんだが......」

 

 「はい.....?」


 「いつかの話なんだが、もし俺の話す覚悟が決まったら......聞いてくれるか?」

 

「......っ!?ーーーもちろんです!」


 その返事を聞いた俺はらしくもなく、少しだけ、ほんの少しだけだが、頬を赤く染めていた。


「あ!ほっぺが赤い!もう、こんなことで照れちゃうんですかー?案外可愛いところあるじゃないですか!」


 セレフィーナはにやにやと笑いながら、俺の表情を目に焼き付けようとチラチラとこちらをみてくる。


 「もおー!うるさいな! もう絶対こんなこと言ってやらないからな!」


「それは話が違うじゃないですかー!ケチ!」


 そんな平和な会話が俺たちの間で繰り広げられていた。この関係を奇しくも、“心地よい”なと思ってしまったのは秘密だーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ