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夏休みの帰郷  作者: けろよん


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第9話

 俺とツチノコの戦いは、想像を超える激しさだった。ツチノコが放つ力は、まるでこの世界そのものを引き裂こうとするかのように圧倒的で、俺の体はその力に押しつぶされそうになっていた。


 ツチノコの体が揺れる度に、周囲の木々が引き裂かれ、地面が割れ、空気すら震えるような衝撃が走った。俺はその圧倒的な力を前に、何度も膝をついてしまい、倒れそうになった。しかし、俺は決してあきらめることはなかった。海月を守るため、そして彼女の運命を変えるために、俺は戦い続けなければならない。


「くっ……!」


 俺はその一撃をかろうじてかわし、必死に立ち上がった。


「まだ……まだ負けない……!」


 ツチノコの力は確かに強い。伝説の生き物と謳われるそれを前にして、その力がどれほどのものかを思い知らされる瞬間だった。

 ツチノコの力は、まるで時代を超越しているかのように、どんな力でも弾き返すほど強大だ。

 この力を海月が使えるようになれば確かに町その物に恩恵を与える事も可能だろう。だが、俺はそれを拒んだ。それ故の死闘。


 ツチノコが再び動いた。無数の岩や木の破片が、俺に向かって猛然と飛び込んでくる。その中で、俺は必死に身をよじって避けるが、ついに一撃を受けてしまう。強烈な衝撃が俺の体を貫き、地面に叩きつけられる。


「ぐはっ……!」


 俺は息を呑み、痛みに耐えながら立ち上がる。もう限界だった。身体が重く感じ、動かすのが精一杯だった。


「諦めるかよ。あいつが見ている前で……!」


 その時、突然、空気が変わった。背後で誰かが強く踏み込む足音が響き、ふと気づくと海月が俺の前に立っていた。


「海月……?」


 俺は驚いて声を上げたが、彼女は振り返らず、ただ真剣な目でツチノコを見据えていた。


「海月、来るな……! お前は無理して戦う必要はない! これは俺の我がままを通す戦いなんだ!」


 俺は必死に叫んだ。しかし、海月は無言で前を向き、歩みを進めた。


「違うわ……これはもう私の戦いでもあるのよ。だって私も別の願いが出来てしまったから。最初はぼんやりと一人で山を見ているだけだった。でも、今では一緒に付き合ってくれる人が出来た」


 海月は強く確かに言った。その瞳には、今まで見せたことのないほどの強い決意が輝いていた。


「私がツチノコに挑むことで、私だけじゃなく、あなたも運命に抗うことができる。私はもう流されない。自分で決める」


 その言葉に、俺は心の中で震えた。海月が、ついに運命に立ち向かう決意をしたのだ。それが、彼女にとってどれほどの覚悟を必要としたことか、俺は想像もできなかった。


 海月が目を閉じ、深く息を吐く。そして、再び目を開いたその瞬間、彼女の周りに強い光が放たれ始めた。ツチノコの力に共鳴するように、彼女の周囲が光り輝き、その輝きがまるで一筋の剣のように空間を切り裂いていった。


「私もあなたと一緒に戦うわ」


 海月は静かに言った。その言葉は、まるで自分の運命に抗う覚悟を決めたかのような力強さを持っていた。


 俺はその光景を目の当たりにし、思わず息を呑んだ。そして、ツチノコに向かって再び立ち上がり、海月の肩を支えるように立った。


「海月……!」


 俺は彼女に向かって叫んだ。


「一緒に戦おう! お前を一人で行かせるわけにはいかない!」


 海月は少しだけ微笑み、そして頷いた。


「そう、共に戦おう。私たち二人で、ツチノコの力を超えてみせる」


 その瞬間、俺たちは力を合わせてツチノコに立ち向かう決意を新たにした。その様子を姫巫女は感心したように見つめていた。


「見事なものです。まだ契約前にしてもうそれほどの力を使えるのですね」

「違うわ。これはツチノコじゃない。私自身の力よ!」


 海月の輝きが増す。ツチノコは一瞬怯んだかのように見えたが、もうそれにも慣れたかのように近づいてくる。

 ツチノコが再び激しい力を放つと、俺と海月はその波動を受けながらも、互いに戦い抜く力を振り絞った。

 海月の力と俺の力が一つになり、まるで世界のバランスを変えるかのように空気が震えた。光が爆発的に広がり、ツチノコの周囲が一瞬、眩い光に包まれる。


「今だ!」


 俺は叫び、ツチノコの隙間を突いて一気に攻撃を仕掛けた。

 海月も同時に光の剣を飛ばし、ツチノコの本体を切り裂くようにその力を放った。ツチノコはその攻撃に反応し、咆哮を上げて攻撃を仕掛けるが、俺たちはその力に立ち向かい、共に戦い続けた。

 だが、ツチノコは怯まない。再び力をため、最強の一撃を放とうとしている。


「どうすればいい? どうすればあいつを超えられる?」

「ツチノコは本来は臆病な生き物よ。だから日頃は隠れながらもああして誇示しようと力を見せつけようとしてくる。超えるには私達も大きくなるしかない」

「だったら、俺達もバラバラに戦ってる場合じゃないな」

「ええ!」


 俺と海月の心は一つだった。そして、今その存在も一つとなる。


「海月、行くぞ!」


 俺は目を見開き、海月に向かって叫んだ。


「うん、覚悟はできてる!」


 海月は俺の声に応え、真剣な顔で頷いた。

 そして、俺たちは決意を込めて叫んだ。


「合体!」


 その瞬間、俺と海月はまるで一つの力のように、ピタリと組み合わさった。まるで組体操のように、俺は海月の足を支え、彼女はその力を感じ取りながら全身を伸ばした。

 その瞬間、俺たちの心が一つに重なり、無敵の力を得たような感覚が体中を駆け巡った。


 海月は両手を広げ、まるで自分が一番大きく見えるように振る舞った。その表情には、子供のような無邪気さがあったが、確かな覚悟も込められていた。頬を膨らませ、精一杯の力で大きく見せるその姿に、ツチノコが一瞬怯んだ。


「ググッ……!」


 ツチノコの瞳が揺らぎ、動きが一瞬止まった。目の前にいる俺たちの姿に、どうやら驚きと戸惑いを感じたらしい。これまでの力のぶつかり合いから、確実に新たな変化が生まれたことをツチノコも感じ取ったのだろう。

 彼が後ずさるのを俺の目は見逃しはしなかった。


「今だ! 飛べ! 海月!」


 俺は叫びながら、海月をそのまま抱え上げてロケットのように投げ飛ばした。

 海月は驚いたようだが、すぐに空中で回転すると両手を前に出して輝きを足場にして弾丸のように加速した。

 海月は空を切り裂くように飛び、ツチノコの巨大な頭に向かって突っ込んでいった。空気が震え、時間が止まったような気がした。海月はまるで光の矢のように、ツチノコの頭を目がけて飛び掛かる。


「うおおおおおおおっ!」


 海月の叫び声が響き、彼女は全身の力を込めて、ツチノコの頭に強烈な一撃を放った。その瞬間、ツチノコの体が大きく揺れ、驚くべき力で地面が揺れ動いた。


 ツチノコの巨大な体が一瞬、ふらついた。海月の力がその頭に直撃し、ツチノコはガクンと膝を折るように崩れ落ちた。その目が大きく見開かれ、最後に力なく地面に倒れ込んだ。


「やった……!」


 俺は興奮して叫び、海月が無事にツチノコを倒したことを確認した。

 海月は脱げそうになった麦わら帽子をかぶり直し、その場に力なく崩れた大きな体を見下ろした。息を荒げながらも、彼女は静かに俺を見つめ、微笑んだ。


「やったね、私たち」


 海月は満足げに微笑んだ。


「うん、ほんとにすごかった!」


 俺は息を切らしながら答えた。その顔には、驚きとともに、深い安堵感が広がっていた。

 ツチノコを倒したことで、これで運命が変わる。俺と海月は力を合わせて、ツチノコという圧倒的な存在を超えた。そして、その瞬間に二人の間に新たな絆が結びついたことを感じていた。


 海月は一度、深呼吸をしてから、ツチノコの倒れた体に向かってもう一度目をやった。

 するとその巨体がするすると小さくなり、短い普通の蛇のような大きさになってしまった。


「ツチノコが小さくなった!?」

「いいえ、これが彼の者の本当の姿なのです」


 それを静かに拾い上げたのはじっと戦いを見守っていた姫巫女だった。


「見させてもらいました。運命を超える者よ。あなたたちの力は歴史をも超えていく。二人の覚悟が運命を変えたのです」

「これで、海月は自由なんだな?」

「ええ、これからは守るべき運命ではない。あなたの選んだ運命が待っていることでしょう」


 姫巫女は微笑んで答え、静かに空を見上げた。その目には、これまでの重さが消え去ったような、穏やかな輝きが宿っていた。


「私にとってはいささか残念な結末ですが、夏はまた来ます。再びの時を待ちましょう」


 そうして、姫巫女とツチノコは静かにその身を消し去った。光が収束し、空気が元に戻ると、すべてが静まり返った。


「これで、私たちは自由になれるんだね」


 海月は静かに言った。

 俺はその言葉を聞いて、強く頷いた。


「ああ、俺たちは運命を変えたんだ。二人で新しい未来を作っていける」


 海月は嬉しそうに笑い、そのまま俺に向かって手を伸ばしてきた。


「ありがとう。私一人じゃここまでできなかった。あなたがいてくれたから、できたんだ」


 海月の言葉に、俺は心が温かくなるのを感じた。


「俺もだよ、海月。君とこの夏に出会えて、本当に良かった。」


 俺は彼女の手を握り、静かに微笑んだ。

 新たな運命の扉が開かれ、俺たちの未来が、これからどんなものになるのかは分からない。しかし、二人であれば、どんな困難も乗り越えていける気がした。


「これからも、ずっと一緒に歩こうね」


 海月が笑顔で言った。


「もちろんさ」


 俺も心から微笑んで答えた。

 そして、俺たちは共に新しい道を歩き始めた。

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