第81話 やはり遺伝子や才能は避けられない現実
ブサにいきなり浮気なんて単語を吐かれ、固まる俺。
な、何となくユリアがお手洗いで今隣にいなくて助かった。いや、むしろユリアがいないときを見計らって話しかけに来たな?
まずこういう時は落ち着いて、ブサに逆に質問をするんだ。
「いやしてないし、そもそも、その、俺が誰と浮気してるんですか」
「めっちゃ声震えてるし。そりゃ、あの図書館の受付と、だが?いっすねー。イケメンはいろんな女子と付き合えて。どうせもうイチャラブとかしてんだろ。ああ羨ましい」
「してねえよ殺すぞ」
「ひっ!?冗談だって」
さすがに俺はイラっと来て机をたたき、ブサに顔を近づけて低い声で怒鳴った。ブサは顔を引きつらせて目を逸らす。
俺だって女子とああいうこととかそういうことしてえに決まってんだろ!ふざけんな、チー牛の性格という制約で俺は一生できねえよバーカ!
にしても、青ざめているブサを見て、思う。いやあ、最高、今のこのイケメン高身長なら、キレてもちゃんと恐怖を演出できる。人をビビらせて感じる快感、すらばらすぅい。
チー牛がキレても「チー牛がキレてて草」「必死で草」って言われてバカにされるからな。チー牛はキレてもなお、バカにされる生き物なんだ。イケメン最高。
じゃなくて、まずブサの誤解を解かないと。
「あの、本気で言ってるのか知らないんすけど、えっと、俺はまず誰とも付き合ってませんから。まだユリアと付き合ってるなんて勘違いしてるんですか?
付き合ってないんですから浮気なんてしたくてもできません。浮気なんかしたら社会的に死にます。それにあの図書委員はただの魔法の師匠でしかありません。その、理解できました?」
「いやまあ、うざいからからかってやろうと……まあ本題はそうじゃなくて、その、頼みがあって」
ブサは急におとなしくなって、声がか細くなっていく。なんなんだろう。またリオと付き合いたいなんて言い出さないよな?
「魔法とか、その、色々教えてほしい。すげえ屈辱だけど」
一言余計じゃ。ブサのイケメンへの憎悪は激しくて惚れ惚れするぜ。俺と同等かそれ以上……いや、イケメンの俺に頼んでくる時点で、俺の方が上だな。いや何を比べてんじゃ。
「えっと、なぜ?」
「いや、俺って才能ないから、魔法も剣技もあんまりできなくて、今はまだ魔法の方が得意だから、魔法科に所属したけど、魔法の授業も難しくなってもうきつくて。赤点だけは回避したいんだわ。お前成績良いし、わざと点数調整するくらいには」
え、リオにも言われたけど俺って点数調整してることけっこういろんな人にバレてる?まあバレても目立つわけじゃねえし。多分。
ていうか、ブサって成績悪かったっけ。こいつはチー牛気質あっても行動力はあるからてっきり頭もいいのかと思ってた。チー牛ってこの自己肯定感の低さ故に成功体験も少ないんだよな。
まあ、それくらいなら手伝ってやろう。脱底辺や。俺はひとまず引き受ける。
「俺でいいんなら、まあ……」
「助かる。放課後、俺の部屋でいっすか」
「まあ、はい」
そんな感じで話した後、ブサはなぜかため息をつきながら自分の席に戻っていく。
はあ……ユリアにも村にいた時は魔法教えたし、ネクラにも魔法教えて、今度はブサか。なんか、ほんとイケメンで才能もあるってだけで、前世ではあり得ないような、必要とされている感覚を体感できる。
変な感じだよなあ。まあ、悪くはないけど。
そしたら、放課後はネクラにユリアの護衛任せてその間にブサに教えるとするか。
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その後、図書館に通い詰めたり、ブサに教えたりと地味にやることが多くなった。
時は過ぎ、いつのまにか2年前期の定期試験が始まり、ブサは俺の指導のおかげで赤点を余裕で回避できた。いや、俺のおかげかは知らんけど。
ブサに教えて思ったことは、まあ、確かに覚える要領は悪い。勉強は努力量で決まるというが、人それぞれ明らかに脳の処理能力が決まっている。
早く覚えるやつもいれば、何時間かけてようやく覚えるやつもいる。大量に脳に情報を蓄えられる奴もいれば、少ししか覚えられない奴もいる。
勉強ですら、遺伝子や才能で決まるのが現実なんだわ。ネクラは前者で才能があるからすぐ吸収していくが、ブサは後者、覚えが悪い方だ。
まあ人それぞれ、どんな教えられ方が合っているかも違う。ネクラは俺の教え方が合っていただけで、ブサは俺の教え方が合わない可能性もある。
まあ、ブサは授業でも俺でも覚えるのに苦労している辺り、可哀そうだが才能や遺伝子的に問題がありそうだが。
でも、ブサは覚えれば忘れないし、なにより、応用力と言えばいいのか、魔法の扱いは器用だった。俺と会話しながら、魔法を発動したり。まあ簡単な魔法だけど。
魔法を発動させながら何かをできる謎の集中力の高さを持っていた。マルチタスクが得意そうだ。魔法剣士の素質がありそうだが……ブサは剣はからっきしっぽいから無理だ。あと分かったことは……足が速い。
ブサは俺なんてゴミだと言っているが、その謎の才能を生かせれば戦闘でも役に立ちそうではある。あれよ、ソシャゲで言えば、SSRは汎用的に使われて人気だけど、稀にSRのくせに唯一の性能で一部クエストで活躍する的な。何言ってんだ俺は。
てな感じの気づきはあった。ブサは思っているほど底辺ってわけでもなさそうだ。
まあ俺は試験はいつも通り点数調整して終わった。
さて、話題は変わるが、試験が終わると何が来る?……そう、夏休みだ。
俺は夏休みに故郷に帰ることにした。まあ、久しぶりに父さんと母さんと会えるチャンスだし。いや、村から学園出発するときに、たまには顔出せよって言われてたのに出さないのもあれだからまあ。
ちなみに1年の夏休みはユリアが色々と大変なことになってたしなあ。あれは正直めんどくさかった。
あ、そうそう。一応レッドとは、父さんに稽古をつけてもらうっていう約束もしたので、レッドも連れて行くことになる。ユリアも、今年の夏休みもメイドに会いたいって言ってたしな。
他のメンツについて。まずネクラは「ああ、俺は一応、故郷に帰るっす。暗殺業があるんで、まあ仕事っすね」とのこと。サンとクラウドは普通に用事があるようで故郷に帰るようだ。
シオリーとは夏休みの後半に無詠唱魔法を教えてもらう約束をしている。シオリーに故郷へ帰らないのかと聞くと、「そんなものありませんから。寮でおとなしくしてます」と答えた。とりあえず、そのことに首は突っ込まないようにしておく。
ついに今日から夏休みが始まり、俺とユリアとレッドは帰る準備をして、翌日、俺の故郷に旅立った。




