第80話 変な疑いをかけられた
その後も、暇さえあれば図書館に通っていた。
むしろ、ちょっと増えたかな。シオリーも図書委員としての勤務中は暇だろうし。話し相手が欲しいだろう。まあ、実際、二人とも陰キャ気質だから会話は弾まない。受付でちょっとしゃべって終わりだ。そこはしゃあないか。
話していて知ったのだが、シオリーは無詠唱での魔法も撃てるらしい。さすがだ。無詠唱ってまさに詠唱のラグというデメリットを完全に打ち消せる最強のスキルだ。
俺は今度、教えてほしいと頼んだら、「は、はいっ、ぜひっ……!」との返事を頂いた。謎に嬉しそうだったが。
でも、普通なら出会ったばかりの男のお願いなんて断るだろ。……まさか、この人に無理やり無詠唱魔法教えてと頼まれた、だから断れなかった、ってなってないよな!?
やばい、社会的に詰んだかもしれない……。俺も少し調子に乗ってしまった。この子の性格考えれば、断れないよなあ……。だからコミュニケーションってだるいしめんどくさいしむずいんだよ。
いざ訴えられたら、証拠隠滅でこいつを消し……ってできねえよ、こんな可愛い子……本性はまだわからないけど……。おとなしいくせに表情豊かで面白いし。
今でもかなりの人見知りで、受付に俺以外の人が来ると「ひえっ!」とか「ひゃう!?」とか叫んでる。
ちなみに、今ではこのやり取りが図書館の風物詩みたいになっているらしい。そんなビビりまくる受付少女と、普通に話す謎の少年、的な感じで俺も噂されてしまう。やめちくり。
まあ、図書館に来る人はそんなに多くないから、ほんと一部の人からの認識だけど。
俺は、そういう噂とか、シオリーからの訴訟リスクを考えて、一応確認してみる。
「えっと……二人きりじゃ不安だろうし、もう一人呼びますね。無理やりみたいだし、俺みたいなチー牛とは……」
シオリーはすぐに首をブンブンと横に振る。サラサラな黒髪がふわりと揺れ、かすかに甘い香りが漂った。
「い、いえっ!無理やりなんて思ってませんし、あなたはチー牛なんかじゃありませんっ!か、かっこいいと思い……じゃなくて!……その、教えるのは嫌じゃないです。別に……二人きりでも……問題ない、です。知らない人がいると……もっと緊張しちゃうので……」
可愛いかよ。俺をチー牛じゃないって言ってくれるなんて……見た目はイケメン、頭脳はチー牛、その名はチーオンターマ!きっしょ。
まあ確かに、知らない人が増えると一気に話せなくなるのはめっちゃわかる。友人と遊ぶときに、友人の友人がいたら、めっちゃ口数減るタイプだわ。俺もだ。
……あれ?俺は今の会話に少し違和感を感じた。それはなぜかは分からないけど、でもおかしかった。いや、今はひとまずどうでもいい。
シオリーも絶対不安だろうし、俺も不安だし、最悪、冤罪でっち上げられたときのための証人は欲しい。
「いや、でも、やっぱり二人きりは……」
「嫌です。その……先輩のことは……信頼してますから……」
急に顔を赤らめてそんなこと言う、きゅんってしちゃうじゃないか。ていうか、最近知り合ったばかりで、そんなに何度も話してるわけでもないのに、本当に俺は信頼されているのか?
これは喜ばしいことだが……どうにも疑わしい。
にしても、シオリーと二人きりで魔法の特訓……これってデート?あわわわあわ!!!
……と以前なら慌てるところだが、正直言って、護衛のためとはいえ、付き合ってすらいないユリアと毎日一緒にいるし、ユリアは俺の部屋にも平気で上がってきたりしてるからな。
それに比べたら、たかがシオリーとの魔法特訓くらい全然オーケーな気もする。別にユリアと付き合ってるわけじゃないから浮気にもならんし。
シオリーはあくまで、俺とは貴重な話し相手かつ読者として、俺を先輩として接してくれているだけだからな。勘違い男にはならん。
はあ、この世界に来てから、本当に交友関係が増えたな。イケメンに転生させてくれた神様、ありがとう。人生イージーモードをありがとう。
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学園ではいつものように授業を受け、居眠りして、絵を描いて、昼はユリアやレッド達と昼飯を食い、放課後は図書館に通い、寮では体を訛らせないための自主練をし、あとはぐーたらし、寝る、の繰り返し。
まあ、剣技の授業ではクラウドと毎回会っている。クラウドは普段のツンモードではなく、俺とはデレモードで気さくに話してくれる。
で、剣技の授業で初のクラウドとの会話が、
「チー、そういえばユリアって子が俺に挨拶に来た。問題は、俺のことを『ツンデレなんですね!』って言ってきたんだが……まさかお前が吹きかけたんじゃないよな?」
「い、いえ、違いますよ?もちろん違いますよ?」
「な、ならいいんだ」
だった。俺は多分顔を真っ青にしていただろうけど何とかバレずに済んだ。確かに俺はユリアに「クラウドはツンデレ」って言った記憶あるもん。ユリアはユリアでそのまんま伝えんなボケ。
クラウドは剣技でかなりの好成績を残している。クラウドはブルーと同じ水流型を極める反撃特化だ。組手の授業もあって、クラウドとブルーがやり合ったんだけど、当然ブルーが圧勝だった。だが、どうやら知り合いっぽい様子で何やら話していた。
クラウドに聞いてみたら、「あいつとは同じ流水型の道場で一緒だった。あの頃からずっと無口で……まさに敵を寄せ付けないほど最強だった。でも、まるであいつは操り人形のような、そんな感じなんだよな。ただ父の言うことだけを聞いて。強さしか求めない」と、語っていた。
同じ道場出身だから、クラウドはブルーと似たような戦い方をしていたのか。クラウドも弱くはないし、むしろ同学年ではかなりの強さだ。
まあどちらかと言えば、クラウドの強みはパーティでの指揮能力、判断能力なのだが。ブルーは強さの点ではやはり次元が違う。
魔法の授業では、ユリア、ネクラ、サンとともに受けている。サンは火魔法以外はからっきしだった。
う~ん。そこまで適性ってのは極端になるのだろうか。まあ仕方ないよね。サン自身は「火魔法ってかっこいいでしょ!?ほかの魔法は確かに苦手だな~。ていうかさ、火魔法だけでよくない?」と開き直っている。
アホか。よくはないだろ。火に耐性持ってる相手だったらどうすんねん。
とある日の休み時間、俺はいつものように話しかけるなオーラを放ちながら机に伏せて寝ていた。しかし話しかけてくる人が1名。俺の肩をツンツンとつついてきて俺はビビって跳ね起きる。不良か?と思って警戒して殺気を放ったら、ブサだった。ブサは俺の殺気に一瞬ひるみつつ、口を開く。
「おま、怖いってマジで……」
「あ、すみません……ヤンキーが絡みに来たのかと……」
「ブサイクで悪かったっすね」
「いや悪いとは言ってませんが……ところで、えっと、何か用ですか?」
俺はブサに恐る恐る用件を聞いてみる。
「浮気っすか」
「は?」




