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【完結】拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第82話 久しぶりの帰省




「懐かしいね」


「あ、はい」


「ここがチーとユリアの故郷か。……田舎って感じだな」


 今、俺とユリアとレッドはガラガラと揺れる馬車の中から、久しぶりの俺の故郷、オンターマ領を眺めていた。


 久しぶりに見た故郷は以前とほとんど変わらなかった。王都に比べれば自然豊かで、小さい家々が立ち並び、農場や畑などが点在している。


 草木や土の香りと言えばいいのか、なんだか懐かしくて安心感がある。王都の賑わいより、俺にはこの物静かな雰囲気の方が好きだ。人間多すぎるんだよ王都は。


 しばらく村の景色を楽しみつつ移動を続け、俺の実家に着く。もちろん、実家も見た目は全く変わっていなかった。


 懐かしさを感じながら、俺はひょいっと馬車を降りた。


「け、剣聖に会えると思うと……緊張するぜ……」


 レッドは珍しく落ち着きがなく、ぎゅっと拳に力を入れている。緊張だろう。俺は一応、フォローしてやる。


「あ、いや、気さくな人なんで大丈夫っすよ……」


「そうなのか?お前からは想像できんが……」


 確かに。まあ俺は転生者なんだから親と性格違って当然なんだよな。


 ユリアも馬車の段差を一個ずつ降りて、3人は家の前に立つ。そして俺は約2年ぶりの見慣れた我が家の扉に手をかけた。


 ……扉を開けた先に視界に広がるリビングには、2年前と変わらない父さんの姿があった。


「ノックも無しに誰だ……ってチーか?おお、久しぶりだな」


「えっと、ただいま……」


「そのしゃべり方と自信のなさ、懐かしいな」


 そこに懐かしさを感じるのは悲しいが、父さんも、俺も、懐かしさで胸がいっぱいになる。


「あら、チーじゃない。ユリアちゃんも」


 ベランダで洗濯物を干していた母さんも物音を聞きつけて家に入ってきた。母さんも特に変わらず。2年じゃさすがに老けんよな。


 父さんは俺の後ろにいるユリアを見て、不思議そうに聞いてくる。


「ユリアも久しぶりだな、ずいぶんと可愛くなりやがって。……にしても、後ろの赤髪の子は?」


 俺はとりあえず事情を説明する。


「えっと、父さんに剣を習いたいと」


「ほう?」


 俺は軽く紹介すると、レッドは自分から父さんの目の前に一歩出てきた。


「わ、私は、レッドと申します。剣聖のあなたにご指導を受けたくて、その、参りました!」


 フランクなレッドが、こんな真面目な口調になってるのに笑いをこらえる俺とユリア。”私”って……。”申します”だってよ……。


 父さんはまあ、レッドの普段の様子を知らないので真面目に聞いている。父さんは感心したようにうなずいた後、レッドに問いかける。


「レッド君、か。もしかして、チーの友達か? ……なわけないよなー!」


 なわけないよなーじゃねえよ。父さんの俺への評価っていったい……。


「友達です!」


 レッドは即座に肯定してくれた。うう、嘘でもたまには優しいとこあるよな……。父さんと母さんはそれを聞いてめっちゃ驚いてた。


「は?チーに友達……?おいおいまじかよ……お前に学園で友達ができたんだな!親として嬉しいよ!」


「チーにお友達!?今日の夕飯は豪華にしなくちゃ!」


 レッドは俺の両親の反応を見て目を丸くし、俺のほうを向いて聞いてくる。


「お前って、家でも内向的な性格だったんだな」


「ま、まあ……」


 しょうがないだろ、前世のつらい記憶引きずってんだから、家だろうがどこだろうが、陰キャに決まってる。今は多少良くなった、気はするけどね。


 ちなみに俺は転生者だから、肉体的には親子でも、精神的には赤の他人だ。だから、親だとは言え自分を出すことができない。


 前世は、学校では誰ともしゃべらず“陰キャモード”で過ごしてたけど、家では動画やゲームに爆笑したりキレたりと、割と感情豊かだった。外ってのはどうしても他人の目があるから、本来の自分を出せないんだよ、陰キャは。



 そして喜んでいた父さんはすぐにキリっと真面目な顔になる。


「で、レッド君や。俺に剣を習いたいとな?」


「はい」


「じゃあ聞く。なぜだ?」


 レッドは理由を聞かれ、一瞬戸惑いながらも答える。


「将来、俺は剣聖になりたいと思ったから、少しでも近づきたくて」


「ほう、でかい目標だな。ではなぜ剣聖になりたい?」


「剣聖に助けてもらったことがあって、憧れて……。俺も強くなって、いろんな人を助けたいって思った。ただ、それだけです。でも、剣聖になりたいって気持ちはほんとです」


「ほう」


 めっちゃテンプレだなおい。にしても真面目だなあ、やっぱ。そのためにずっと頑張ってきたんだろうけど。幼少期からずっとその夢追い続けてんのもすげえよな。でも、俺は真面目過ぎるのはあまり好きではない。


 ただ、父さんは感心しているようだった。


「いいんじゃないの?理由はただ聞いただけだから、モテたくてでも、ただの憧れでも、理由がなんであれ、稽古はつけてやるつもりだったさ。なんせチーの友達だ、無下にできるか。金ももちろん要らん!その代わり、俺の稽古は厳しいぞ?」


「は、はい!がんばります!ありがとうございます!」


 父さんも意地悪だな、最初から稽古は受けさせるつもりなのに、まるで試すかのように聞くなんて。


 こうしてみると、父さんは強いのに、見た目や性格からはそれをあまり感じさせないんだよなあ。だけど戦闘時はそれはもう鬼神の如く豪快に動き回るんだよな。


 そんなこんなで、レッドは剣聖である俺の父さんに、稽古をつけてもらえることになった。




 ---




 さて。村で俺はどう過ごすか……言うて、俺自身、帰ってきたところでやりたいことがあるわけでもなく、まあ王都にいるよりは静かでマシだよね、くらいのノリで帰ってきただけ。


 基本的にやることはここでも変わらず、日課のトレーニングと魔法の習得だ。あとはひたすらごろごろしてるだけ。寮でも家でもやること変わらんの、マジで草。


 日課のトレーニングも良く続いているものだ。こういうだるいことって、やっぱりサボりたくもなるし、経験上、一回でもさぼったらその後どんどんさぼるようになる。


 だから意識して毎日やるようにはしていたが、もちろん体にも目に見えて成果が出てるのもあって、続いているのだ。もしこの世界にゲームがあったら、続かなかったかもしれんが。


 前世の俺だったら、トレーニングなんか三日も経たずにサボっていた。左利きになりたい!って頑張った時期もあったけど、結局3日でギブだったなあ。


 レッドは父さんと稽古、ユリアは基本的に俺の家に滞在している。ユリアは母さんの料理も手伝っていたな。母さんはユリアの料理の手際の良さを褒めていた。良い「お嫁さんになるわよ~」とか、なぜか母さんはちらっと俺の方を見て。


 ……なぜ俺を見る。なぜかユリアは顔を赤くしていた。





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