第65話 魔剣士試験で会いたくない奴と会った
剣技大会はそんなめんどくさいこともあったが、無事に終わった。
剣技大会最終日に、1年の部、2年の部、3年の部のそれぞれの優勝者がデスマッチをするという企画を行っていたが、そこでもブルーは2年3年を相手に圧倒し、そこでも優勝していた。あいつマジでバケモンだろ。
試合内容は単純で、とりあえず、ブルーが全部の攻撃を受け流して反撃、というものを繰り返すだけの試合だった。下の学年に手も足も出ずに負けて、さすがに2年3年の優勝者はうなだれていたな……。可哀そうに。
俺はその試合を見ていたレッドに「俺の言った通り、あいつバケモンでしょ?」と言ったら「うん。あれは負けても仕方ないな、はは、はははははは」と苦笑いしていた。なんか壊れちゃったけど、まあ大丈夫だろう。
そして学園祭と剣技大会が終わり、またいつもの学園生活に戻った。比較的平和な時間が過ぎていき、いつの間にか1年生も終わりが来る。俺は先輩になってしまうのだ。こんな覇気もないチー牛陰キャが……先輩に強制的に……。
まあ別に後輩と関わる気ないからいいけど。
そういえば、俺、ペア組む授業は無いって言ってたじゃん。普通にあったよ。前世なら必ず俺が一人余って、先生か知らんクラスメイトと嫌な顔されながら組まされていた、でも今世の俺は違う。ネクラがいる。
ネクラも俺としか友達がいないから。それにネクラはあんな陰キャそうに見えて暗殺一家の息子だ。身体能力も高い。剣技の授業のときはネクラとペアを組んでいた。
いやマジで助かったわ。ああ、ユリアもいたけど、最近ユリアと俺が付き合ってるだの何だのって噂が未だに流れてて、ちょっとペア組みづらくなっててな……。
俺のネクラというペアが決まったので、ユリアの相手が見つからず余っていた。でも、オレンジ髪の活発少女って感じの子がユリアをペアに誘っていた。見た感じ、ユリアと楽しく話しているし、安心だろう。アホそうだけど。
ユリアも、ああ見えて、警戒心は強いんだよな。神声教団に狙われる身だから、俺やレッド以外に自分から話すことはそこまでない。もちろん、ユリアは俺が近くにいないときに、女子たちに話しかけられれば楽しそうに話しているのはたまに見る。
12月には期末試験もあった。俺はとりあえず今回も80点前後に調整した。リオにぴったり80点なのを前回疑われたので、今回は70点、80点、90点みたいに多少ばらけさせるようにさせた。それでも学内10位以内には入ってしまった。
ブルーは今回も、剣技満点魔法0点だ。ユリアは魔法満点剣技60点、ネクラはどちらも80点、レッドは剣技90点、魔法70点だ。
今回の学年1位ももちろんリオだった。
だが、俺はここで試験が終わり、というわけではない。魔剣士科に行くための試験が待っている。う~ん、別に魔剣士科に行く必要もない気もするけどなあ。でも、剣技も魔法も両方の講義受けられるってお得じゃん?いやでもなあ。まあやるだけやってみるってことで。
ちなみに、ユリアとネクラは魔法科、ブルーとレッドは剣士科に行くようだ。
基本、その科に所属しているものはその科での講義しか受けられない。しかし、魔剣士科は自由に魔法科と剣士科を自由に行き来できる。
魔剣士科に所属する人は1年に1,2人くらいらしい。しかし、どういった試験なんだろうな。試験は明日だ。
魔剣士科はほとんど人がいないため、過去問みたいな対策もしづらい。自分のいまの実力を試す以外無い。もし落ちたら、まあ、魔法科にでも行こう。
正直、魔法のほうが楽しい。あと、剣士科に知り合いがレッドくらいしかいないし、ブルーとも関わりたくないからな。
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「チー君、頑張って!」
「師匠なら余裕っすね」
特別試験前日、ユリアとネクラから応援メッセージをもらった。ありがたいが過大評価もひどすぎるものだ。俺は嫌そうな顔をしながら適当に返事をしといた。もちろん「あ、はい」って。
そして特別試験当日を迎える。場所は、以前剣技大会が開かれたドーム型の施設だった。
いやあ、いつ見ても広いなあ、天井とかどんだけ高いんだあれ、とか感想を抱きながら試験会場に入る。
そして、会場のど真ん中に、触れるだけで震えてしまいそうなほどの強者のオーラを放つ人が腕を組みながら立っていた。そう、試験官はまさかのシン学園長だった。
このいかつい顔、睨んでいるかのような鋭い眼光。ああ恐ろしい。かっこいいけど、怖い。シン学園長が話し始める。
俺はとりあえず、学園長の前で立ち止まる。……しかし両者無言。あれ、会場間違えた?いや、それはない、間違えるのが怖くて恥ずかしい俺は何度も会場を確認した。う~ん。きまずい。
すると、後ろから新たなざっざっという足音が聞こえて来た。俺は振り返ると、俺もそいつも、『げ』と呟いて両者顔を引きつらせた。
「お前は……チーか……この卑怯者が……私は忘れてないぞ!神聖なる決闘で私に不意打ちを食らわせたこと!」
そう、リオだった。眉を引きつらせて俺を指さしてきた。
こいつは首席だしまあ、魔剣士科を希望するのもまあ納得だ。俺こいつ苦手なんだよな、気は強いし、プライド高そうだし、なんか知らんけど敵意向けられてるし。
まあここで言い争っても無駄だし、ていうか話したくないし、めんどくさいし、俺は目を逸らし、ガン無視を貫いた。
「おい!無視か!この……」
ほら短気だ。短気は損気やで。まあこいつのことはどうでもいいけど。すると、リオが背中の剣の柄を握って鞘から抜こうとしている。おいおい、ここが試験会場だって忘れたんか?
と、このやり取りを見ていた学園長が軽く咳払いをする。それにリオがハッと気づいて、すぐに冷静に姿勢を正して学園長の前に立った。
こいつ、切替はっや。
ていうか、リオってこんなキャラだったか?けっこう冷酷なクール系って感じだった気がするけど、ここまで感情的な奴だったか?まあいいけど。相当俺は嫌われているようだ。
学園長はついに話始める。
「さて。2人ともそろったところで、試験内容を説明する。まずは、向こうにある空き部屋にて、筆記試験を行う。魔法と剣の知識を試させてもらう。付いてこい」
説明後、別室に移動し、筆記試験が行われた。難易度は、まあ、1年生にやらせるような問題ではないが、俺にはほぼ全て解けた。魔法は言わずもがな、剣は父さんから基礎は習っていたからな。
どれくらいが合格点なのかは分からないけど、多分問題ないだろう。
筆記試験が終わった後は、再び最初に集まった会場に向かう。
「さて、次、というか最後の試験だが、実戦形式で行う」
実戦かあ、まあ異世界らしいけど。でも一体どんなことをするのか?
「ルールは簡単。私を2人で協力して倒して見せよ」
『は?』
俺とリオは同時に呟く。そして顔を見合わせる。俺はすぐ目を逸らしたが。見合わせた時、明らかにリオは嫌そうな顔をしていた。多分俺も嫌な顔してたと思うけど。
そして先に口を出したのはリオだった。
「学園長、私はこいつと手を組むのは納得いきません。姑息な手を使うに違いありません。恐らく大した実力もないのでしょう。1対1でそれぞれ戦わせていただきたい」
学園長は何も言わずリオを見つめるのみ。
「では、貴様は?」
続いて学園長は俺の方を向き、聞いてきた。これは、試されているのか?どうする?本音は”絶対に嫌だ”。
大して関わりもない見知らぬ女と手を組んで、「こいつ私の事触って来た!」「キモイ!」とか言われたら俺の人生は一瞬で終わる。女と手を組むのはリスクでしかない。ペアが男ならまだしも。
しかも、俺は協力なんてできるわけない。俺はずっときもいというだけで、孤独に1人で生きて来た。人間観察は得意だが、他人と協力は論外だ。
だが、それを言っていいものか。ま、リオも正直に俺と組みたくないって言っているわけだし、俺も正直に言うか。俺は怖いので学園長と目を合わせずに答えた。
「はい。嫌です」
学園長は「ふむ」と呟いた後、冷静にこう言った。
「では、不合格にするが、いいのか?」
「よし!チー!私と協力しろ!足を引っ張ったら殺……許さんからな!」
急にリオは態度を変えて俺に必死で訴えて来た。そんなに合格したいの???
まあ、リオに近づきすぎないように立ち回れば問題ないか。正直俺は不合格でもいいって思ってたし。遊び感覚で受けただけだし。
俺達の様子を見て、学園長は大剣で戦うのか、大剣を地面に突き刺して笑う。
「では、貴様たちの本気を、私にぶつけてみろ!」




