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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第6章 番外編

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第271話 出る杭は打たれる?

 



 俺は目が覚めると……目が覚めても辺りが真っ暗で何も見えない。手首には縄だろうか、縛られて身動きが取れない。ケツは木のタイル、床の感触。何となくだが、ここはこの村のどっかの倉庫か、納屋か建物の中だろう。


 恐らく今は夜、窓も完全に締めきっていて、光がどこにも見えない。感じるのは、俺たちがまとまって捕まっているということ。ガサゴソと、俺の他のメンツも動いている。


「チー君、いる?」


 かなりの小声で、ユイの声が聞こえた。ユイは何とか無事なようで安堵の息を吐く。


「はい、います」


「ねえ、この状況どうすればいい?」


「……とにかく余計なことは絶対にしないでください。考えますので」


 今のこの状況を整理して、今どの行動をすべきか考えるしかない。


 まず、俺たちはどこか知らない建物の中に拉致された。で、黒幕は恐らく、メイド。そしてヒキコーモリ家の人間だと白状した。ネクラの暗殺一家ということになる。


 しかし、依頼で俺たちを狙うなら、なぜ拉致なんてめんどくさいことを?普通にあのまま殺せばよかったはず。ネクラもここに来るのだろうか?何か試されている?


 それにしても、SSランクチートのランでさえ欺き、俺たちに毒を盛ったんだ。今縛られているこの状況じゃ、脱出しようが戦うことになろうが、勝てる見込みもない。


 ユイは以前、メイドはAランク冒険者だったと言っていた。俺にはそうは思えない。あの手際の良さ。強さ。メイドの無表情の奥にある見えない何か。闇魔法のオーラを放って、このフィールド一帯の人の気配を見つけ出すことはできるが、確実に警戒させるだろう。


 どうすれば?


 すると、ランは人の気配を察知したのか、俺の手をツンツンと叩く。


「もう仕方ないわ、チーは誰にも気づかれないように、みんなの縄をほどいて。さすがにアタシでも敵がどこにいるまでかは分からないわ。合図をしたら、闇魔法のオーラを放出して位置を即座に確かめて。アタシはすぐに光を照らすわ。あなたはすぐに迎撃して」


「え、えっと、はい」


 説明が地味に長いが、作戦を立ててくれるのはありがたい。確かに、ずっとここに縛られてるよりはマシだ。


 俺は緻密に、闇魔法を操作して超小型の幻想剣を操り、みんなの縄を次々と、静かに切っていく。ランの縄も斬ったのを合図に、俺は闇魔法のオーラを、ここ一面に一気に解放した。俺のオーラに何者かが接触した。位置はすぐに分かった。


 だが、その瞬間に、こちらに向かれる殺気を感じ取り鳥肌が立つ。来る!


「ブライト!」


 ランはすぐに光魔法を発動し辺りが照らされる。その瞬間、俺の目の前に、黒ずくめの男が現れ、短剣で俺を突き刺そうと肉薄していた。俺は警戒していたのもあって、幻想剣で相手の短剣を弾き落とす。


 相手は目を丸くしていたが、すぐに俺から距離を取って後ろに跳躍して行った。


 そいつは俺よりも少し背が小さいくらいだろうか、そして黒髪のやる気のなさそうな覇気のない目。懐かしい、学園卒業以来一度も会っていなかった、ネクラだった。


 隣には先ほどのメイドも、メイド服から黒服に着替え、たたずんでいた。恐らく、ネクラとメイドは歳の離れた兄妹、ということだろうか。


「さすがにそう簡単にはいきませんね」


 メイドは呟く。メイドは、あちら側ということか。この状況、メイドを殺さないと、終わらないのか?


 先程のメイドの言う通りだ。俺は今の幸せに慣れ過ぎていた。緊張感がどんどん薄れていっていた。ただ、まさか、メイドに裏切られるとは思わなかった。


「メイド、どうしたの?正気に戻ってよ!」


「いいえ、ユイ様。私は正気です。仕事を遂行しているまで」


「違うでしょ!メイドは私をずっと守ってくれた、それが仕事じゃないの!?」


「……今は暗殺の仕事を遂行するまでです」


 メイドはただ淡々と答えるのみ。俺は何となく、疑問に思っていたことをメイドに聞いてみた。


「あ、えと、あの、メイドさん」


「はい」


「あなたはその、Aランク冒険者だったと言ってましたけど……その、実は俺たちより強かったり?しますか、ね?」


「それは分かりません。ですが、まあ、答えましょうか。私は元々ヒキコーモリ家の長女でした。でも、冒険者に憧れがあり、家を飛び出して冒険者になりました。ただ、流石に今までに比べると平和な依頼が多すぎて、ソロながら、あっという間にAランク冒険者に上り詰めました。

 その実力を見込んで、私はユイ様のお父様……主に声をかけられました。ユイ様の護衛を、身の回りの世話をしてくれと。私は引き受けました。その時に冒険者はやめたので、実際はAランクより上という可能性もありますね。その後は、忙しい時期で戻ってきて欲しいと父上に命令されたことでしたから、王城の仕事と暗殺業を平行しているのが現状です」


 じゃあ、メイドはAランク以上、もしかすると、SSランク並みの強さを持っている可能性もあるということか。やばくね?こ、こっちにも一応元SSランクのランがいるし?まあ、魔法師と暗殺者なら確実に魔法師が不利なんだが。


 トントンと、俺は後ろからレッドに肩を軽く叩かれ、小声で聞いてくる。


「お前、一体なにを暗殺者に狙われるようなことしたんだよ」


 いや、流石に何も覚えが無いのだが!?まあ、でも可能性があるとすれば……


「出る杭は打たれる……ってことですかね。才能あるものは妬まれる運命なんじゃないすか?」


「いや、お前はなんでこういう時だけ才能とか自信満々に言うんだよ」


 当然だ。この世界は才能ゲー。俺は才能や遺伝子、環境に恵まれてここまで強くなった。誰かは知らんけど、妬まれても仕方ないだろう。


 だから俺は実力を隠して、平和に生きたかったんだけどなあ。もう遅いけど。





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