第270話 久しぶりの帰省は罠?
ギルド活動の休日、俺は家でのんびりゲームをしていた。ネット対戦使えないしシオリーも学園だから、ランを巻き込んでゲームしてるんだけど、ランは天才肌なんだけど、ゲームはからっきしなんだよな。いつも俺が勝ってしまう。
まあランはこの世界の人だしね。ランはブチギレてコントローラーを投げそうになるのを必死で止める。その時のランの呆けた顔が可愛くて可愛くて……抱きしめたくなるけどまあ、堪える。それを見たランはつまらなそうに呟く。
「な、なによ、今いい雰囲気だったんだから、触りなさいよ……」
「いや、殴られそうだし」
「もう、あんたねえ。アタシはもうそんなことしないから!」
「コントローラー投げようとしてた人の言うことは説得力がありますね」
「ちょ、からかってんの!?ねえ!」
なんてイチャイチャしていると、ユイから声をかけられる。
「チー君、なんかチー君のご両親から手紙が来てるよ?」
「え?」
俺はユイから手紙を受け取り、読んでみたところ、
『チー、久しぶりだな。お前、育ててくれた俺たち両親の事、まさか忘れちまったとかないよな?忙しいだけだよな?ユイとイチャイチャしすぎてもうどうでもいいのか?なあ、たまには遊びに来てくれよ、俺たちのたった一人の息子なんだよ
ギー』
う~ん、おっしゃる通り俺は今の幸せに忙しすぎて実家のことは完全に頭から消えていた。う~ん、マジでごめん。
まあ、しばらくギルドも休みとってるし、ちょうどタイミング的にもいいかもしれないな。俺だけで帰るか、とも思ったけど、ユイたちを置いてはいけない。まあ、ランがいるから最悪ランを家に置いておけばユイたちの身の安全は保障されたも同じだが。
「へえ、じゃあ私も付いて行こうかなあ」
「あ、ユイもやっぱ来ますか。ランはどうしますか」
「アタシも行くわ。チーのご両親のこと気になるし」
これでユイとランは一緒に行くことは決まった。あとは……そう言えばレッドはどうしようか。念のため声かけとくか?俺の父さんとも会いたいだろうし。
シオリーはまあ、一応今日の学園が終われば明日明後日は休みだから連れては行けるだろう。
「よし、じゃあ俺レッドに念のため声かけてきます」
「確かにそうだね、レッド君、チー君のお父様と仲いいみたいだし」
俺は少し出かける準備をしてから玄関を出る。ランはつまらなそうな顔をして「あの赤髪も来るの嫌なんだけど」と文句を垂れていた。いや、お前も赤髪やろ。
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ということで、その後レッドも合流し、シオリーも学園から帰って来たので、ランの瞬間移動で実家へ帰ることになった。俺のオンターマ領には、ランは一度訪問したことがあったようなので、瞬間移動を使って楽に実家に帰ることができた。
懐かしのオンターマ領の入り口で俺たちは立ち止まる。レッド、ユイ、シオリーと口々に感想を漏らす。
「うっわ、相変わらず田舎だなあ。でもこの自然が良いんだよな」
「そうだねえ。懐かしいなあ、小さい頃のチー君思い出すよ」
「羨ましいですよユイ先輩、小さい頃のチー君見てみたかったのに」
「やめろ」
ランはただ興味津々と村を見回していた。ああ、俺の故郷は田舎ですよっと。俺たちは実家に向かって歩き出す。歩き出した瞬間、俺とランは一瞬後ろに気配を感じて、振り向く。しかし、誰もいなかった。
気のせいかと思って、再び歩き出すと、とある人影。目の前で出迎えてくれたのは、両親ではなく、メイドだった。
懐かしいな。メイドは嫌な思い出ばかりだ。ユイの護衛を無理やり押し付けたり、無賃労働させられたり、落ち込んでるメンタルぶっ壊れユイを俺に押し付けたり……ていうか、メイドって今は王城で働いてなかったっけ?
「お久しぶりです、ユイ様、チー様」
「メイド?久しぶりだね!」
「相変わらずお元気そうで」
ユイはメイドに抱き着いていく。メイドは相変わらずの無表情で、感情を表さない。そこは変わらないな。ユイは俺も思っていた疑問をぶつける。
「ねえ、前に王城で働き始めたって言ってたけど、なんでチー君の村にいるの?」
「私は確かに基本的には王城で働いていますが、今はユイ様のお世話になったこの村の手伝いも、こうしてたまに来ているのです」
「そうだったんだね」
「お疲れでしょうから、一旦、私の別荘でお茶でもいかがでしょうか」
「うん、行くよ。チー君、いいでしょ?」
「まあ、はい」
そりゃ、ユイも久しぶりにメイドとあえて嬉しいだろうさ。というわけで、俺たちは一旦、メイドの家で一服することになった。
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家の中に案内されつつ、中を見回すが、特に物が置いているわけでもなく、超シンプルって感じ。いかにもメイドらしい部屋の中。
メイドは俺たちをテーブルに座らせ、それぞれにお茶を出す。なんか、嫌な思い出が……ライの水筒お茶事件で、他人の出すお茶飲むのちょっと怖いんだよな。
俺はまずは香りを楽しむ。まあ、何となくだけど。まあ、毒が入ってるならにおいで気づくやろ、というかメイドがそんなことするわけないんだけどさ。しかし、ランはぴくっと眉を動かし、すぐに机にバンっとお茶を置いた。
「みんな飲まないで!」
しかし、時すでに遅し。俺とラン以外のみんなはお茶をすでに飲んでいた。シオリー、レッドは急なランの異変に戸惑っているが、ユイは少し不機嫌に顔をしかめ、ランに言い返す。
「ちょっとランちゃん、メイドが気に入らないのか分からないけどさ、飲まないでってどういう……こ、と?」
「そういうことよ」
ユイはそのままテーブルに突っ伏して意識を失った。え、マジで毒入ってたの!?続けて、レッドとシオリーも気を失っていく。意味が分からない。俺はこの状況に戸惑いつつ、すぐにメイドの方を向いた。しかし、いつものように無表情。
メイドはまるで俺たちを見下すかのように、冷たい視線を向けつつ、表情を変えずに語り始めた。
「まさか、”依頼”でチー様の名前を見ることになるとは思いませんでした。あなたを殺すのは難しいですからね。異常な人間不信からくる慎重さ、転生体による高い知能、才能。そんなあなたを騙すのは難しいと思っていましたが……今のあなたには失望しました、チー様。こんな簡単に、私を信頼するのですね」
「え?あ、はい?意味が分からないんですけど……」
俺は詳しく聞こうと思ったら、お茶を飲んでいないというのに、頭がくらくらして気持ち悪くなってきた。それに加え襲ってくる猛烈な眠気。いつ、毒を盛られた?
ランもどうやら同じ症状が出てき始め、俺にくっついてくる。この状況、かなりまずいのでは?裏切られたという怒りが湧いてくるも、猛烈な眠気に耐えられない。俺は必死に最後の言葉を絞り出す。
「メイド、てめえは一体……」
「チー様は驚くでしょうか。弟がお世話になりましたからね」
弟?メイドの弟って、知らねえけど……。
「私の名前は、”メイド・ヒキコーモリ”です」
ヒキコーモリ?マジかよ……。
俺はそのまま意識を失った。




