第267話 命の危機を感じた
すると、ランの元に一瞬で人が現れた。これは、リンだな。相変わらずの速さだ。リンはランに話しかける。
「ねえ、ラン、今のって」
「あ、お騒がせしたわね、さっきの隕石は私よ」
「やっぱりね。隕石振らせるのなんてあなた位だもの。なにかあったの?」
「そ、それがね!リン聞いて!あのレッドとか言う童貞クソ男が全線で目立ちたいのか知らないけど自分勝手に動いてうざいの!あたしたち後衛動きにくくてしかたな――」
するとリンは必死に文句を言っているランを見て急に笑いだす。
「な、なんで笑うのよ!」
「ごめんね、ランが楽しそうだなって思って。良い仲間を見つけたのね」
「え、そ、そんなんじゃないし……」
ランは恥ずかしそうにうつむく。俺はSSパーティにいたころのランはあまり見たことないが、一応リンには今のランが楽しそうに見えるようだ。でも楽しそうに隕石振らせるのは違うと思う……。
「あんたはどうなのよ」
「私?順調よ」
「そう。あなたの故郷からここまでかなり離れてるはずなのに、相変わらずの速さね、リンは」
「そうね。自分でもそう思うわ。……とりあえず、隕石はあなたの仕業ってことで何ともなさそうだし、帰るわね。久しぶりに会えて嬉しかったわ」
「私もよ、リン。たまには、遊びに来なさいよ」
「そうね。それじゃあ」
そのままリンは一瞬で消えていった。と、ランはいきなりふらふらとして倒れそうになったので俺はすぐにランを支える。どうしたのだろうか。とりあえず先に言っておく。
「今ランの事触れちゃってますけど、後で訴えないでくださいね」
「う、訴えないわよばか……うう、くらくらする」
「どうしたんすか?」
「魔素切れよ。隕石コントロールするのってほんときついんだから……。今日はその、アタシをおぶって持ち帰ってくれないかしら……」
「持ちかえ……?え、まあ、はい」
こ、これは、リアルな”お持ち帰り”ってやつか?ランは別に酔っぱらってるわけではないが、前世のお持ち帰りにシチュエーションが似ている……。俺はとりあえずランをおぶる。軽い。こんな小さい身体で、今まで頑張ってきたんだな。
ランはすぐにすやすやと眠り始める。可愛いな……。にしても、俺の背中に押し付けられるランの柔らかい二つの果実……。俺はじっくりとこっそり堪能する。
レッドが俺のところに駆け寄る。
「お、俺の負けは認める。だけど、ランもこんなになって、どっちが勝ちなのか分かんねえな」
「いやランの圧勝じゃないですか」
「即答だなおい。ところで、お前達やたら仲いい気がするけど、付き合ってんの?」
「……まあ、はい」
「お前モテすぎだろ……」
レッドに呆れられる。知らねえよ、俺も剣聖と大魔法師の偉大なDNAを引き継いで顔もイケメンで恵まれた環境で色々やってきたんだから、こうなるのも仕方なくない?
「とりあえず、ランに後でレッドが誤ってたって伝えておいてくれ」
「めんどいんで自分で言ってください」
「辛辣だな……俺の言うこと聞いてくれなさそうじゃねえのか、まあいいや」
レッドは髪をポリポリとかきながらそのまま歩いて行く。すれ違うようにユイとシオリーが俺に駆け寄ってくる。
「それじゃ、帰ろっか」
「はい」
こうして、無名パーティの二人の大ゲンカは決着がついて一件落着となった。いや一件落着か?これ。
------
とりあえず依頼の完了報告はクラウド達に任せ、俺たちは家に戻り、ランを部屋のベッドに寝かせる。
「すごい安心して寝てるね」
ランってこうしてみると、小柄さもあってすっげえ、シオリーに似たような、守ってあげたくなる感がある。顔も結構可愛いんだよね、いつも強気で眉が逆ハの字みたいにになってるけど。今はハの字で安心しているかのような表情だ。
てか、ちゃんと起きるんだよね?
「チー君、私も心配だし、そこにいて見ててあげて?」
「え、流石に怖いんだけど、ずっとおとなしく隣に座ってるとか」
「ええ……。でもランちゃんはチー君の彼女なんだから」
「俺はユイの彼氏でもありますが」
「もう、そうやって。ほら、ゲームでもやってて待ってればいいんじゃないの?」
ユイはリビングからswitchを持ってきて俺に渡してくる。分かってんじゃん、さすが俺のパートナー。
「とりあえず、夕飯出来たら教えるね」
「はい」
ユイはそのままドアを閉め、部屋を出ていく。俺は椅子に座ってswitchを起動する。音は少し小さめに配慮して。
……俺は横目でランを見る。今、部屋にランと二人きり。ランは寝たまんま起きない。俺の中の悪魔がささやく。
(今ならランの身体触り放題だぞ?どうせキレてさせてくれないんだから)
いや、待て待て。もしバレたらそれこそ終わりだ。
(でも、魔素切れになった人間は1日くらいは眠ったままなんだぞ)
なんでそんなこと知ってんだ、俺。ああ、本で読んだことあるからな、俺。だとしても、それはさすがに怖すぎる。ランに常識は通用しない、目の前で目覚めたらどうする。
(なに、ちょっとでいいんだよ、ちょっとで。今ね付いたばっかりなのにすぐ起きるか?)
まあ、確かに。じゃあ、ちょっとだけ……。そりゃ俺だってランに触れたいさ。でも、くそ、本能には逆らえない……。俺は犯罪者になるのか……。俺はランの可愛い胸に、手を伸ばしていく。徐々に。ゆっくりと。
「……なにしてんのあんた」
ランは目を開けていた。終わった。




