第266話 元SSランクパーティの本気やべえ
そしてついにレッドとランの喧嘩が始まった。
ランは速攻杖を上に向け、無詠唱で何百もの鋭い岩石を宙に発動し、それをレッドに向けて次々と高速発射した。
何だよありゃ、一度にそんな数の魔法を発動できんのかよ、俺でも頑張って30ほどだぞ?魔法なら絶対ランには敵わないと実感する。
レッドはそれをすべて剣で捌いていく。レッドのフィジカル、動体視力もさすがのものだ。とは言え、あんな大量の魔法の応酬を捌き切れるわけもなく、いくつか岩石を掠っている。ただ、ちゃんと致命傷になる岩石だけは見極めて避けているのもさすがだ。
レッドはすべて捌き終えると、自慢のスピードでランに一気に近づく。
ランはレッドの行く先に岩盤をいくつも召喚していく。レッドは構わず突っ込んで、目の前の岩盤を次々と破壊していく。さすがのパワーだが、それでもランの表情は揺るがない。レッドがランを斬れる間合いまで来た。そして瞬時に剣を振りかぶる。
「もらった!ってうおああ!」
レッドの足は、地面から伸びて来た伸縮自在な蔦によってぐるぐると捉えられていた。もちろんランの魔法だ。ランは杖をぐるぐると動かして蔦を操り、レッドをぶん回している。うわあ、酔いそう……。
そのままレッドを空高くまで投げ飛ばした。ランはそのまま宙に投げたレッドに杖を向け、続けて魔法を発動する。何を発動したかと思えば、ただの初級魔法、ファイヤーボールだ。だが、その大きさはけた違いだった。普通に直径10メートルはある。あんなのまともに食らったら丸焦げだ。
それを更に風魔法を使って押し出し、火球を高速で飛ばした。その威力はすさまじく、遠くで観戦しているこちらまで熱線を感じるほど。レッドは吹き飛ばされて身動きができないが、空中で踏ん張って体勢を整える。そしてこちらへ向かってくる巨大な火球に絶句する。
「な、なんじゃこりゃあ!ちくしょう!」
レッドはそれを木剣で思いきりぶった切った。火球は見事真っ二つになり直撃を防ぐ。
レッドはそのまま上空から重力のままに自由落下し、着地したと思いきや、レッドの着地する地面を錬成で水に変わっていたために、そのままボチャンと巨大な水しぶきを上げて着水。
ランはレッドの着地地点をすぐに予想して、地面を水に変えたのだろう。そしてそのままレッドの落ちた水はすぐに氷へと変化する。
え、そこまでする必要ある?レッド凍死したかな……。まあその心配もなく、すぐに氷は砕け散りそこからレッドは脱出。ランはすぐにレッドを挑発する。
「どう?さっきは熱かったと思うから、水浴びさせてあげようかと思ったのだけど」
「うるせえ!むしろ凍ってるじゃねえか!」
「あら、冷たくて気持ちよかったでしょ?」
「うるせえっつってんだろ!」
レッドは再びランに突っ込んでいく。ランは、レッドの踏み込んでくる地点を予想して地面に氷を張っていく。俺もよくやる戦法だな。
しかしレッドはよく見てそれを躱していく。レッドはランの目の前まで接近して木剣を振る……と見せかけ地面を蹴ってランの顔面目掛け砂をかけた。が、ランにはそれも見抜いていたかのように風魔法でレッドに跳ね返す。しかしレッドはすでに目の前にはいなかった。
レッドはあの一瞬でランの後ろに回り込んでいたのだ。これは、レッドの逆転勝利か?
「終わりだ!」
レッドは剣を振ったが、斬ったのは、ランではなく、岩でできた柱だった。ランはすぐに自分の足元の地面を盛り上げて、自分のいる位置を高くして躱していた。確かに、地面を使ってランの位置は移動したが、足は”一歩も動いていない”。
ランはあっけにとられたレッドの顔を見下ろしつつ、エアハンマーで吹き飛ばす。レッドは数10メートル先まで吹き飛ばされ、着地する。
「あら、惜しかったわね」
「くそ、ずるいぞ!」
「でも、地面を高くして位置は変えただけで、一歩も動いてないわ」
「はあ、ふざけんなロリババア!」
「……ロリババア?」
あれ?なんか急に雰囲気が変わった。ランが苦笑しながら、殺気をまき散らしながら話す。
「あ、あんた、それ、あたしの事?ああそうよね。てかね、あんた勝手に勘違いしてると思うけどあんたたちと同い年よ!」
「な、なんだと!?俺てっきり先輩面してるから年上かと」
「そうよ、あたしは孤児院暮らしで学園には行けなかったからね、にしても、”ババア”、はどうなのかしら?あたしはババアに見えるのかしら?あ”?」
「わ、悪かったからその殺気を消してくれよ……」
レッドはランのおぞましいオーラにビビっていた。ランはすぐに、先ほどの蔦よりも長く太い蔦でレッドの胴体を拘束した。レッドはあがくも、太い蔦が硬すぎて動けないし、ぎゅうぎゅうに締め付けられてかなり苦しそうだ。
「はあ……見せてあげる。てか殺してげる。あたしが発明した、”神級魔法”で殺してあげるんだから、感謝しなさいよね」
「お、おい、何する気だ?とりあえずこの拘束を解いてくれ!」
レッドがガチの恐怖で叫ぶ。ランは聞かずに何かをずっと詠唱している。杖は天に掲げたまま。それに、”神級魔法”なんて聞いたことないが、ランのオリジナルということか?超級魔法の上の存在か?
「ね、ねえ、あれ見てよ、チー君」
「え?」
隣にいたユイが空高くを指さす。俺も見てみると、意味が分からなくて、思わず息を呑む。
レッドも空を見て絶望している。空からどんどん近づいているのは、隕石だった。そんなの意味わからん、俺も石を宇宙近くまで飛ばして落とすってのはやったことあるが、宇宙に存在する隕石をそのまま操って持ってくるとかどんなチートだよ。
「さあて童貞君、あたしからのプレゼント、ありがたく受け取りなさい?」
そう言ってランはレッドに向けて杖を振る。隕石はレッドに向けて加速する。これは、死ぬ、まずい。
「やめてえええおれがわるかったあああ!」
レッドがついに泣き出す。レッドまで残り数メートルへと迫っていく。これはさすがにやばいと思い俺は立ち上がりすぐさまレッドの目の前に飛び込んだ。その時。加速していた隕石はぴとっと止まった。大気圏を突破してきた隕石は燃え上がっていて熱いどころの話ではない。
俺は咄嗟に、闇魔法の魔素のオーラを漂わせ、周囲を何とか守っていた。めんどくさいことさせやがって。
ランは驚いた顔をした後、杖を横に振って隕石を、また宇宙にぶっ飛ばした。てか、あのスピードの隕石を、ランは自分で自在に止めたってのか?はあ、マジでビビった。
「チー、助かった、マジで、死んだかと思ったぜ……」
レッドが安堵の息を吐く。まさかランの実力がここまでとはな。さすがはSSランクパーティの一人。俺は絶対にランをガチギレさせてはいけないと思った。




