142.ジュンの決断
142.ジュンの決断
翌朝。
ニューレオンの空は雲ひとつなく晴れ渡り、砂漠の地平線が金色に輝いていた。
ジュンは、胸の奥にまだ残るわずかな迷いを押し込みながら、拠点の広間へ向かった。
そこにはすでに、オットー、ダクラス、ソニア、グラント、イリーナ。
そして、リリル、ドノバン、ジュガ、ルード、アーチバルド、ユリア、ハンスの七人が揃っていた。
十二人の視線が、静かにジュンへ向けられる。
ジュンは深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた。
「……みんな。
昨日、君たちの気持ちを聞いて、俺は一晩考えた。
そして……答えが出た。」
オットーがわずかに身を乗り出す。
ソニアは息を呑み、イリーナは静かに目を閉じた。
リリルたち七人は、緊張した面持ちでジュンを見つめている。
ジュンは、迷いのない声で言った。
「俺は……この世界に残る。」
その瞬間、部屋の空気が揺れた。
驚き、安堵、寂しさ、喜び――さまざまな感情が入り混じった沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは、オットーだった。
「……そうか。」
彼はゆっくりと頷いた。
「正直、寂しい。でも……お前が決めたなら、それが正しいんだろう。」
ソニアは微笑みながらも、目に涙を浮かべていた。
「ジュン……あなたがこの世界で生きるって決めたなら、私は応援するわ。
あなたはずっと、誰よりも仲間を大切にしてきた。
そのあなたが選んだ道なら、きっと間違いじゃない。」
ダクラスは眼鏡を押し上げ、静かに言った。
「医師としては、君が安全な場所にいることが一番だ。
この世界での生活が君にとって自然なら……それがいい。」
グラントは短く言った。
「……元気でいろよ。
俺たちは帰るが、絆は切れない。」
イリーナはまっすぐジュンを見つめ、敬礼した。
「艦長。
あなたの決断、敬意を表します。
あなたがいたから、私たちはここまで来られた。」
ジュンは一人ひとりの言葉を胸に刻み、深く頭を下げた。
「ありがとう。
みんなの言葉が……本当に嬉しい。」
次に、復元された七人が前に出た。
リリルが微笑む。
「ジュン。
あなたが残ってくれるのは……本当に嬉しいわ。
あなたがいなければ、私は“私”として生きられなかった。
これからも一緒に歩んでいきたい。」
ドノバンが杖を軽く鳴らす。
「お前が残ると聞いて、胸を撫で下ろしたぞ。
我々ブルーファルコンは、お前を仲間だと思っている。」
ジュガが豪快に笑う。
「よかったじゃないか、ジュン!
この世界は面白いぞ。
一緒に酒でも飲もうじゃないか!」
ルードは穏やかに頷いた。
「あなたが残ることで、この世界は少しだけ明るくなるでしょう。
神もきっと祝福してくれます。」
アーチバルド元子爵は深く頭を下げた。
「ジュン殿。
あなたがこの世界に残ると決めてくださったこと……心から感謝します。
あなたは我々にとって恩人です。」
ユリアは涙を浮かべながら微笑んだ。
「ジュン様……ありがとうございます。
あなたがいてくれるだけで、心が強くなれます。」
ハンスは静かに言った。
「ジュン様。
あなたの決断は、この世界にとっても大きな意味を持ちます。
どうか、これからもお側に。」
ジュンは胸が熱くなるのを感じた。
自分が選んだ道は、決して孤独ではない。
この世界には、自分を必要としてくれる人たちがいる。
「……みんな、本当にありがとう。
俺は、この世界で生きていく。
ニューレオンをもっと良い町にしていきたい。
そして……魔素と科学の融合を、この世界の未来につなげたい。」
オットーが笑った。
「なら、俺たちが帰った後も、しっかりやれよ。
お前の町なんだからな。」
ジュンも笑った。
「もちろんだ。
そして……いつかまた会おう。
次元転送がある限り、世界はつながっている。」
その言葉に、全員が頷いた。
こうして、ジュンの決断は正式に仲間たちへ伝えられた。
二つの世界の狭間で揺れていた心は、ついに一つの道を選んだ。
そして、別れの時が近づいていた。




