俺は認めねぇえ!
天文二年六月。
細川晴元と本願寺の和睦が成立した。
しかし、この知らせを受けた細川晴国は、怒りをあらわにしていた。
「聞いてねぇよ!」
そこへ部下が報告を続ける。
「殿、和睦を仲介したのは三好長慶です」
「三好長慶? 三好元長のガキじゃねぇか?」
「はい。どうやら阿波より戻り、細川晴元陣営に入っていたようです」
「なんで元長のガキが晴元の陣営に入ってんだよ? アイツにとっては親の仇じゃねぇか?」
「詳細は不明です」
「ちっ! じゃあなんでそのガキが和睦なんて仕切ってんだよ! 理由は?」
「そちらも詳細は不明です」
「お前さっきから不明しかいってねぇじゃねぇか! なにならわかんだよ!」
「晴元陣営と本願寺の間で結ばれた和睦の条件です」
「あ? 重要じゃねぇか! 早く言えよ!」
「主な条件は二つです。一つは、足利義晴様を正統な将軍と認めることです」
「……問題ねぇな」
「はい。問題は次です。もう一つは、細川晴元が京兆家の家督を継ぐことです」
「はぁ? そんな条件飲めるか!」
「はい。殿が挙兵された意味がなくなります」
「当たり前だろうが! 俺は兄貴の跡を継ぐために兵を挙げたんだぞ! なんで晴元に京兆家を譲らなきゃならねぇんだ!」
晴国は声を荒らげた。
「俺はこの和睦を認めねぇぞ! 徹底的に晴元の連中を叩く!」
◇
晴元と本願寺が和睦しても、俺、細川晴国の戦いは終わらなかった。
俺と同じく和睦に反対する一向一揆勢とも協力し、各地で暴れまわっていた。
しかし、俺たちの勢いは徐々に衰えていった。
やべぇぜ。
そんな俺に手を差し伸べる奴が現れた。
畠山稙長。
かつて兄貴・細川高国を支持していた人物だ。
どうやら畠山家中で対立していた稙長のライバル畠山義堯が一向一揆で敗死したことで、再び河内で勢力を盛り返しているらしい。
ふはははー! これでまだ俺は戦える。
あん? どうした稙長? ぱっとしねぇ顔してよ?
話を聞くと、なんとコイツはまだ家中でトラブルを抱えているとのこと。
対立相手は、河内で守護代を務めている遊佐長教という男らしい。
どうやら俺につくか晴元派につくかで完全に仲違いしたって話だ。
これで対立するってことは元々仲悪かったんだろう。
だが稙長! 大丈夫だ! 俺が晴元もろとも長教って奴も蹴散らしてやるぜ!
そうして畠山稙長という新たな味方を得て、晴元派と戦い続ける俺にさらなる転機が訪れた。
天文三年五月。
なんと本願寺が晴元との和議を破棄したのだ。
だから言ったじゃねぇか! あんなものは認めねぇってよ!
そのまま本願寺勢が俺側についた。
と思ったらさらに俺につく奴らが現れた。
晴元派にいた三好勢の三好連盛と三好長逸だ。
えっ? マジ? お前ら俺につくの?
まあ構わない。来るもの拒まずだ!
これで俺・稙長・本願寺勢・三好勢 vs 晴元・遊佐の構図になり圧倒的俺有利になったわけだ。この戦もらったな。
俺たちの連合軍は強かった。
俺の味方を攻めてきた晴元方も、連盛たちが返り討ちにしてやった!
しかし相手方もただ黙ってみているわけじゃなかったみたいだ。
遊佐長教は木沢長政と協力し、畠山家の当主に稙長の弟・畠山長経を擁立しやがった。
くそっ! 稙長の勢いが無くなっちっまったじゃねぇか!
そしてこの辺りから俺に吹く風が変わり始める。
しかし俺は諦めないぜ! 最後まで戦い抜く!
あん? 将軍が上洛するかもだって?
◇
天文三年九月。
晴国と晴元の争いが続く中、足利義晴は再び京へ帰ることとなった。




