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俺たち最強!

義晴が気にしていた高国・浦上勢は、その頃も摂津で攻勢を続けていた。


神呪寺に陣を置いた高国たちは、晴元方の守る城々へ次々と兵を進める。


九月には富松城を攻略。


十一月には、晴元方についていた薬師寺国盛が高国方へ寝返り、そのまま大物も高国方の手に落ちた。


伊丹城、池田城はいまだ晴元方に残っていたが、播磨から東へ進んできた高国・浦上勢の勢いは止まらなかった。


かつて京を追われ、各地を転々としながら援軍を求め続けていた細川高国。


西国で浦上村宗という強力な味方を得たことで、その戦況は大きく変わっていた。


西から高国・浦上勢。


東からは、義晴の命を受けた三雲・蒲生勢。


晴元方は、その両方への対応を迫られていた。


そして戦は、翌年へと続いていく。


     ◇


享禄四年二月。


年が明けても、高国・浦上勢の勢いは衰えていなかった。


そんな中、朽木谷の義晴にも新たな知らせが届く。


「上様。北郡の国人・浅井亮政殿が、高島郡へ兵を進めたとのことです」


「高島郡って、ここを狙ってるの?」


「聞くところによりますと、浅井殿は以前より六角定頼殿と対峙しておりました。定頼殿がこちらに兵を割いている今を好機と見たのでしょう。晴元殿方とも連携を取っているようです」


「どうするの? 戦うの?」


「いえ」


大舘は静かに首を振った。


「高国殿も、京に迫るほどの勢いでございます。こちらも京へ向けて動き出しましょう」


義晴は少し考えた。


「京にいる柳本甚次郎さんと木沢くんは?」


「まだ京に残っておりますが、高国・浦上勢がさらに迫れば、いつまでも留まってはいられますまい」


「そっか」


義晴は立ち上がった。


「じゃあ大舘。僕たちも行こうか」


「承知いたしました」


義晴は、長く滞在していた朽木谷を離れた。


葛川、堅田を経て、やがて坂本へ入る。


かつて京を追われた義晴は、再び都へ近づき始めていた。


     ◇


二月末。


高国・浦上勢の攻勢を受け、伊丹城が高国方へ明け渡された。


そして三月。


残る池田城も落城する。


晴元方が摂津に築いていた防衛線は、次々と崩れていった。


一方、東山からは六角勢の支援を受けた高国方の内藤彦七らが洛中へ進出。


高国・浦上勢の圧力も重なり、京を守っていた木沢長政、柳本甚次郎らはついに京を退いた。


「おっしゃ! まずは戻ってきたぜ、京までよぉ!」


高国は久しぶりに見る都を前に、声を上げた。


隣で浦上村宗が静かに京を眺めている。


「まさか本当に、すべての城を落としてここまで来るとは」


「あ?」


高国が村宗を見る。


「だから言ったじゃねぇか! 全部落としていくぞってよ!」


「確かに申されておりましたな」


「だろ?」


高国は得意げに笑った。


神呪寺から眺めた伊丹、池田、富松。


あの時、高国が勢いに任せて言い放った言葉は、ほとんど現実になっていた。


「高国殿、この後はいかように?」


「当然、堺に行って晴元ぶっ潰す!」


「では、私はこのまま出陣の準備をいたします」


「おう! こっちは上様を迎え入れる準備とかしとくからよ。そっちは任せたぞ、浦上村宗!」


「承知いたしました」


京を取り戻した。


だが、高国にとってはそれで終わりではなかった。


晴元は、まだ堺にいる。


高国・浦上勢はさらに南へ進み、堺を目指した。


     ◇


高国方の軍勢は摂津・天王寺方面へと進出していた。


その先には、晴元方の拠点である堺がある。


「いよいよだな。晴元、もう目と鼻の先だぜ! 覚悟しろ!」


「……」


「なんだぁ、浦上村宗。お前、緊張でもしてんのか?」


「いえ。少し気になることがございまして」


「なんだよ。ここまで来てよぉ? この高国さんに言ってみ?」


村宗は南の方角へ目を向けた。


「三好元長でございます」


高国の顔が露骨に嫌そうになる。


「元長ぁ? 浦上村宗、お前嫌な奴の名前出すのな。俺はあいつら親子に散々な目に遭わされてるからよぉ」


「相手はあの三好元長ですぞ。ここまで姿を見せていないのが気になります」


「出てきたら俺とお前で潰してやろうぜ!」


「そう簡単にはいきますまい」


「えっ? 浦上村宗、お前の方が強いだろ? 謙遜すんなよ。自信持って行こうぜ。な?」


その時だった。


「伝令ー!」


兵が駆け込んでくる。


「あ? どうした!」


「晴元方が反撃! 三好元長らの軍勢がこちらへ向かっております!」


高国の表情が変わった。


「なにぃ! あの野郎! やっぱり出てきやがったな!」


「高国殿」


「なんだよ!」


「まずは前線の様子を確認いたしましょう」


「分かってるよ! ぶっ潰してやる!」


だが、高国の勢いとは裏腹に、戦況は思うようには進まなかった。


晴元方の反撃を受け、高国方は押し戻されていく。


再び伝令が駆け込んだ。


「殿! 先鋒が崩れております!」


「ちっ!」


高国が舌打ちする。


村宗はすぐに周囲の兵へ声を飛ばした。


「高国殿。一度兵を引きます!」


「ここまで来てかよ!」


「ここで無理をすれば、せっかく京まで取り戻した兵を失いますぞ!」


高国はしばらく村宗を睨んだ。


「……ちっ! しゃーねぇな!」


高国が振り返る。


「一旦引くぞ! 準備しろ!」


「はっ!」


高国方は天王寺付近から兵を退いた。


堺まであと一歩というところまで晴元方を追い詰めた高国だったが、三好元長らの反撃によって、その進撃は初めて大きく止められることとなった。


その後、高国勢と浦上勢は摂津に陣を構え直した。


一方の晴元方も、すぐに高国勢を押し返せるほどの余裕はない。


戦は、再び膠着した。


両軍は、それぞれの援軍を待った。


そして、その援軍が、この戦の勝敗を分けることになる。

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