第9話 さっそくラベンダーが咲いちゃった
キレイに咲いたラベンダーの紫色の花が風に揺れている。
「えっ⁉ すごーい」
コーラルに癒されたラベンダーが一株、さっそく花を咲かせて揺れている。
「見事な腕前ですな」
ジェイもポカンとした様子でつぶやいているよ。
コーラルは、ラベンダーは雑草扱いって言っていたけど、キレイだね。
あと、一株がデカい。
びっくりだね。
風にゆすられて、ラベンダーの香りがボクの鼻に届けられた。
とってもいい匂い。
こんなにいい匂いなら、薬師が香りにつられて薬草を買いにきても不思議じゃない。
コーラルって不思議。
治癒師って、普通は人間を癒す仕事じゃなかったっけ?
植物相手に人間を相手にしているみたいな治癒を施しているよ。
いまもコーラルは楽しそうに庭のあっちへ移動したり、こっちへ移動したりして植物たちをチェックしている。
「ん、やっぱりお宝だらけですね。これはお金になりますよぉ~」
コーラル、楽しそうなのは良いことだけど、服が泥だらけになっちゃうよ?
コーラルの服は屋敷に来た時のままだし、楽しそうにピョンピョン跳ねている珊瑚色の髪には枯れた雑草がくっついている。
「あー、コーラル? 楽しそうだけど、着替えたほうがよくない?」
ボクが言うと、ジェイも戸惑い気味に口を開いた。
「坊ちゃまの言う通りですよ。着替えてください。お屋敷に作業服くらいありますから」
だけどコーラルは耳を貸さない。
「ああ、大丈夫ですよ。どっちにしても汚れていたし、旅装ですからそこまでキレイでなくてもいいので。こんなの後からまとめてクリーンの魔法をかければ……あっ、コレはドラゴンツリーの幼木みたいね。魔法薬の原料というよりも、染料にして虫よけに使えそう。あら? これって炎の花が咲きそうな……いえ、それとも幻惑の花? いずれにしてもお宝よ。あぁすごいわ……」
コーラルは見つけた植物をコチョコチョとくすぐるような仕草をしている。
あんなことして何の意味があるのかな? 植物相手だから笑うわけでもないに。
ボクはそう思ったけれど、コーラルは治癒師だから何か意味があるのかもしれない。
「ああ、どの子も可愛いわね。わたしが元気にしてあげるわ」
植物に子どもを相手にするような声をかけている。
ボクはワケが分からなくて、ジェイに問うのよ視線を向けた。
でもジェイも両手を広げて首を振っているから、ワケが分からないようだ。
熱心に庭を見て回っていたコーラルが、パッと立ち上がると、クルリと向きを変えた。
「さぁ、だいたいのチェックはできたわ。日が落ちてきたらお水をあげて、本格的なお手入れは明日以降にしましょう」
コーラルはニッコニコだ。
「ふふふ。これから忙しくなりますよ。薬師たちに大人気の個人宅の庭ができあがりそうです。今は枯草みたいにみえますけど……お手入れをして植物たちが元気になれば、見込みありますよ。珍しい物が多いですし、お礼も弾んでもらえるでしょう。がっちり稼ぎましょうね」
コーラルにズイッと勢いよく顔を近づけられて、ボクとジェイは後ろに体を引きながら、コクコクとうなずくことしかできない。
えーと。コーラル? 君はさっき来たばかりで、しかも使用人だよね?
なのに、完全にリーダーの立場にいるよね?
まあいいけど。どうせこの家、いまはお金がなくて、没落寸前なんだから。
「あと坊ちゃま。この子について詳しくお話聞かせてもらっていいですか?」
コーラルは、ボクの肩のあたりにふわふわ浮いている水筒を指さして言った。
えっ? 君ずっとそこにいたの?
水筒君、ピンチ⁉




