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第8話 コーラルお庭で大興奮

「これは本当に素晴らしいお庭ですわっ!」


 ジェイとボクと一緒に庭へ出たコーラルが、長い珊瑚色の髪をぴょんぴょん跳ねさせながら大興奮している。


「こちらのお屋敷に入ってくる時にちらっと見ただけでもわかりました。治癒師としても、商売人としても、わたしの勘がこの庭は大当たりだと告げています!」


 コーラルは変わった人みたいだ。

 というか、ボク、変わって人以外はあんまり見たことないけど。

 

 ここにはお爺さまからもらった薬草など珍しい植物がたくさんあるらしい。

 ボクの目には枯れた植物の目立つ、ハゲかけた庭にしか見えないけれど。


 何が違うのかな?

 

 ジェイも首をかしげているから、ボクの感覚は正しいと思う。

 だけどコーラルの興奮はおさまらない。


「こんなお宝が埋まっているお庭を放置して辞めていくなんて。イオネル男爵家の庭師は、見る目がなかったのですね」

「いや。庭師は年を取ったので引退しただけです」


 ジェイは即座にコーラルの庭師への疑惑を否定した。

 ボクもうんうんとうなずく。

 他の使用人はともかく、庭師さんはお爺さまとも仲良しでよくしてくれたんだ。

 でもね。人間は加齢には勝てないの。

 最後のほうは、ちょっと認知症の症状が出ていて、引継ぎがうまくいかなかったみたい。


 コーラルはきまり悪そうにコホンとわざとらしい咳をした。

 

「そうですか。……あぁ、でも手に入りにくい珍しい植物がいっぱい。その植物たちがこんなに弱って……」


 コーラルは庭の一角にかがむと、枯れた草のようなものを引っこ抜いた。

 それをボクたちに見せながら説明する。

 

「これはマンドレイクのようだけど、悲鳴を上げる力も残っていないほど弱っているわ。本物のマンドレイクは買えば高いのよ」


 ボクには根っこまで枯れたただの草にしか見えないけれど、コーラルにはそれの価値がわかっているようだ。

 

「ほかにもお金になりそうな植物がたくさんありますね。うーん、ほかの使用人たちは、これに気付かなかったのかしら? もっとも魔法植物ともなると扱いにも注意が必要だけど……だからって……」


 コーラルは庭を眺めてブツブツとつぶやいている。

 そんな彼女にジェイが話しかけた。

 

「ワタクシには、どれがなにやらわかりませんが……植物に詳しくない者にとっては、雑草のように見えますね。魔力の弱い者と、魔力が強い者では、鑑定する力が変わるのかもしれませんね」

「そのようですね。やめていった使用人たちが価値に気付かず、盗っていかなかったのは幸いですよ。数が多いですから、再生できる物もあるでしょう。きちんと育ったものなら、薬師たちが買ってくれますよ」


 コーラルはそういって胸を張った。


「わたしが植物たちを癒してあげれば、薬師が勝手にやってきて勝手に高値で買いたがります」


 コーラルは、まずはラベンダーの花を癒し始めた。

 

「ラベンダーは一般的な花ですけど、王都では雑草扱いで花畑にあるのは珍しいのです。だから『ここに薬草がある』という薬師たちへの合図になります」


 そうなんだー。

 ボク知らなかったよ。

 

 コーラルはフフフと不気味で悪い笑みを浮かべた。

 

「フフフ。専門店で買う薬草は高いですからね。資格も必要ですし。でも『庭で摘んだお花』をもらって、ちょっとしたお礼をした、というのは商売とは言えませんからね。取引として記録に残す必要もないので税金払う必要もないですし……これはガッチリ稼げる予感がします。フフフ」


 そっ、そうなんだ。

 へぇ、ガッチリ……期待していいのかな?


 ボクとジェイは顔を見合わせて首をかしげた。

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