第24話 反撃
屋敷に向かって走っていると、向こうからジェイが走ってきた。
「何事ですか⁉」
「ジェイダイトさまっ。魔獣です」
叫ぶジェイに向かって、アクアマリンが叫び返している。
「なんだって⁉ なぜ⁉」
「屋敷の端のほうに、魔獣を引き寄せる植物が植えてありました」
「なんと⁉」
それはびっくりだね。
「えっ⁉ そんな……昨日はそんなもの植えてありませんでしたよ?」
コーラルが戸惑っている。
「わざと植えていった者がいるんでしょう。隠匿の魔法がかかっていましたし。オレは薬草の匂いに敏感だから気付いたけど」
うん、アクアマリン。変態だね。でも役立つ変態だから許す。
「噂には聞いていましたが、あんな臭い草、初めてです。元凶は引っこ抜いて焼いておきましたが、オレの魔力ではどこまで処理できたか分かりません。それに、すでに寄ってきてしまった魔獣は倒すしか手がないです」
「なんだって⁉ 魔獣除けがあったはずだが?」
ジェイの後ろからやってきたお父さまが叫んでいる。
そうだよね。
この屋敷があるのは王都の端。
端といっても王都だから、ここを乗り越えられたら、王都の中心部まですぐだ。
守りはそれなりにしてあるはずだ。
「魔獣除けの魔力が切れていました」
「それは変だな。私が魔力を補充していたのに。それが屋敷の主の役割だから」
……あ、そうか。
お父さまは魔道具へ魔力補充をしているから、いつもほとんど魔力を感じなかったのか。
でもそれが屋敷の主の役割って初めて聞いた。
お父さまの次はボクの役割だね。
「ほとんど魔力を感じませんでしたから、魔力を抜かれたのかもしれません」
「魔獣除けの件は貴族それぞれの家の大きな秘密だ。なぜそれを知って……」
うん。それは同じ立場である貴族の関与が濃厚だね。
ボク、心当たりあるよ。
「あっ、魔獣がっ」
お母さまの声が響いた。
……えっ? お母さま⁉ お母さまは妊婦なんだから、こんなとこ来ちゃダメでしょ。
「くっ」
アクアマリンが剣を握って、飛んできた魔獣を切った。
「ほとんどの魔獣は眠らせてきましたが、そう長くは持ちません。まずは屋敷の方へ戻って態勢を整えてから考えましょう」
「そうだな」
コーラルの提案にジェイがうなずいている。
お父さまは苦虫を嚙み潰したような表情で森の方角を見ていた。
ボクもそちらの方を見た。
地面に転がっている大型の魔獣が見える。
今は屋敷の警備が手薄だから、あんなのが目を覚まして襲ってきたらひとたまりもない。
お父さまが難しい顔をして森を見ている。
「ジェイ。なんとかなりそうか⁉」
「状況は厳しいかと」
ジェイでも難しい数の魔獣なんて怖いよ。
「オレもお手伝いしますよ、ジェイダイトさまっ」
アクアマリンがいてくれてよかった。
いまのボクは役立たずだ。
ぽやんとそんなことを思っていたら、コーラルの鋭い叫び声が響いた。
「坊ちゃまっ! 危ないっ!」
また羽の生えた魔獣だ。
魔獣からボクをかばったコーラルが跳ね飛ばされた。
「コーラル!」
お母さまが叫んでいる。
ああ、お母さまは妊婦なんだから安全な場所へ行ってもらわないと。
お腹にはボクの妹が入っている。2人分なんだ。
ボクがしっかりしなきゃ。
「お母さま! 屋敷へ戻りましょう! コーラルもっ!」
起き上がったコーラルと、お母さまの手を取って、ボクは屋敷目指して走る。
魔獣相手じゃ、マジックスキル【お弁当箱】は効かないし……。
どうすれば。
後ろではジェイたちが戦っている気配がする。
魔獣たちもそろそろ目覚めるころだろう。
元王国騎士であるアクアマリンがいるのは心強いけど、お父さまはほとんど戦力外じゃないかなぁ?
走りながらコーラルがボクに聞く。
「坊ちゃま。あの魔獣相手に有効なお弁当は出せませんか?」
魔獣相手にお弁当?
「もちろん毒入りで」
ああ、そういう使い方があるのか。
水筒君がボクの肩のあたりでコクコクとうなずいている。
イケる……のか?
「わたしのやったラベンダーの睡眠薬みたいなものでも構いません。坊ちゃまの魔力は少し増えていますから、以前よりはお弁当箱の数も出せると思いますよ」
そうか。
でもどうやって?
「ん~……食中毒にするのはどうかしら?」
お母さま。
案外、過激ですね、お母さま……。




