第2話 悲しい前世
ボクは夢を見た。
そこはボクの知らない世界で、ボクは『ブラック企業』というところで働かされていた。
『業績が悪い。もっと工夫しろ』
『はい』
ボクは返事だけはよいけれど、なんのアイデアも持っていなかった。
やることは次から次へと否定され、これは無駄では? と思うことばかり押し付けられていたからだ。
アイデアは全て否定されて、非効率なことばかりやらされていたら、病む。
売上は上がらず、会議、会議、会議。
『この会社が年功序列で出世できるところだからって、手ぇ抜いてんじゃねぇぞ』
『はい』
よい返事はできるし、言われていることは納得できたが、納得のいくように動くことはできなかった。
手足を縛られて全力疾走しろと言われても無理だ。
でもボクは下っ端だから仕方ない。
年功序列でも、成果主義でも、ボクの立つ瀬はあまりにちっぽけだ。
身の置き所がなくて居心地が悪い。
残業、残業、休日出勤。
体もどんどん疲れていく。
会議、会議、また会議。
頭もどんどん疲れていく。
満員電車に揺られて出勤して、終電で帰る日々が続いた。
給料には反映されない。サブスク働かせ放題。なんて言ってた頃はまだよかった。
上がっていく税金に社会保険料。
その反面、売り上げは落ちていく。
なのに行われるのは残業、会議、休日出勤。
給料日には、これって時給いくらになるんだろう? とふっと考えて線路へ飛び込みたい気分になったりもした。
会議してたって売上は上がらないだろう? と思っていたところ、その通りになった。
年功序列の出世どころか会社そのものが吹っ飛んだ。
ブラック企業は潰れて、ボロ雑巾のようになったボクが残った。
会社都合の失業だから手当はすぐに出たけれど、それだけじゃ足りないから次の仕事を探した。
でもボクの仕事はなかなか見つからなくて、正社員は無理。
派遣で働いたのに、最低賃金なにそれ美味しいの? ってな感じの働き方になっちゃった。
派遣なのにおかしいね。
賄いつきだから低賃金でも働いたのに、賄いがもらえなかった。
おかしいね。
あの派遣先は『端っこグルメだ』とかいって、大人しそうな女の人が来ると嬉しそうにそれを出して正規料金とってたな。
あれね。本当はボクのご飯になる予定だったやつ。
だからね、大人しそうな女の人、ボクを恨まないでね。
恨むなら、それで正規料金を取ったオーナーを恨んでよ。
ボクはそのご飯、欲しかったの。
だから睨まないで。
お客さんには睨まれて、オーナーにはいいように使われて、派遣会社には馬鹿にされて。
それでも一生懸命働いた前世のボクの人生ってなんだったのかなぁ。
家賃に税金、社会保険料。
給料を待たされることはあっても、支払いは待ってくれない。
削れるものといったら食費くらいしかなくて。
最後はひもじくて、ひもじくて死んじゃった。
あぁ。なんて悲しい夢なんだろう。
『ちょっとぉ、あなた。それ、夢じゃないわ。前世の記憶よ』
「えっ? そうなの?」
え? 待って。そういうあなたは、どなたさま?




