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第18話 この取引は物々交換です

 アクアマリンは、庭にある植物をじっくりと見て回り、育ち具合を確認すると何やらコーラルと商談らしきことをしていた。


「はい。……はい、たぶん間に合います。明日でいいですか?」


 コーラルがカモを逃さないように愛想よくアクアマリンの相手をしている。

 

「ええ、それで構いません。でも明日は、早すぎません? 大丈夫ですか?」


 アクアマリンは薬草の育ち具合を心配しているようだ。

 コーラルは胸を張った。

 

「はい。大丈夫です。わたしが薬草を癒して育てておきますからね」

「それにしても癒しの魔法を植物に施すなんて。オレは考え付きもしませんでしたよ」

「ふふふ。そこは孤児院育ちの知恵ですよ」


 驚くアクアマリンに、コーラルは笑顔で答えた。


 どうやらコーラルは、マイナス要素になりがちな孤児院育ちであることを、逆手にとって売りにしているようだ。

 

 したたかだね。


「では明日、取りにきますね」

「はい。お礼は物々交換でお願いします」

 

 アクアマリンの言葉に、コーラルは念押しをした。


「ええ、わかっていますよ。リクエストは、お肉でしたね」

「はい」


 お肉か。

 ボクもそろそろガッツリお肉が食べたいです。

 

 アクアマリンはちょっと考えながら聞いた。

 

「明日だと狩に行く時間はないので、市場で買ってきますね。それで肉は……鶏がいいですか? 豚がいいですか?」

「できれば牛肉でお願いします」

「分かりました。では明日。ジェイダイトさまも、ギベオン・ブラックスター男爵のお孫さんも、また明日~」


 アクアマリンは陽気に手を振って帰って行った。

 コーラルもご機嫌だ。


 ボクとジェイだけがゲッソリしていた。

 

 疲れる~。

 お爺さまのファンの相手、疲れる~。


「疲れましたな」


 ジェイも珍しく愚痴を言っている。


 そうだよね。

 疲れるよね。

 でも『また明日~』って言われちゃったから。

 ボクも、ジェイも、明日はコーラルと一緒に出迎えないといけないかもしれない。

 疲れるよね。


 だけど牛肉は楽しみすぎるから、喜んで出迎えちゃうもね。あは。

 

「坊ちゃまのお爺さまって、スゴイのですねっ。わたし、会ってみたくなりました。そういえば、さっきアクアマリンさまに言われて気付いたのですが、庭の向こう側に畑があるのですね。わたし、食べられるものがないか、ちょっとみてきますね」


 コーラルはそういうと、庭の端のほうへと歩いて行った。


 ああ、お爺さまのファン、増えちゃったよ。


 ボクはジェイと顔を見合わせて溜息を吐いた。


 ジェイがボクの姿をまじまじと見て言う。

 

「そろそろ屋敷へ戻って昼食を摂られたいかがですか? 作業服とはいえ、服が汚れすぎですし」


 ジェイに言われて、ボクは自分の姿を見下ろした。

 もともと茶色っぽい服ではあったけど、あきらかに生々しい茶色がいっぱいついている。

 パンパンと手で払ってみたけど落ちない。

 これは着替えないといけないヤツだ。


「汗もかかれたでしょうし、風邪などひいてはいけませんので。屋敷で着替えてから昼食にいたしましょう」


 ジェイの言葉にボクは素直にうなずいた。


「畑は放置されていた分、ちょっと癒せば食べられる野菜が沢山ありました。これで何か作りましょう」

 

 コーラルは嬉しそうに両手いっぱいの野菜を抱えて戻ってきた。

 

 コーラルの手料理か。楽しみだな。

 ボクの肩のあたりでふわふわしている水筒は、ちょっとコーラルに嫉妬しているような気がするけど気のせいだよね。


「坊ちゃまの魔力が増えるように、ラベンダーを使ったお茶も作りましょうね」


 ほら、君の出番もあるよ、水筒君。

 ボクはちょっとすねちゃった水筒君をなだめながら、屋敷に戻ったのだった。

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