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第14話 楽しい朝ごはん

 朝食もマジックスキル【お弁当箱】を使った。


 食堂のテーブルでそれぞれの席についた皆の前には、それぞれの色に合わせたお弁当箱が並んでいる。

 各人の体調に合わせた料理も入っているから、料理をみれば逆に体調が分かるよ。

 

 今朝のお弁当は、ボクやお母さまも蒸しパンではなく、普通のパンだ。

 柔らかな重曹パンだけど、普通のパンには違いない。

 食べ応えがあるから嬉しいな。

 

 ジェイやコーラルも皆のお弁当のメニューをチェックして笑顔になった。


 コーラルはホッと息を吐くと、嬉しそうに言った。

 

「空腹で弱っていた体が、だいぶ元に戻ったようですね。そろそろ普通の食事に戻してよさそうです」


 どうやら腹ペコ病による優しい食事は、もうそろそろ卒業してもいいらしい。

 わーい。

 ボクは育ち盛りだから、食べ応えのある物をたくさん食べたい。

 もちろん予算の許す範囲でだけどね。

 

「調子がよいようなら、わたしがお料理をしましょうか?」


 コーラルの申し出に、ボクは驚いて聞いた。

 

「えっ⁉ コーラルは、お料理もできるの?」

「孤児院そだちですから。一通りのことはできますよ」


 すごいなぁ。孤児院育ちって。

 一通りのこと、できちゃうんだ。

 ボクは朝のお着換えも手伝ってもらうのに。

 

 コーラルはボクに忠告するように言う。

 

「マジックスキルは便利ですが、魔力消費量は少なくありません。調子に乗って使っていると倒れてしまいますよ。それにお弁当を3つや4つ用意したくらいでいちいち倒れるようなスキルなんて、使い物にはなりませんからね。くれぐれもご注意ください」


 それはボクも分かっているよ。

 本格的にマジックスキル【お弁当箱】を使いたいなら、一日三食の食事を家族の分だけ用意して、勉強や鍛錬など自分のことも出来なきゃ意味ないよね。


「マジックスキル【お弁当箱】は便利で魅力的なスキルですが、坊ちゃまは魔力量がまだまだ少ないですからね。まずは魔力量を増やしましょう。本格的に使えるようになれば、健康管理に悩む貴族たちへ高く売れる、将来有望なスキルですからね。頑張りがいのあるスキルですよ」


 えへへ。

 褒められちゃった。


「だからこそ、いまは魔力量を増やすことを考えましょう。坊ちゃまの魔力量が増えれば、あとは一番よい方法で商売に繋げていくことを考えればいいだけです。ですが、魔力量が少ない今は、乱用するとかえって危険ですよ」


 あらま。

 なんで?


「珍しいスキル持ちは狙われやすいのです。昨日来たばかりのわたしが言うのもなんですが、いまお屋敷には護衛もおりません。坊ちゃまが珍しいスキルを持っていると他人に知られては、誘拐される危険があります」


 そうなの⁉


 ボクがびっくり仰天していると、ジェイがうなずきながらコーラルに同意した。

 

「ああ、それはワタクシも気になっておりました。この屋敷の護衛は、ワタクシの役割でもあります。ですが、ワタクシには他にも仕事があります。ですから坊ちゃまが狙われる危険は小さくしておきたいですね」


 コーラルもジェイにうなずき返している。

 

「わたしも女ひとりで旅をしてきた身ですから、多少は腕に覚えがあります。ですが、坊ちゃまが徒党を組んだ悪者に狙われたりしたら、わたしひとりでは対処しきれないでしょう」


 コーラルってば、どんな襲撃を想定してるの?

 ボク、こわいよ。


「坊ちゃまは将来有望なスキル使いであり、男爵家の跡取りです。万が一にも何かあっては大変です。ですから魔力を消費するよりも、魔力量を増やす訓練に注力したほうが良いと思います」


 コーラルの言葉に、ジェイがコクコクとうなずいた。

 

「そうですよ、坊ちゃま。最近はお金回りのことでドタバタしておりましたから、鍛錬もさぼっておりますし、お勉強も遅れております。ここはしっかりとお勉強もしておきませんと」


 うへぇ~。

 ジェイの教育熱に火がついちゃった。

 お腹空いてた時は優しかったけど、お勉強と鍛錬に関してはジェイは厳しいからなぁ。


「お父さまはお仕事をしなければならないし、お母さまはお腹に赤ちゃんがいて無理はできない。お前には苦労をかけるが、がんばっておくれ」


 お父さまにそういわれたら、ボクは頑張るしかない。

 お母さまが、大きなお腹を撫でながら笑っている。

 

「ふふふ。赤ちゃんだと思っていたオパールも、しっかりしてきたわね。もうじきお兄さまになるだけあって、頼もしいわ」


 お母さまにそういわれたら、頑張るしかないね。


「とはいえ、いきなり無理をするのもよくありません。今日はわたしと一緒に、お庭で植物の手入れをしませんか? 植物に関する知識もいざというときには役に立ちますから、覚えておいて損はないです」


 コーラルの提案にジェイはウンウンとうなずいている。

 

「それはいいね、コーラル。太陽の下で土いじりするのは健康にもよいし。坊ちゃま。午前は、そうなさったらいかがですか?」

「うん。そうするよ」


 ボクはコーラルとジェイにうなずいてみせた。


 これで今日の予定は決まった。


「午後は鍛錬とお勉強です」


 ジェイにそう宣言されちゃったけど。


「お昼ご飯は、わたしが腕によりをかけてご用意しますからね」


 コーラルの初手料理だって。

 それは楽しみだね。

 

 ボクはニコニコ笑いながら、手を魔法でキレイにして、お弁当を食べ始めた。


 今日も美味しい。

 水筒君の中身は今日もココアだよ。

 こっちも美味しい。


 ボクはとってもポカポカあったかで、ピカーンと明るい気分で、お弁当を平らげた。

 

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