第13話 いいことありそうな朝!
カーテンを開ける気配がして、ジェイの声が響く。
「坊ちゃま、朝ですよ。おはようございます」
「うぅ~ん……」
ボクは自室のベッドの上でモゾモゾしながら上半身を起こした。
朝だからお腹は空いているけど、ペコペコで死にそうな感じはない。
平和な感じの空腹だ。
5歳児の健康的な朝、って感じのお腹な感じがする。
久しぶりにとっても平和~な雰囲気に包まれて、ボクの顔はふにゃ~んって感じになった。
窓のほうを見れば、開け放たれた窓の向こうに広がる青空。
揺れる白いカーテンの向こうにある青空を、白い雲が風に流されてフワフワのパンみたいな形になっているのが見えた。
鳥の声もするし、空を群れて飛んでいく姿も見える。
きもちがいいね。
とってもいいことがありそうな朝だ。
「さぁ、朝の身支度をしましょうね」
コーラルの声がする。
朝のお世話はジェイじゃなくて、コーラルがしてくれるのかな?
ジェイが説明する。
「ワタクシは剣の腕には自信がありますが、魔法のほうは不得手でございますからね。坊ちゃまの体調チェックは、コーラルへ任せることにしました」
うんうん、そうだね。
ジェイは爺やだけど、執事であり、お父さまの右腕。
家の中をまわしたり、執務を手伝ったり、忙しい。
使用人が少ない今、ジェイは大事な戦力だ。
跡継ぎとはいえ、5歳児のボクなんて構っている暇はないよね。
それに子どもの体調は変わりやすい。
5歳児なんてすぐに熱を出すから、コーラルにチェックしてもらえば安心だ。
「ですが、引き続きお勉強についてはワタクシが担当しますので、ご安心ください。坊ちゃまの体調が戻り次第、鍛錬も再開しますよ」
うへぇ。
ジェイの教育は厳しいんだよねぇ~。
鍛錬も容赦ないんだよぉ~。
そこはコーラルのほうが……。
コーラルはラピスラズリ色の瞳をキラッキラさせて興奮気味に言う。
「坊ちゃまっ。マジックスキルお弁当箱には、植物の知識もあったほうがよさそうですよねっ。わたしは孤児院育ちですから、一般的な野菜のことも詳しいですよ! ひもじい思いをするのは嫌で、必死になって育てましたからねっ。野菜を育てることは、食育にもなりますし、食べ物を確実に手に入れる方法のひとつですっ。一緒に庭仕事や畑仕事、頑張りましょうねっ」
うへぇ。
コーラルにもビシビシ仕込まれそう。
さっきまでのさわやかな気分が台無しだよ。
ちょっとだけどよんとした気分でボクはベッドからおりた。
さっそくボクの体をコーラルが、ペタペタ触ったり、クリーンの魔法をかけたりしているよ。
コーラルは嬉しそうに話し続けていた。
「もちろん、薬草についても知識があります。専門家にはかないませんが、上手に育てられるほうだと自負しております。薬草といっても、素人が安全に使える範囲の物もありますし、料理に使えるものもあるのです。だから薬草の知識もマジックスキルお弁当箱に役立つと思うのですよ」
うんうん、そうなのか。
役立ちそうだねぇ。
頭では理解しているが、気持ちが拒否する。
勉強はあんまり好きじゃないなぁ~。
ボクが両手を上げて万歳の姿勢をとらされている間に、コーラルの手により寝間着がはぎとられて普段着に着替えさせられていた。
いつの間に?
まるでマジック。
ボクが驚いて自分の服を確認していると、コーラルの言葉を受けたジェイが口を出してきた。
「そうですな。食べ物は人間が生き延びるには欠かせない物。変な物を食べればすぐに病気になりますし、病気を治すときにも食事は大きな役割を果たします。日常の食事を健康維持に役立てる、というのはよく聞く話。坊ちゃまのスキルは、緊急時だけでなく、日常的に役立つスキルとなるでしょう」
そっかぁ。ボクのスキルは世界から求められているのか。
……え? そんなことは言ってない?
だってそのくらいの気持ちがないと頑張れないでしょ。
いいの、いいの。誰も聞いてないし。
ジェイが戸惑ったようにつぶやく。
「坊ちゃまは……思っていることが全て口からでますな」
えっ、ジェイ。なんだって?
ボクが目を見開いてジェイを見上げると、ジェイはあきれた表情を浮かべてこちらを見ていた。
え?




