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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第6章 魔女の狂騒
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決戦前日 ファング・オーガー

とある西洋風の邸宅にて、深淵教団使徒の目の一人、ゾルデイラ・ヒューラーが何かを見つめていた。それは、巨大な深緑色の魔法陣。その中心で昏倒している人物、昏の姉である二条 紗友里だ。鎖に繋がれた彼女は拉致されてから長い間この魔法陣の上に囚われ続けている。


ゾルデイラの隣に、茶色のスーツ姿の男が現れる。男の頭部は蝿《はえ》となっており、深緑色の複眼で静かに儀式の様子を伺っている。


「儀式は順調のようだな、ゾルデイラ」


「あと3日もすれば、お前の主が復活する」


「ああ、遂に……! お会いできる! モルギド様……!!」


蝿男は手を合わせ、祈るように膝を地面につけた。


「千年もの間、貴方様を復活させることが出来なかった……ああ、早くお合いしたい!」


「グールというのは、寿命が長いな。私もお前の主に早く会いたいよ。死から復活するなど、まさしく神に近しい領域だ。神もどきなどではなく、本物の神を生み出すことができるかもしれない」


ゾルデイラは不気味な笑みを浮かべる。普段ほとんど笑わない彼が笑うのは、神に関することだけだ。


「主の力が以前よりも増せば、今度こそ、我らの悲願は達せられるやもしれない。期待しているぞ、人間」



◆



朝、目覚めた智也はすぐにカレンダーを確認した。もうすぐ、ついに明日、深淵教団との戦いが始まる。こちら側の戦力は、魔術連の部隊と、救世団のメンバー。対して、深淵教団の戦力は使徒の目六人、魔眼二人、そして深淵の魔女。


深淵教団は魔術師の数は多いが、そのほとんどは深淵の魔女の配下であり、使徒の目には部下はいない。そして、倒すうえで最も厄介なのは、深淵の魔女の力だ。


別世界線では、深淵の魔女の権能は主に二つ。一つは、他人の人格を乗っ取ること、もう一つは、殺した人間の魂を奪うことだ。


朝霧が百年前に倒した際は、別の人間の人格を乗っ取ることで復活を果たしていた。そして、殺した人間の魂を取り込み、その魂を使って魔法を扱うことが出来る。それゆえに、膨大な魔力の貯蔵を持ち、殺しても復活する怪物であった。


さらに厄介なのは、殺した人間の魂を奪う能力が、使徒の目にも適応されることだ。使徒の目が殺した者の魂もまた、深淵の魔女に還元されて魂のストックが増える。別世界線では『蛇骨』が招来されたことで大規模魔術テロを成功されてしまい、深淵の魔女が大きく力をつけてしまった。


しかし、ギリギリ倒せる範囲の力にとどまったことで朝霧が勝利することが出来た。


この世界線でもそうなって欲しいが、智慧の魔女の干渉によってその未来が変えられる可能性があるのが懸念だ。


大規模魔術テロを阻止する鍵となるのが、蛇骨の招来を防ぐこと。そのため、招来に必要な触媒の破壊を朝霧が担当する。触媒を守るのは、二ゾルデにトドメを刺した『終焉の目』と記憶を霞ませる力を持つ『忘却の目』が担っているため、いずれも気は抜けない。


その次に大きな被害を出す腐食の魔人モルギドの復活阻止には智也と魔物狩りに長けたファングが当てられた。使徒の目の中でも上位の力を持つゾルデイラ・ヒューラーや、かつての魔人の眷属が魔人のそばについているため、油断は出来ない。紗友里を助けるためにも、智也は最善を尽くすことを決意している。


その他の使徒の目は、深淵の魔女さえ倒せれば力を失い弱体化するため、今回は足止めを行うことに専念

する。しかし、『調律の目』と呼ばれる男は、別世界線でも深淵の魔女無きあと逃亡を続けていたため、今回の戦いで確実に倒しておきたい。


深淵の魔女を倒すのは、今回の戦闘以降となると予測されている。



智也は魔術連内部を歩いていた。すると、ファング・オーガーを発見する。


「ファングさん!」


智也は手を振って駆け寄った。ファングもそれに気づき、振り返って手を振り返した。せっかくなので、少し話しをすることになった。


「遂に明日、こちらから奇襲をしかけるんですね」


「そうだな。特に、君と私は重要な役どころだ。魔人の復活は、なんとしてでも阻止せねば」


腐食の魔人モルギド、別世界線で復活を遂げた末に、紗友里を廃人に追いやった元凶だ。智也にも譲れない思いがあった。


「今度こそ、全員無事に帰れるように、僕も全力以上を出すつもりです」


「頼もしいな」


青い狼の力の影響で、智也は新たに魔術を二つ覚えている。一つは、霧を生み出す魔術。相手を撹乱するのに使える。もう一つは、空間を歪める魔術だ。これは青い狼こと別世界線の智也が生み出した魔術だ。殺傷力が高く、味方を巻き込みかねないが、別世界線では躊躇いなく使っていたようだ。


「一つ、思い出したことがあるのだが、聞いてくれないか」


ファングが智也に告げた。


「なんですか?」


「昔、とある樹海の中でグールを狩る仕事を受けたことがあった。その時、私と共に同行していた弟子がグールに拉致されていた人間の幼い少女を助けたことがあった。だが、その後だ。生き残っていたグールの一人が妙なことを言った。

『私の娘を返せ』と。

弟子は、そのグールに殺され、私自身、顔に傷を負ったが、狩ることはできた。だが、その言葉が最後までひっかかり、私はその少女が預けられた児童養護施設に足を運んだ──」


智也は、ファングの目の部分にある引っ掻き傷に目が行く。


(待て、その話……)


「少女は、人間の姿をしていたが、純粋な人では無かった。

人間と、グールのハーフだったのだと思うが、かなり感知能力に優れていなければわからないような存在だった。当時の私は未熟で、その少女に憎しみを抱いてしまった。

少女の首元に刃物を突きつけ『お前は、化け物だ。だが、人間として生きるならば、見逃してやる』と脅した。少女は泣いた。だが、魔物が泣くことは無い。彼女が人間なのだと、私は理解してしまった。それ以降、彼女とは顔を合わせなかった。どんな人生を歩んでいたのかも知らなかった」


「ファングさんは知っていたんですね……紗友里さんのこと」


「そうだ。あの夏祭りの日に、彼女を見かけた時、私は魔物の気配がして動揺した。だが、その後しばらくしてその少女のことを思い出した。人間として、あの子が生きていたことに嬉しさと、罪悪感を覚えた。魔物とは言え、私は彼女の家族を殺した。だが、弟子が行った行動が無駄でなかったのだとも感じた。だが、宿命とは恐ろしいものだ。人として生きようとも、魔物としての影にずっとつかれている。だからこそ、私も彼女を救いたい。それが、私に出来る唯一の罪滅ぼしだ」


「……気持ちは、お互い強いですね。助けましょう。紗友里さんのこと!」


「ああ!」


ファングと熱く腕を交わした──


第5章の前半部分でこれと似た話をしています。

この物語もやっと架橋を迎える感じになりそうです。複雑過ぎて自分の頭でも整理するのが大変なくらいですが、きっとなんとかなる!多分。

登場人物が多いですが、とりあえず名前は直前に出てきたやつだけ覚えるくらいで大丈夫だと思います。


余談ですが、最近CGを学び初め、奇妙奇天烈なものを作って弱冠挫折を味わっています。挫折も力になるという気持ちだけでなんとか頑張ろうと思います。それだけです。

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