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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第6章 魔女の狂騒
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アルファスの短剣

過去に戻る方法、それにはこころあたりがあった。なぜなら、自身がそれを使っているからだ。


「過去へと戻ることが出来る鍵、その在り処と使い方を、私は知っています」


「……二条家の銀の鍵のことか?」


「……知っていたのですか?」


ノックスは僅かに動揺を見せた。


「残念だが、その鍵は使えない。その鍵には次元の神の眷属が受肉しているんだ。そのうえ、その眷属の居場所もわからない」


紗友里が次元の神の招来を試みた結果、別世界線で神の眷属となった智也がそれに引き寄せられ、受肉したのだ。


(おそらく、三体の眷属の内二体は僕の体の中にいる。もう一体さえわかれば、鍵はもう一度使えるかもしれないな)



ノックスはため息をついた。

「そうですか、なら、私の計画も万全とは言えないわけだ……ですが、魔術の隠蔽に関わる気はありません。ただ、多くの人命が失われる可能性があるなら、私たち救世団は協力しましょう。人を救うことこそ、我々の悲願ですから」


「それは、魔術連と共に戦ってくれるということでいいんだね?」


「そうですよ。深淵教団は我々にとっても敵ですからね」


銀の鍵が使えないことで、魔術連への対抗する手札が薄くなったノックスは、利害の一致から魔術連との共闘を宣言した──


◆


ノックスと握手を交わし、正式に協定が結ばれる。


しかし、ノックスという男を智也はまだ信用していなかった。少なくとも、二つの世界線でノックスは二条 昏を殺している。近くで監視しつつ、協力するのが最も重要だ。


ノックス・ドーム率いる救世団の戦力は、魔術師が三百人という大規模なものだ。中でも、ローマ数字のⅠ〜Ⅴの描かれたエンブレムを持つ幹部五人は魔法を使うことが出来る、Ⅴとは以前戦ったことがあるが、痛みを与える魔法はかなり厄介だったと智也は記憶している。


警戒を保ちつつ、ノックスの案内でとある部屋まで連れられた。部屋を開けると、そこには大きな円卓があった。円卓には四人の男女が座っており、Ⅱ〜Ⅴのエンブレムを持っている。


智也と宇佐寺はⅢに見覚えがあった。月の神との戦闘時に、亜様村に来て戦ってくれた部隊の指揮官だ。


別の世界線では既に知っていたため、智也はあまり驚かなかった。


「あの時は、ありがとうございました」


「いや、こちらも助けられたさ。人命を救うために戦った君のことを、私は尊敬するよ」


Ⅲこと、クリーアと呼ばれる筋肉質の大男は、見た目に反して知的な雰囲気で笑った。


「あら、お兄様とお知り合いでして?」


Ⅳのエンブレムをつけた女性が鈴の音のような声を発する。

「兄妹なんですか?」


「そうですわ! お兄様はかっこいいでしよ!」


「そう、ですね……」


(意外とブラコンなのかも知れない)と智也は思った。


そして、こちらに気まずそうな視線を向けているのが、『Ⅴ』と呼ばれていた男。以前、昏をさらい、智也が撃退したことがある。


智也は男を軽く睨んだ。男は視線を落として沈黙を貫く。


Ⅱのエンブレムを持つのは、顔に酷い火傷を負った男。大部分を仮面で覆っており、素顔が見えない。


「Ⅱは、魔物にやられて顔にひどい火傷を負っているんだ。目を潰されてなおも、救世団内では二番目に強い実力者です」

ノックスが誇らしげに説明した。


かつてノックスが体験した『原初の夜』と呼ばれる神もどきとの戦いで生き残った、幼馴染であるⅢとⅣ。そして、救世団として大規模に活動する前に仲間になったⅡとⅤを幹部としている。



「そう言えば、以前に『Ⅴ』からアルファスの 短剣が非活性化状態って聞いたんですけど、今は治ったんですか?」


「いいや、蓄えてある魔力分は使えるけど、神殺しとしての力が発揮できない。このまま第三の厄災が来た時に、対処のしようがないことは確かだ」


「見てもいいかな?」


朝霧は自分たちよりも優れた魔術師であると認めているのか、ノックスは思いの外あっさりと短剣を見せた──


アルファスの短剣は奇妙に湾曲しており、幾何学模様の刀身は人類の技術では不可能な構造をしていると一目でわかるほどだった。朝霧が触れようとすると、突如として短剣の周囲に閃光が走り、手が弾かれた。


「アルファスの短剣には、意思があるんです。血族である私のような者以外は、おそらく触れられないと思います」


「なるほど、君しか使えないというわけか」


朝霧はノックスが簡単に手の内を晒した理由がわかった。


「この短剣、おそらくだけど、何らかの魔術がかかっているね」


「魔術……ですが、アルファスの短剣を非活性化するなんて……」


しかし、朝霧には心当たりがあった。


「もしや【変形魔術】か……?」


二条家の相伝の魔術、【変形魔術】は銀の鍵を非活性化状態にするのにも使われていた。紗友里からそのことを聞いていた朝霧は、それに思い至ったのだ。


「ということは、二条家の人の仕業ということですか……?」


「いや、断定はできない。怪しいのは魔女だ。やつらは誰も知らないはずの私の自作魔法まで知っていた。二条家相伝の魔術を知っている可能性だってある」


「解除は、出来ないのですか?」


「難しいね。『術式崩壊』でも変形魔術の構造がわからないから壊せないし、二条家の魔術を知っている紗友里が……」


紗友里はいま、深淵教団の者たちに連れ去られている。


(昏なら二条家の魔術自体は知っていそうだけど、ノックスの元まで連れていきたくないな……)


紗友里を助けることが、短剣を活性化させる一番早い解決策だと智也は思った。


宇佐寺が短剣に触れる。

「いてえな、やっぱ無理か」


「なにしてるんですか、宇佐寺さん」

呆れた顔で智也が言う。


「意外と持てるかもしれないだろ。ひょいっとな」


「そんわけないじゃないですか……」


智也もアルファスの短剣に手を近づけた。しかし、閃光は起きない。



アルファスの短剣を持ち上げた。


「え……」




──その時、蒼白の光が周囲を包んだ。





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