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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第5章 氷雨の夜に
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深淵を覗く

 朝霧は記憶の複製を開始しようとするが、その手は震えていた。今後必要になるとは感じているが、【眼】のこともあってか恐怖があるようだった。


朝霧は深く息を吸い、覚悟を決めた。


朝霧の視界から【眼】が閉じた。


「智也くん、もしもの時はよろしく頼む」


「はい。任せてください」



「記憶の複製(メモリーコピー)」



朝霧に【神の眼】に関する記憶が流れ込んだ。


◆


赫い【眼】の瞳孔の奥、小さな深淵の中を覗いた時、初めに見えたのは宇宙だった。


無限に広がる宇宙の一角、時空の狭間で一本の捻れた大樹が見えた。大樹の表皮は鏡のように宇宙を映し、天高く伸びた先には枝分かれし、伸び続ける幹があった、その頭上には十四の星々が輝き、どんな一等星よりも輝いていた。


朝霧はその光景に息を呑み、美しいとさえ感じた。しかし、大樹の足元を見ると、大樹は水面から生えており、その水面の下には逆さ向きに生えた巨大な黒い大樹があった。


虚無感に似た絶望と孤独の気配。『死』そのものとも言うべき純黒の大樹はやがて星空の大樹を呑み込み、そして──




その時「朝霧さん!」と声がした。


朝霧がハッとして意識を戻すと、目の前には心配そうな表情をした智也がいた。


「大丈夫、ですか?」


「ああ、大丈夫......」


「何が見えましたか?」


「宇宙を映す大樹......ただ、あれは......駄目だ、記憶が曇ったように思い出せない」


「宇宙を映す、大樹......?」


智也はその大樹に心当たりがあった。度々夢で見た、美しい大樹だ。その大樹は最期は決まって真っ黒に染まり、枯れて消える。




朝霧はもう一度本に封印を施した。



「勘が外れたかな? あまり良い情報を得られなかった」

「......僕はもしかすると、その大樹を見たことがあるかもしれません」

「え、それは一体どこで?」

「夢の中、です......」

「......智也くんの情報はかなり不正確なモノが多いね......でも、それにもきっと意味があるのだろう。とりあえず、部屋を出ようか」


朝霧は炎の入ったガラス瓶を持って部屋の中央に戻した。


「その炎は何《なん》ですか?」


「これは、【炎の神】イズァールの原初の炎の一部だよ」


「原初の炎......?」


「イズァールは世界の創造神を除いた神格の中では最上位の存在で、宇宙の創造に関わる事象から発生した神なんだ。そして、その事象はビックバン。原初の炎という名に相応しいでしょ」


「ビックバンから生まれた神格......すごい神と契約したんですね」


「たまたま、私の家系がこれを持っていたんだ。契約出来たのは今まで私しかいないけどね」


神との契約のためには、その神と縁のあるモノを用いて神格と接触し、かつ神格を前にしても狂気に蝕まれない精神力と、神の力を宿しても肉体が壊れないための適性が必要となる。


朝霧の生まれた時の魔力特性は【性質変換】であり、魔力の性質を魔術無しで変えられるモノだった。それゆえに【炎の神】の力にも耐えうる適性があり、神との契約を成したことで現在は魔力特性が【炎】となった。




二人が部屋から出ると、そこには小さな女の子がいた。


「あっ、初めまして! えっと、ミスティファ高祖叔母《こうそしゅくぼ》さん!」


「ああ、君はソフィアちゃんか。大きくなったね......私のことはミスティファさんでいいよ」


「わかった、ミスティファさん! あ、そこの魔力のすごい大きなお兄さんは誰?」


「僕は彩島智也と言います。よろしくね、ソフィアちゃん」


「..........貴方が第三の前兆さんなんですね! 世界を救う冒険に出る予定があるんですか? 私、お供したいです!」


「えっと、そんな予定は......」


そこに執事のセパスがやって来た。


「ソフィアお嬢様は、先日ニゾルデ様からから第一の前兆の冒険譚をお聞きになったので、前兆は冒険をすると思っているんですよ」


「第一の前兆......アルファス・ドームさんですよね」


「そうです! 聞きたいなら私が教えてあげます!」


(第一の前兆は魔人と戦ったって聞いたからな......少し聞いてみるのも悪く無いか)


「それなら、教えてもらおうかな」


「いいですよ!」


「立ち話もあれだから、食堂に行こうか」


四人は食堂へ向かい、第一の前兆の話を聞くことになった──

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