ティータイム
魂の魔眼を撃破した後、朝霧とニゾルデはアッシュとレミシアと別れ、魔術連の再生医療魔術研究所に来ていた。
研究所の一室、広い休憩室で二人は丸机を囲み優しい香りのする金色の紅茶を飲んでいた。
「こうしてニゾルデとゆっくり話すのも久しぶりだな」
「そうですね。最後にこうして話したのは三年前でしょうか?」
朝霧は紅茶をすすった。
出された紅茶はニゾルデがイギリスにある実家の庭で育てているものである。朝霧探偵事務所にもこの茶葉を置いてあるため智也も飲んだことがある。
「この紅茶......たしか、亡くなった奥さんが育てていたものだったよね?」
「そうです。妻は植物の魔術について研究していて、その研究過程で魔術による品種改良をしたものがこれです」
「それを、今は君が育てているわけか」
「はい。お陰で、植物を育ててることの楽しさがわかりました。魔術師を引退したら、隠居して庭いじりでもしようと思います」
「......そうか、君もそんな歳だったな」
ニゾルデの顔にはたくさんのシワがあり、老化が進んでいることがわかる。全盛期に比べれば魔力も少なくなっているようだった。
「ミスティファさんはずっと変わらないですね。子供の頃に見た貴方の姿は今も変わらない......」
「......恵まれたことだ」
少しの間沈黙が流れた。
「妻は、植物の持つ特異な魔力を人のために使う研究をしていました。その研究過程で、動物に植物の凝縮魔力を注入すると、魔力量の向上、体内での魔力生成、そして再生力の上昇とそれに伴う老化速度の低下......つまり、人間の寿命は伸ばせるんですよ」
「そうか......」
再び沈黙が流れた。
今度は朝霧がニゾルデに話しかけた。
「そう言えば、孫のソフィアちゃんは今何歳だ?」
「ああ、ソフィアはいま六歳ですよ。あの子はとても魔術の才能があって、分厚い魔導書を全て読み切って、この歳で魔術を使えるようになってしまいました」
「末恐ろしいね......何の魔術を使えるの?」
「シャボン玉を出す魔術です。使えたときに飛び跳ねて喜んでいて、可愛らしかったです」
「すっかりお爺ちゃんだね......まあソフィアちゃんが元気そうで良かったよ」
朝霧は紅茶を飲んでカップを机に置いた。食器が置かれる音が鳴り、朝霧は真剣な表情になった。
「本題なんだが、深淵教団による魔術連襲撃の件で、実家に取りに行きたいものがある。その時、智也くんを連れて行ってもいいかな?」
「構いませんよ。私としても、彼とは一度しっかり話をしてみたかった」
「なら、今からでもいい?」
「え......まあ、構いませんよ」
「じゃあ決まりだ」
朝霧が指をパチリと鳴らすと、近くのロッカーが倒れて中から智也が現れた。
「うわっ!」
「こそこそと何をしているんだい、智也くん?」
「ああ、すいません......朝霧さんとニゾルデさんが二人で歩いているのをみたので、裏切り者のこともあって気になってつけていました......」
「裏切り者はクラークに成りすましていた【魂の魔眼】という奴だったよ......どうやら何か隠し事をしているようだね......まあ、いい。とりあえず、そういう事だから付いてきてくれ。今日はもう予定ないだろ?」
「そうですけど......」
「君にも見せたいものがあるんだ。無駄にはならないよ」
「見せたいものって何ですか?」
「禁書の断片だよ」




