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イスファターナ戦記  作者: 結月詩音
八章 十年の月日
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試練への決意


 子犬騒動から五日が経った。

 シウォン達はアーヴァインの視察を終えて、イスファターナ皇国の都、イスファルへの帰途につこうとしていた。

 シウォン達がアーヴァインに来る前に起きた、アーヴァイン奥地での土砂崩れは幸いにも大きな被害は無く、人々の生活に支障はなさそうである。よって、シウォンが持ち帰る問題は東方地域の長官職についてのみとなった。

 

 「世話になったな、ソジン。ルーファス」

 

 シウォンは言う。

 

 「いえ、このような場所で大したおもてなしもできませんで申し訳なく思うばかりです」

 「何を言うか、ソジン。たとえイスファターナと国の名前を改めたとしても、ここはアーヴァインであった誇りを失ってはならない。私の亡き母シヴァのこと、この土地の豊かさをたくさん知ることができた。どうか皆には今後もこの土地を守り続けてほしい。そしてそのためにも私は、中央でできることを果たそう」

 

 するとソジンとルーファス、庁舎の官吏達は一同に頭を下げた。

 

 「この度は次期長官職に関してご理解いただきありがとうございました」

 「必要なことだと判断したからな。ルーファス、いずれそなたをイスファルに呼ぶことになるだろう。お前の覚悟が試されることになる」

 「はい、殿下」

 

 するとナフカが封筒をルーファスに渡す。

 

 「都にいらっしゃったらグリュネール邸をお訪ねください。中に詳細は説明してあります」

 「そこまでお世話になるのは…」

 「いいや、世話になるべきだ」

 

 シウォンが言った。

 

 「万一の場合を考えると、お前を排除しようとする者がいてもおかしくない。良からぬことを企む奴らから守るためにもグリュネールの家はうってつけと言える。あそこはいろんな意味で、都の中で宮殿に次ぐ防御がなされているから」

 「はい。それに、グリュネール家は学者の伝もあります。試験の手助けもしてくれるでしょう」

 

 それを聞くとルーファスは感謝の念を伝えた。

 

 「…よし、それでは戻るぞ」

 「はい、殿下。こちらも準備は整いましてございます」

 

 キシュが言った。

 そうして、東方地域、もといアーヴァインでの視察は終了した。ハクは怪我の回復したが、医師に馬に乗るのは止められたため、シウォン達と同じ馬車に乗っている。普通ではあり得ない特例のため、ハクは緊張していた。

 

 「すみません、同席させていただいて」

 「それだけ深い傷なのだ。早く治すためにも無理は禁物だ」

 

 シウォンが言うと、リヨルも頷いた。

 

 「そうです。それに、悪化なんてしたら顔には出さないだろうけどナフカが悲しむでしょう」

 「はい…今回はナフカ様にもご心配をおかけしました」

 

 するとルオンが笑った。

 

 「ハク、ずっと思ってたけれど僕らの前だからってナフカのことは今まで通りに呼んでもいいと思うよ。『主』って呼んでるんでしょう」

 「えっ、いやそれはですね、殿下」

 「そうよね、急に変えなくてもいいわよハク。シウォン様もそう思われてると思うけど」

 

 リヨルの視線にシウォンは答える。

 

 「ルオンの側近になってもお前がナフカを主と慕うことに変わりはないんだから、そのままでいいと思うが」

 

 皇族三人に見つめられて、ハクは認めざるを得なかった。

 

 「…では、公の場以外ではそうさせていただきます」

 

 少し照れつつも、ハクは嬉しそうに笑った。

 すると、ゼンがルオンの膝の上から窓の外を見ている。馬車は安全のためカーテンが締められているが、どうやらその隙間から見ているようだ。

 

 「外が気になるの?ゼン」

 「はい。森からは外に出たことが無かったので」

 「ごめんね、カーテンを開けてあげられたらもっとゆっくり見せてあげられるのに」

 「必要なことだとハクに聞きました。ここからでも意外と見えるから問題ありませんよ」

 

 ルオンはハクをポンポンと撫でた。ここ数日、妹のシーラもゼンには興味津々で一緒にじゃれ合った。二人の子ども達にとって、ゼンは新しい友達のような存在だった。相変わらずハクはゼンが言葉を話すのに慣れない様子ではあるが、ゼンもその辺は考慮して過ごすようにしているらしい。いずれ、ハクも慣れるようになるだろう。 

 

 それから二日後、途中でいくつかの街を通りながら一行はイスファルへと到着した。

 都の門を入る手前の小高い丘に出ると、ルオンはゼンのために少しだけカーテンを開けてやった。白い壁に赤い屋根を基調としたこの都の街並みはやはりいつみても壮観であった。ゼンもそれを見て目を輝かせる。

 

 「あれをすべて人が作り上げたのですか」

 「そうだよ。建国帝が都の整備を始めて四代目のカフラン帝の時に完成したんだ。だから、イスファルは三百年近い歴史を持つ都なんだよ」

 

 そう言うと、ルオンは窓の外を指さした。

 

 「見て、ゼン!都の真ん中に大きな建物があるでしょう?あれは都に流れてきた川の水を端ににある家にまで届けるための分岐点なんだよ。あれを作ったのは十代目のアレクロイ一世帝で、帝自身が設計して作ったんだ。アレクロワ式と言われるアレクロイ一世帝の建設は、国の中にいくつか作られていて、国民の暮らしを改善する目的のものがほとんどなんだ」

 

 生き生きと説明をするルオンを見て、シウォンはけらけらと笑った。その姿がまるで誰かと似ていたのである。

 

 「ルオン、それはリフキアの受け売りだな?」

 「ち、父上!…それでも私はこうしてちゃんと覚えていますから学んだことと同じ意味ではありませんか」

 

 ルオンが頬を膨らましてそう言うとシウォンは頷いた。

 

 「そうだな、覚えていたというところ。そしてゼンに説明ができたというところに二つ褒める要素がある。それにしても、今のお前は昔のリフキアを見ているようだった。お前も建築は好きか?」

 「建築が好きというより、その作られた目的を知ることが好きです。叔父上はその辺りのこともとてもお詳しいので、お話を聞くのはとても楽しみです」

 「そうか。さて、そろそろ都に入る。カーテンは閉めたほうがいいな」

 「はい」

 

 ルオンはカーテンを閉める。ゼンは窓から目を馬車内に戻すと、ふぅと息をついた。

 

 「すごいなぁ。あんなものを作る力が人間にはあるんですね。森の中にいたらずっと知らないままでした」

 「だけど、作るばかりではいけないのだと学んだ。私達はつい、自分達以外のことには目が向けられなくなってしまうから」

 

 シウォンが言った。

 アーヴァイン滞在の折、ルオンはシウォンに獣達の住処が奪われていることなどについて話していた。マナが言っていた地に生きる者たちの苦しみを代弁したのだ。シウォンはしばらく考える時間を必要とすると言ってその場は終わったのだが、どうやら馬車の中でその答えをずっと考えていたらしい。

 

 「ルオンが言ったように、獣を狩る事自体は食べるために必要なことだけどその方法を見直すことはこの先のためにも必要なことだろう。無理な開墾や土地の改良が変えられないかは検討に値する」

 「父上!」

 「ラティーユにこの議題を投げることにしよう。新しい何かを求めて研究するだけじゃなく、土地が不当に利用されないための研究もあるべきだろうから」

 

 ラティーユは六年前に学研都市と制定され、かつて皇立学校の校長だった学者のララ=イェーガル、カトレシア家の長女ルージュを中心として、医学、薬学、経済学、農学、工学、文学、歴史学、教育など様々な学問の研究が行われていた。

 

 「ありがとうございます、父上」

 「こちらこそ礼を言うべきだ、ルオン。その着眼はイスファターナの未来に必要なことだ。本当はそちらに携わりたいが、残念ながらイスファルに帰ったら宮殿は大忙しだろうから」

 

 やれやれとため息をつくシウォンに、ゼンもお礼を言った。

 

 「山犬では無くなったとはいえ、同胞や仲間のためにもその検討を行ってくださることに感謝します」

 「むしろ、これまで我々がしてきたことを考えれば当然のことだ。しかしゼン、山から降りてきたとはいえ山犬で無くなったわけではないと思うぞ。きっとここで暮らすようになれば、お前にしか見えないこともあるだろう。それをルオンに話してくれればルオンの学びにもなる。ルオンを頼んだぞ、山犬のゼン」

 

 山犬の、と呼ばれてゼンは身が震えた。嬉しかった。自分の中では山犬であることを完全に捨てきるつもりでいたから。

 

 やがて城の門をくぐり、宮殿の前に馬車が停まる。外から扉が叩かれて、ナフカが言った。

 

 「皇太子殿下、殿下のみこちらで下りられて帝のもとに帰城のご報告を」

 「ああ」

 

 シウォンは馬車を降りる。

 

 「リヨル、ハク、さきに宮殿に帰っていてくれ。子どもたちを頼む」

 「わかりました」

 「はい」

 

 二人はこのあとに起きる嵐をわかっていたので、帝の宮殿に向かっていくその背をただ祈るように見つめていた。

 

 

 ▽▽▽▽▽

 

 

 宮殿は異様な静けさの中にあった。こちらは大臣や官吏達がいる表側の宮殿ではないから当然かもしれないが、それでもこれからのことを思えばこの静寂は予想とは反したものだった。

 

 「皇太子殿下」

 

 低い声がシウォンの前に立ち塞がった。

 

 「ダナフォート卿か」

 「ご無事のご帰還、何よりでございます」

 「そなたの娘も元気であった。そして結婚のこと、本当におめでたいことだ」

 「…ありがとうございます」

 

 ダナフォート家当主オルモンドは、頭を下げる。そして顔を上げると厳しい目でシウォンを見ていた。

 

 「殿下。殿下は私には嘘偽りを申されないと勝手ながら思っております」

 「あぁ、そなたには嘘偽りを申す必要がない。ダナフォートの人間として、この国のために仕えるその姿勢を信頼しているからな」

 

 オルモンドは少しの静寂の後に言った。

 

 「この度のこと、本当に成すおつもりですか」

 「私が嘘偽りを言わないそなたに、嘘でも言ったと思うのか」

 「私は殿下の成されることはこの国にとっても明るいことだと理解しています。ですが、間が悪すぎます。リフキア殿下の結婚の話と今回の領主に関する案件。皇太子殿下のお立場がなお悪くなるのではと私は案じているのです」

 

 シウォンはオルモンドの肩を掴んだ。

 

 「そなたは視野が広い。今回の案件、理解してくれると思っていた。それゆえに早馬を飛ばしてできる限り準備をしていた。反対の者はどれくらいを占める?」

 「反対の者は八割、そのうち五割は主に貴族制の崩壊だと言って反対しています」

 「残りの三割は?」

 「…殿下の将来に不安を感じる比較的穏健な者達です」

 「つまり、理解ある二割と穏健な三割を味方につければ戦えそうだな」

 

 オルモンドは資料をナフカに渡した。中身を改めると、これまでのイスファターナの法の欠陥やそれによって起こる問題についてまとめてあった。

 

 「この数日でここまで…!」

 「息子達にそれはもう死ぬ気で作らせましたから。現段階でできる限り、こちらの有利に働くように作ってあります。しかし、これで本当に我が家とカトレシア家は対立することになりますな」

 「ダナフォート卿、そなたには本当に苦労をかける」

 

 シウォンが頭を下げると、ナフカ、キシュもそれに続く。するとオルモンドは珍しく感情を顕わにした。

 

 「私はこれでもあなたとリフキア殿下を買っていますからね。求められたら協力せざるを得ません。シウォン殿下とリフキア殿下。どちらも光る才はあるが、帝の器にあるのはあなたの方だと思っています。しかし今回の一件、宮殿を認めさせられなければ私はあなたを見限るかもしれません。それがイスファターナ皇国のためだと思えば、私はダナフォート家の当主として必ずそうするでしょう」

 「わかっている。私も覚悟して臨むつもりだ」

 

 ダナフォート家は代々イスファターナ皇家を守護する役目を負ってきた。代々の当主は帝が仕えるに相応しいかその目で判断し、相応しいとなれば一族で皇族を守り抜く。シウォンにとってオルモンドが味方でいてくれることは何よりも頼もしいことだった。そのオルモンドにも今回は資質を試される。

 

 「ではまた、情報があれば伝えてくれ。私は帝に帰城の報告に行かなくてはならない」

 「はい」

 

 オルモンドは廊下の脇によってシウォン達を見送った。

 

 「どうかお勝ちになってください。歴代の皇族の中でもあなたに仕えられる者は誉れでしょう。期待しているのです。私をあなたに仕えさせてください」

 

 

 ▽▽▽▽▽

 

 

 シウォンは帝の居室に向かった。執務室に向かったところ、今日は居室の方だと伝え聞いたからである。体調の方は回復に向かっていると聞いていたが、全快というわけではなようである。

 

 「皇太子殿下が参られました」

 

 執務補佐官の官吏が部屋の中へ伝えに行く。すぐに返事が返ってきてシウォンは帝の居室へと入っていった。

 帝は寝台の上で上奏を読んでいる。入ってきたシウォンに目をやると、近くの椅子に座るように伝えた。

 

 「ただいま帰城いたしました」

 

 シウォンが言うと、帝は上奏をシュワームに渡してシウォンの方へ向いた。

 

 「ご苦労だった。久々の視察はどうだった?」

 「学びも多く、それでいて両国の関係を確かめられたかと思います」

 「…ソウェスフィリナか。王子に会ったのだったな。リヨル殿も久々の再会を喜んでいたか?」

 「はい。お気遣い感謝いたします」

 

 帝はふぅっと息をついた。

 

 「最近は疲れがなかなか取れなくてな。私もどうやら歳を取ったらしい」

 「お痩せになったようにお見受けしますが、医官はなんと?」

 「夏風邪と夏の暑さの疲労とのことだ。薬もきちんと飲んでいるからいずれ治るだろう」

 「私も戻りましたので今後は頼られてください。大事な御身体ですから」

 

 帝は曖昧にその話を流すと、シウォンに本題を迫ってきた。

 

 「アーヴァインで課題をもらってきたのだろう、シウォン。ここにはシュワームしかいない。よそよそしい敬語はいらないからちゃんと話してみろ」

 

 シウォンが拳をぎゅっと握ると、横からシュワームが紅茶を出した。その香りに誘われるようにまずは一口、口にした。その瞬間、抱え込んでいたものがすっと溶けていくように緊張が消えた。

 

 「…ありがとう、やはりお前の紅茶もうまい」

 

 シウォンは言うと、帝に向き直った。


 「内容はご存知なのだと思いますから省きますが、私のためにこの課題を残しておいたという認識でいいのですか」

 「そう思ったのならそうなのだろう」

 「タイミングも最悪です。宮殿における私の立場は余計に悪化してしまった。お答えください。なぜ、この議題を私に?」

 

 帝はベッドの背にもたれながら話した。

 

 「私の兄の望みについては以前話したことがあったな。三国が手を取り合う日を目指すこと、それが兄の望みだった」

 「はい」

 「兄が亡くなった事件で、それまでの宮殿での派閥の対立は大幅に無くなったが、まだ一枚になったというわけではない。ソウェスフィリナとは同盟が組めたが、三国となると色々と厄介な帝国を相手にすることになる。国内がまとまらない中、これ以上外へ目を向けるのは危険だ。よって、お前かリフキア。リフキアが継承権を放棄する以前の問題として、お前が次期帝足ることを全員に認めさせなくてはならない」

 「それで今回の課題ですか」

 「そうだ。本来、法案を決定するのは帝である私の仕事だが、今回は私の代理で視察に行ったため解決に至る全権をお前に委ねることにした。それも明日には宮殿の皆が知るところとなる」

 

 シウォンはそれを聞いて言った。

 

 「私もただ法案のダメ出しに終わるような結末にはするつもりありません。先程ダナフォート卿から今回失敗したら見限ると言われました。ダナフォート家の支えが無くなれば私は終わりでしょう」

 「オルモンドは私がこれを用意していたことを薄々感づいていたようだからな。あの男もなかなかの曲者よ」

 「失敗したらリフキアの代にはこの案を認めることはできなくなる。真面目な話、ルオン達が大人になった時に、私の失敗から招いた厄介事を残しておきたくないという親心もありますので」

 

 それを聞いた帝は急に父親の顔になって微笑んだ。

 

 「いい顔をするようになったなぁ、シウォン」

 「…何ですか、急に」

 「いいや、守るものができるとはそういうことだ」

 

 突然の帝の言葉にシウォンは顔を赤くした。帝がシウォンを褒めることなどなかなかないことである。シウォンは照れと同時にどこかむず痒さを感じていた。

 

 「…シヴァの故郷はどうだった?」

 「のどかな所でしたよ。それに、人の心がある場所だと思いました」

 「山と畑と川以外、何もなかっただろ?だが人の心が温かいというのはいい見方をしたな」

 

 帝は遠くを見つめるような目をして、深く息をついた。

 

 「あの光景を奪ってはいけない。それが約定とはいえ国を統合したものの役目だと思っている」

 「はい」

 「正直なところを言えば俺は、お前しかイスファターナの帝は務まらないと思っている。期待しているぞ、シウォン」

 

 シウォンは口の中に苦味を感じるようなため息をついた。そして立ち上がる。

 

 「何を自分はもうやることやったみたいな顔をなさっているんですか。帝というのは代わりが効かない唯一無二の存在なんですよ。病床にあるからといって弱気なことを言うのはおやめください」

 

 その呆れと怒気の混じった表情の後ろにどこかシヴァを彷彿とさせた。シウォンはそうして扉の方へ向かっていく。

 

 「…もちろん、期待には答えますよ。必ず」

 

 そう一言残してシウォンは部屋を出た。帝は一連のそれを聞いてしばらく呆気にとられていた。

 

 「帝…」

 

 シュワームが声をかけると、帝は寝台に大きくもたれた。

 

 「あとどれくらいだと思う?シュワーム」

 「何がでございますか」

 「この世にいられる時間だ」

 

 シュワームは帝の答えに身を震わせた。

 

 「…恐ろしいことを口になさらないで下さい。言葉には霊が宿ると言います。シウォン殿下も弱気ではいけないと仰ったではありませんか」

 

 シュワームが言うと、帝は結んだままの唇に小さな笑みを浮かべた。

 

 「元々弱かったこの体はなんとかここまで耐えてくれた。たが、ここ数年は疲労によって床につくのも増え、夢では何度も昔のことを思い出す…」

 「帝!」

 「…シュワーム、私は嬉しかったよ。お前も見ただろう。シウォンは父親の顔をしていた。我が子のあんな顔を見て喜べるのは親の特権だな」

 「これからもそのようなことはたくさんありましょう。お心を強くお持ちください」

 

 すると帝はシュワームに医師を呼ぶように伝えた。

 

 「本日の診察は午前中に終えたかと思いますが」

 「あぁ。だけど、生きたい理由ができてしまったからな。私はまだシウォンに何も残してやれてない。あいつの言葉を聞いて気付かされたよ。シュワーム、表の宮殿の情報は常にここに伝えてくれ。私も、やるべきことをやろう」

 

 シュワームは頷いた。

 

 「帝のお心のままに。私も持てる限りを尽くしましょう」

 

 イスファルの中心に新たな嵐が撒き起ころうとしている。この嵐はイスファターナ皇国三百年の歴史の命運を分けるものと言っても過言ではない。それに立ち向かうシウォン、そしてそのシウォン対抗するべく集まる貴族達。互いの思いが交錯する戦いは今、始まったのであった。

いつもイスファターナ戦記を手にとってくださりありがとうございます。今後もお楽しみに!

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