再会
こんばんは、結月詩音です
今回は何やら後書きを長々と書いておりますので、よろしければご覧下さい。
「叔父様!」
夕刻、ラドファタスにリフキアをそう呼ぶ声が響いた。
「シーラ殿下、お久しぶりでございます」
リフキアは駆け寄ってくるシーラの目線の高さにかがんで返事に答えた。
「叔父様!シーラは叔父様に会えるのを楽しみにしていたのです!」
「本当ですか。私も楽しみにしておりました」
その様子を皇太子妃リヨルは微笑ましそうに見ていた。
「ラドファタスへ行くとわかってから、ずっとあなたに会うのを楽しみにしていたんですよ。よかったわね、シーラ。大好きな叔父様に会えて」
「はいっ!母上!」
シーラはめいいっぱいリフキアに抱きつくと、今度はパタパタとアレッタのもとへ走っていく。
「叔母様!またご本を読んでくださいますか」
「えぇ、前にお約束いたしましたね。あれから私もいくつか本を探しました」
「本当ですか。シーラは叔父様も叔母様も大好きです」
シーラはイスファルでは宮殿の華と言われていた。その場にシーラがいるだけで、パッと空気を明るく変えてしまう。そんな力が彼女にはあるようだった。
「久しぶりだな、リフキア。元気にしていたか?」
馬車から降りてきたシウォンは、以前に増して落ち着いた声と深青色の瞳でリフキアを見つめた。
「この通り、元気ですよ。ようやく一仕事を終えたというところですかね」
「本当にご苦労だった。父上も報告を喜ばれていた」
リフキアは微笑んで答える。
「私はなにもしていませんよ。今回の計画の功績者はラドファタスの住民とアレッタです。皆の協力無しには成し得なかったのですから」
シウォンはそれには何も言わず、ただリフキアをぎゅっと抱きしめた。
「あ、兄上…皆が見ている前で…。私はもう子どもでは…」
「私から見れば永遠に弟だ。甘やかして何が悪い」
「兄上…」
イスファターナ国内にはいまだにシウォンとリフキアの関係をよく思わない者もいる。それは『臣籍にくだるべきリフキアは国政に関わるべからず。リフキアを排してこそ、シウォンの次期帝位は安泰となる』という考えを持つ者達のことである。
ラドファタスという、イスファターナの商業を支える街をリフキアに任せることは、リフキアの権力を増幅させることになる。確かにその考えは間違っていないだろう。
しかしそれよりも当人達には大切なことがあった。
ソウェスフィリナ王国との同盟を結んだことによって、これまでより国外へ目を向ける必要がある。帝の席というのは個人を捨て、いついかなる時も国のことを考えなくてはならない孤独なもの。いずれその席につくシウォンには、一人でも多く信頼を寄せられる相手が必要なのであった。それは国政に限らず、彼の精神面においても然り。
その役目を少なからずリフキアは果たしていた。母は違えど、同じ血を分け合った兄弟に対する思いは代えのないものである。この十年、お互いが互いを意識して来たのは言うまでもない。
「…それよりも、またお痩せになられましたか?無茶して徹夜でもされてるんじゃないですか?もう若くないんですから、ご無理はいけませんよ」
リフキアは抱きしめる兄の体に触れて言った。
「若くないといってもまだ二十八なんだがな」
「体調に気をつけてくださいと言っているんです。まぁ、後ろの二人がいるうちは心配していませんがね」
リフキアがちらりとシウォンの後ろの二人に目を向ける。十年前から変わらぬシウォンの側近、キシュとナフカである。
すると、ずっと外の様子を伺うようにしている少年が馬車の近くでリフキアを見つめていた。リフキアはその存在に気づくと近づいて声をかける。
「ルオン殿下、お久しぶりです。お元気にされていましたか?」
リフキアはルオンの手をぎゅっと握り、頭を撫でた。
「お、叔父上。お久しぶりでございます。ですが、そのような子ども扱いは無用にございます。私はこれから立派に成長しなくてはならないのです。甘えるのはもう終わりなのです」
それを聞いた周りの大人達は笑っていたが、リフキアは微笑んでルオンに手を差し出した。
「それは失礼を。私が見ない間にまたひとつ成長されたのですね。それでは殿下、握手をしましょう」
「握手?」
「えぇ、握手です。大人の挨拶ですよ。いずれ殿下も多くの者と握手をすることになりましょう」
ルオンはゆっくり手を差し出して、二人は握手を交わした。
「…私はやっぱり叔父上が大好きです」
「おっ、それは嬉しいですね」
「父親としては複雑だな」
ボソッとシウォンが呟く。
「いいではないですか、兄上。ここにいるときくらい甥や姪に浸らせてくださいよ」
「それには私も参加させてもらいたいところだな」
城の入り口から、レイヴィスが姿を現した。
「久しぶりだな、シウォン。先に着いて待っていたぞ」
シウォンとレイヴィスは同盟の最終締結が行われた五年前、一度会っている。それ以来、両国は関所を通じて自由に行き来できるようになった。
どうやらその際、シウォンとレイヴィスは親好を深めたらしく、それ以後も文などを通じて交流をしていた。
友人、というよりかは悪友という関係が彼らを表すのには相応しいのかもしれない。次期に国をあずかる身として通じるところもあるのだろう。
「待たせて悪かったよ、レイヴィス。ところで、お前も私の子ども達を可愛がりたいというのか?」
「フッ、お前の許可なんぞいらん!」
レイヴィスはリヨルの前に向かっていくとリヨルを力強く抱きしめた。
「リヨル!十年ぶりだ!我が妹よ!」
「兄上!苦しいです!」
「久しぶりの再会なんだぞ!父上と母上にお前に会うと知られて何度仕事を増やされたことか…!まあ、終わらせてきたがな」
シウォンが不機嫌そうにレイヴィスに言う。
「…レイヴィス、リヨルは私の妃なんだが」
「それ以前に私の妹だ」
そしてレイヴィスは自分を見つめる子ども達をぎゅっと抱きしめた。
「リヨル、何か苦労してないか?まさかシウォンに泣かされたりはしてないだろうな!」
「もう、兄上っ!そんなことはありませんわ」
「おっ!お前達がルオンとシーラだな。やっぱりリヨルに似て綺麗だなぁ。美男美女になれよ!性悪な父親に似るんじゃないぞっ!」
シウォンは普段の冷静さを他所にナフカに言った。
「ナフカ、ここはイスファターナだ…。何か少しくらいなら事を起こしても揉み消せるよな?」
「…相変わらず、お二人は仲がよろしいようで」
ナフカがそう言うと、二人同時に返事が返ってきた。
「どこを見たらそうなる!」
「おや、麗しの執務官は目が曇ったとみえる。私がシウォンと仲がいいだなんて」
シウォンはため息をつく。兄の百面相をリフキアやアレッタ、ナフカとキシュは面白そうに見ていた。どうやら子どもの事になるとただの人になってしまうらしい。
「さあ、兄上達もどうぞ城へお入りください。まもなく夕食の用意も出来ましょう。ささやかながら宴を用意しております」
〈詩音の小話#1〉
今回で75話となります。
突然小話なんて何事!?という気もしますが、私がなんとなく話したくなったので始まったプチ企画です。
実はひそかにはじめていたTwitterの方にも小話は載せてありますが、こちらにも書いていこうと思います。
さて、今回のお話は『シウォンの瞳の色』についてです。
作中でも何度か描写を入れていますが、シウォンの瞳の色は『深青色』という青色です。その瞳に見つめられるとその目の力に飲まれてしまう。そういう話が初期冒頭にあったかと思われます。
この深青色は、私が一番好きな色です。
この色に出会ったのは高校の化学の授業でのこと。わりと昔のことだし、化学苦手だったので詳しくは覚えていませんが、銅とアンモニアがどーのこーの作用して…的な感じだったかと思います。実験で反応させたのを見て感動→一目惚れです!
今回、小話を書くにあたって調べてみると、高度の高い空の色と表現されることもあるそうで…。ぜひネット上でも出てきますので見てみてください笑
私は絵が本当に下手なので、読者の皆様と同じようにイスファターナ戦記の人物達を想像上のイメージで見ているのですが、シウォンの瞳の色はこだわりポイントかもしれませんね笑笑
さて、本編終了後に長々とお話ししましたが、今後も少しずつ小話を挟んでいくかもしれません。引き続きイスファターナ戦記をよろしくお願いします。




