カウントダウン(1)
そういえば、12月ですね
あったかい鍋が食べたいです。焼き林檎とか
小説ももうそろそろで・・・ね
事件が発生して五日目の朝を迎えた、このとき吉野の心は晴れ晴れとしていていつも警視庁に向かうよりもずっと気分が良かった
どこか悲しい記憶を蘇らせるはずなのにそれでもすっきりと頭の中は爽快な気分である
「さて、行くか。最初の事件があった場所に」
荷物をまとめて、朝一番の東京駅発の長野行きの新幹線あさまに乗る。
座席が運よく窓際の席が空いていてその席にゆっくりと腰をかけてぼんやりと外の風景に浸って行く。
しばらく見ていると景色が都会の色を薄めさせて行きだんだんと緑が多く茂るようになってきた。途中、車掌が切符の拝見と言ってチケットを渡し再び帰ってくるとまたぼんやりと景色を見入った
時計を一度確認し、新幹線の到着時刻を照らし合わせると終点の長野駅の地到着までにはまだ時間に余裕がある。
たまにはぼーっとするのも悪くはないな。
そうして吉野は携帯のアラームをセットし30分ほど仮眠をとることにした。
ガタンと言う揺れに気がつき目を開けて隣を確認すると荷物を持った男性が新聞を小さく広げて読んでいた
(ビロ・・・出張かな。大変だな)
ビロ・つまりは背広を短縮した警察用語で主にサラリーマンをさす
隣の席の人間に少し共感を抱き再び微睡みの中に更けようとしたが
コーヒーの香りに気がつき自然と橘のことが気がかりになった
夢の中では殺されていた、もしくは殺されかけていた。
そう考えると今回の休暇届を出さない方が良かったのではないかと、どこか後悔の念が募っていた。
そんな気分から一点不意に自分の座席の前についている小さなテーブルが開いてコーヒーがそっと置かれていた
状況が判断できず周りを見ると隣の席にいたサラリーマンがコーヒーをすすっていてまさかと思ったがそれは的中した
「間違えて、コーヒーを二つ買ってしまいましてね。あなたにプレゼントです。それにあなたと同じ駅まで行くのでこれも記念にどうぞ」
その声の主を見て吉野は驚いたのだ。メガネはかけているものの湯気で曇っていたが顔の特徴はまさしくあいつだった。休暇届をだしていないのにきていたあいつである。
「はるちゃん。なんできたの?」
新聞を折りたたむと旅行鞄に入れてしまいコーヒーを一口すすると吉野に一言ポツンと呟いた
「なんでだと思う?」
少しでも期待した自分がバカらしかった。
下川と会話をすると決まって面白くない、苛立ちを覚えることに気がついていたのにそれでも答えを求めてしまったことに自分が学習力が足りていないことが恨めしかった
「冗談だよ、俺が頼んだんだ。いくら優子でもたった一人で長野に行かせるわけにはいかないだろ。それに、もしかしたらいる可能性もあるからな」
ゆっくりとコーヒーをすすりカップをテーブルに置くとリクライニングを倒して目を瞑って仮眠を取り始めた。日頃あまり休暇を取ることがない下川にとってある意味、休暇を取ったような感覚であっったのであろう目を瞑って本当に仮眠を取ったのである
携帯のアラームを切り吉野は再び電車の窓の景色をじっとみやるとそこには2500〜3000メートル級の山々がつならりその連山には雪が解けずに残っていてまた白銀の美しさが目に飛び込んできた
都会の喧騒を忘れて視線に目を向けるのも悪くない
吉野は自分の故郷に帰るような心境を今にも爆発させようとしていたがここで爆発しても今後に支障が出てはいけないと思い少し抑えていく
しばらく外の景色を見ていると仮眠から目を覚ました
新鮮な景色が目に飛び込んできてきたのだろう。いつも以上に目を輝かせてまるで子供のようにその風景に食い入るようにしっかりと見つめていた
「すっごく綺麗だな。東京にいたらこんな景色滅多に見れるようなものじゃないし、なんだか心が洗われるな」
「せやね。ほんまに綺麗やわ」
長野駅に着くと二人は電車を乗り継いで松本駅に向かいそこから再び電車に乗り換える。
電車は一時間に一本ないしは二本というあまり本数がなく乗れないと一時間ずっと待たなくてはならないという過疎的である。
「鈍行列車か、東京じゃあありえないな」
「旅をするにはこういった電車でもありだと思うけど」
外の景色が松本の都会の印象から再び連山が連なる景色へと変わっていき味のある風景へと変わっていく。
一つの駅に着くと人はのってこず再び発車したと思えば単線のため列車のすれ違いのため停車をする
それでも吉野や下川は苛立ちを覚えることなく外の味わいある風景に心踊らせつつも気持ちを沈めていった
どこか、遠い故郷に帰れる
そんな気持ちが二人の中には存在していた
松本駅を発車して二時間東京を発って四時間。長野県北安曇の地
冬場スキー客で賑わいを見せ、夏は登山を行うもよし蕎麦の花が咲き誇りその景色を見ながら散歩するもよしそういう場所だった
だが吉野にとってはもう一つ後ろめたい記憶がある、あのバスジャック事件の始まりの地、そこがネックとなっていた
「やっぱりここにきたら苦しいか?」
ブンブンと首を振る吉野に下川がもしかすると、と思い周りを警戒するが特に何も起きていない。それでも気がかりになった下川は吉野の方を見ると何やら微妙な顔をしている。何かをみて、警戒心をあらわにしているのだ、そして下川は感づき大体の察しがついた
お兄様でした
全く警察と関係のないお兄様が吉野の目の前で軽トラに乗って颯爽と現れたのである。田舎のベンツ・軽トラを乗り回してこの駅まで迎えにきたというよりもひけらかしにきたのだ
「なんであいつおんねん。おかしいやろ、どう考えたって」
「そうだな無視するか?」
兄に気づかれないように、ゆっくりとロータリーを出ようとした時であった。優子の携帯に着信が入り確認すると今日宿泊しようとしていた宿の女将からである。そして、下川に嫌な顔を向けると恐る恐る電話口にでた
「お久しぶりです。優子です」
『うん久しぶり、今そっちにね岳明向かわせたから。もうついてるんじゃない』
最悪だったよりにもよって捜査に関係のない兄がこの地にやってきて
しかも地元民のような出で立ちを醸し出していて、特殊捜査刑事にはいそうなそんな状態である。
「なんであいついるんですか?あいつどっかに出張とかなんとか言ってたんですけど」
『まぁ妹思いのお兄ちゃんだと思えばいいんじゃない?だって一人で来たんでしょ?』
「あの同僚もきてるんですけど」
その言葉に宿の女将は気まずそうにうーん、といい何やら考え事を初めてしまう。電話の途中で聞こえる水の音、鳥のさえずり、土を耕す音
どうやら、女将は畑で仕事をしているらしく今宿その場所にはいないのだ。この時期から、この地方では田畑を耕す作業が始める。長い間の冬の装いから短い田畑のシーズンの大切な時期だったようだ
そのため、宿にはいない。そして部屋割りを変えようにも変えることができないそんな状況だった
「とりあえず、兄と合流します。会いたくないけど」
『とりあえず、岳明と合流して待ってて。あと、あんた頼人もきてるよ』
あぁちょっとお父さん何やってるだ!
なんて電話口から聞こえるが吉野はとりあえず下川を殴り飛ばした。いきなり殴られてお口がぽかんとしている下川に吉野は生気のない顔を晒してしまい、この後の喧嘩は必須となてしまう。
そして吉野が残念であったのは頼人が来ていることである。岳明が来ているのは最悪だかよりにもよって弟までもが集結してしまい吉野3兄弟伝統の自衛隊体操・早朝トレーニングを始めそうで嫌だった。一度これをしたせいでその日泊まっていた宿泊客を驚かせてしまい宿の主人にこっぴどく怒られたのだ
「あれ、またする気なのかな」
「あれって何かわからないけど、とりあえずお兄さんとお話しした方がいいんじゃないか」
そうかな
言って振り向いた途端目の前に満面の笑みを浮かべてついさっきまで田畑を耕していた格好の大男、岳明が立っていた。
これには、刑事といえども驚いてしまい下川は腰を抜かして立てなくなってしまった。この様子を見た地元民や観光客も驚いてしまい近くにいた警察官に職質を受けて説教を受けていた電話を切っていないためしきりに女将が質問し安全かどうかを聞いたが慌てすぎたため答えることができなかった。その一時間後宿の主人にこっぴどく怒られたのは言うまでもない
その後、岳明は二人の荷物を先に宿に持っていきその15分後、弟の頼人が車に乗って駅のロータリーまでやって来た
「ねぇちゃん。久しぶり。元気にしてた?」
岳明とは正反対に冷静で大人しくクール系男子だが吉野の面影がどことなく現れる好青年である
背丈は岳明と同じか少し低いくらいで彼もまた農作業をしていたせいか着衣に泥が少しついていて顔にも拭ったような形跡も見て取れた
「久しぶり、まさか頼人も来ていたんやね。驚いたで」
「兄貴が強引に誘って来よったから断られへんかったし、上官命令って」
いらない風習をここに来て持って来たのだ。面倒な兄を持ってしまったとつくづく後悔しれしまう二人を近くで見ていた下川は大学に通う弟と置き換えてしまいこんなふうに思われていないかどうかが気になっていた
「あの、すいません。あなたは?」
「初めまして、吉野優子さんの同僚で警視庁捜査一課捜査員の下川春人と申します。どうぞ宜しくお願いします」
身分証として持って来た警察手帳を見せると頼人は興奮して嬉々として手帳を見ている。
まるで初めて本物の警察官にあった子供のような目だった。
可愛らいい弟に兄としての心が芽生えたのかグリグリと頭を撫でると、かぁぁと顔を赤くなっている頼人についつい遊んでしまうが突然周りを気にし始めて萎縮してしまった。
さすがにここではダメだったな
下川も謝り一行は頼人が用意した車に乗り込んで宿を目指した
道端に残る雪とアスファルトがアンバランスに彩っているが目の前には雄大に広がる雪を纏った大きな山が二人を出迎えるようにそびえ立ち晴天であるためくっきりとその姿を見ることができた
「珍しいね。こんなに綺麗に見えるの。ついさっきまで山頂の方は曇って雪降ってたらしいから。お山が歓迎してるちゃう?」
頼人は車を走らせながら、綺麗に見える山に感銘を受けていた
どうやら、頼人は山に登ったらしいがどうも視界が悪く登頂をやめたらしい。
「そんなに珍しいのか。晴れて綺麗に見えるの?」
「この時期は、天気が悪くなりやすいんです。ここら一帯は晴れていても山に登った途端雨か雪。それかガスが発生して視界不良。」
山岳救助隊の人も大変だろうなぁ
と言う下川にそうですねぇと答える頼人
この時吉野は置いてきぼりにさせてしまい話についていけなかった
しかしどうしても気がかりなのは、東京にいる捜査員と橘のことだった、特に橘はあの変な夢を見ていたせいかいつか本当に夢のような状況になるのではないかという不安が脳裏をよぎってる。
比嘉がまた捜査に口出しをして状況が悪くなっていないかという不安もそこにはある。そんなことが下川にも伝わってしまったのか車内の中の空気がどんよりと重たくなった
「やっぱりきになるのか。橘さんのこと」
「どうしても、あんな夢のような結果だけは避けたいから」
吉野のその言葉にどうしても予知夢が示した未来が来るのではないかという一種の恐怖心に下川もまた悩まされていた。
尊敬する上司が殺されるということだけはどうしても避けたい。しかし、今この場にいることが夢の示した通りの出来事であるならば、この世に神がそうしろと命令したのであれば何が何でもその状況からひっくり返して見せないとという信念だけしか抵抗するすべがない
「そろそろ着くよ。二人とも」
そう言われて吉野がふと窓の外を見ると事件が始まる前、当時女将と別れを言ったあのバス停が目に飛び込んだ。今も当時と変わらないその場所にふと記憶が蘇って来る。通り過ぎたのはたったの数秒でも吉野にとっては10分、いやそれ以上に感じ取れた
忘れかけていた記憶がじわりじわりと思い出していく宿に到着して、二人は車から降りるとそこにいたのは宿の主人ではなく女将でもなく兄の岳明だった。
「おかえり、コーヒーでも飲むだ?」
そういう脇を通って3人は宿のロビーへと足を運んだ。
小さな宿だが味があってどこか実家に帰ってきた感覚がたまらなく好きだった、
「やぁお帰り。元気にしてた?」
久しぶりに帰ってきた。そう感じ取って懐かしさのあまり涙がすぅと溢れて来るのがわかる
二人はご好意に甘え、ゆっくりとコーヒーを飲むがこの時比嘉が送り込んだ刺客がのちにあのような事件に発展する
と考えられなかった
橘の危機が迫るまで残りあと3時間
下川公平の危機まで残り十三時間
島津が亡者になるまで残り三十時間
そして比嘉の最終計画まで残り二十時間を切った
今回は長ったらしく書きました
吉野がここにきたことによって比嘉の計画は最終段階まで来ていることになります
なぜ岳明が長野にきたのかはまた来週です
そして、吉野の夢が現実になります
何が起こるかはお楽しみに
それでは・あれ誰か来たようだ・・・・




