↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GunZ&SworD  作者: 聖庵
124/185

シーン 124

町は酷い有様だった。

話には聞いていたが、壊された建物の数が尋常ではない。

特に三階建てを超える建物の被害がよく目についた。

それを見て背筋が冷たくなる。

“ウチ”は四階建てだ。


路地には敵の死体も転がっている。

そのほとんどが空から強襲してきたグリフォンやズーだ。

しかし、他を見渡しても、ワイバーンの姿は見当たらなかった。

情報によれば、グリーンドラゴンが倒れた事を察知すると、ワイバーンは真っ先に逃げ出したらしい。

退き際の潔さは敵ながら感心する。


露店街の被害も報告の通りだった。

まるで嵐が通り過ぎたように、テントや商品が散乱している。

特に被害が大きいのは食品を扱う店だ。

ほとんど商品が地面に散らばり、売り物にならなくなっている。

中には蜂蜜を売る露店も被害を受けていた。

地面に散乱した瓶が割れ、こぼれた蜜に蟻が群がっている。

蜂蜜は高価なため、一目で立ち直れないほどの被害を受けたことがわかった。


まだ正式な発表はないが、おそらく、国は今回の被害に対する賠償をしないだろう。

元々、そう言った制度がないという方が正しいかもしれない。

もちろん、個人で加入する保険制度も存在しないため、損失は全て実費ということになる。

仕方ないと言えばそれまでだが、その辺りはここが異世界だと実感する事の一つだ。


瓦礫が散乱した路地を抜け、ようやく家にたどり着いた。

被害を受けているだろうと心配していたが、家は出かけた時とまったく変わらない佇まいで僕を迎えてくれた。

近くの建物が半壊や全壊しているところを見ると、少し違和感を覚えるくらいだ。

それでも、家族の無事が確認できるまでは安心する事はできない。


「みんな、無事か!?」

「あ、おかえりなさい、レイジ様」


リビングに駆け込むと、ペオが迎えてくれた。

他のみんなは見当たらないが、彼が普段と変わらない様子のため、無事と考えてもいいだろうか。


「他のみんなは?」

「サフラさんとニーナさんは屋上です。大きな魔物が襲ってきて大変でした」

「屋上?」

「はい。先ほど仕留めた魔物を下に降ろす相談しているはずです」

「仕留めた…?まあいい、直接行った方が早いな」


普段、屋上はほとんど出入りすることのない場所だ。

よほどの事がない限りあがる事はない。

それでも、屋上から望む町の景色はなかなかのもので、天気のいい日はよくニーナが昼寝をしている。

しかし、落下を防止するための柵がないため、安全は確保されていない。

そのため、ニーナには風の強い日には出入りしないよう注意している。

階段を駆け上がり、天井から下がった梯子をのぼった。


「あ、レイジ!」


梯子から顔だけ出すと、グリフォンの死体を見つめていたサフラが僕に気が付いた。

近くにはニーナの姿もある。

どうやら、二人で協力をして倒したらしい。


「まさか、お前たちだけで倒したのか?」

「うん。最後に仕留めたのはニーナさんだけどね」

「あぁ、おかえり、レイジ。言いつけはちゃんと守ったぞ?」


言いつけは、家を出る前に“家族を守れ”と伝えたことだ。

二人を見ても、怪我をしている様子はない。

梯子をのぼりきって二人の近くに歩み寄った。


「しかし、魔具も使えないのによく仕留められたな?」

「空から襲ってくる相手には少しコツがあってね。コイツが役に立ったんだよ」


そう言ってニーナは投擲に使う小さなナイフを取り出した。

これはバレルゴブリンと戦った時にも使用したものだ。

話に聞けば、至近距離までグリフォンを引き付け、ナイフを翼に投げ付けたらしい。

あとは、動きが鈍ったところを二人で仕留めたようだ。

死体を見ると胸の辺りに受けた一撃が致命傷になっていた。

弱ったところへ容赦のない突きを入れたらしい。


「魔具がなくても平気ってことか。それにしても、ウチだけ被害が無いみたいだが、どういうことだ?」

「私たちが一生懸命守ったんだよ?ホント、大変だったんだから」


サフラは誇らしげに胸を張った。

顔には満足感から笑みも浮かんでいる。


「グリフォンくらいなら私たちでも何とか出来たんだ。あと、ズーは何故か襲ってこなかった。きっと、グリフォンがやられたのを見て敵わないと思ったんだろう。標的を変えて別の建物を襲っていたからな」

「そんな事あるのか?」

「実際、無事だったのがその証拠になると思うが?」

「…確かに、コイツの死体以外は落ちてないからな。疑って悪かったよ。そういえば、残りの二人はどうした?まだ姿を見ていないが…」


そう、まだマオとエールの姿を見ていないのだ。

彼らはペオと同様、戦う術を知らない。

守られる側の人間だ。

姿が見えないところを見ると、どこかに隠れているのだろうか。


「二人ならお店だよ。様子は見てこなかったの?」

「店か。何やってるんだ?」

「開店の準備だよ?」

「…え?」


それを聞いて僕の思考が停止した。

むしろ、こんな出来事があったのにも関わらず、店を営業しようとしているとは思いもよらなかった。


「だから、お店の準備だよ?」


サフラは念を押すように僕の顔を覗き込んだ。

そんな事は二度言われなくともわかる事だが。

停止した思考はゆっくりと動き始めた。


「…今日くらいは休んだってよかったんだがな。誰の指示だ?」

「マオさんが自主的に始めたんだよ。いけなかった?」

「いや、襲撃で動揺しているんじゃないかと思ってたんだが、取り越し苦労だったみたいだ」

「そうなんだ。えっと、町が安全なったのを聞いて準備を始めたから、いつもより少し時間が遅れそうだって言ってたよ?」

「まったく…仕事熱心だよな」


思わず苦笑が漏れた。

彼らには店の管理を任せているが、これほどまで自分たちの職務に真剣だと知らなかった。

それだけ思い入れがあるという表れだろう。

あとで顔を出しておく必要がある。

ただ、その前に屋上を占拠するグリフォンをどうにかしなければならない。

むしろ、ここから降ろすだけでも一苦労だ。

死体の処理は基本的にハンターたちが行う。

それでも、私有地に入り込んだ魔物の処理は、彼らが独断で行う事ができない。

そのため、対処しやすいよう路地に運ぶ必要がある。

問題はどうやって下まで降ろすかだ。

二人もそれに悩んで難しい顔をしていた。


「…で、どうやってコイツを降ろす?」

「そうだな…いっそ、投げ落とそうか?」

「コイツ、ムチャクチャ重いぞ?」

「…だよな」


ニーナの提案を実行するにも、持ち上げて投げ落とすのは少し無理がある。

そうするにはあと数人の人手が必要だ。

結局、悩んでいる間にハンターたちが駆け付け、死体は無事に撤去された。


「二人とも、準備は順調かい?」


店で開店の準備をする二人に声をかけた。

エールは提供する料理の支度に余念がない。

鍋を見つめながら今晩のメニューと格闘している。

マオは普段通り、客席の準備をしながら備品の管理をしていた。


「あ、レイジ様、おかえりなさいませ」

「ただいま。仕事熱心だね」

「はい、私たちの務めですから」

「食材の調達はどうだい?町の被害を見てきたけど、仕入れもままならないだろう?」


いつも贔屓にしている商店も被害を受けていた。

まだ少し混乱した状況が続いているため、これでは満足に食材が調達できていないはずだ。

それを聞いて厨房からエールが顔を出した。


「それなら心配に及びません。直接買い付けに行ったので、今晩の分は揃えることができました。足りない分は、倉庫にあった食材で対応できそうです」

「直接行ってきたのか?道も悪いし、大変だっただろう?」

「このくらいの苦労は、レイジ様やサフラさんたちと比べれば些細なものですよ」

「そうか。まあ、無事で何よりだ。安心したら腹が減ったな。エール、何か作ってくれないか?」

「わかりました、すぐに準備します」


思えば今日は昼食を食べていない。

守ることに一生懸命で忘れていたというのが本音だ。

そろそろ夕食という時間帯だが、小腹を満たしておいても悪くないだろう。

エールは慣れた手つきで食事を準備すると、マオがいつものように配膳してくれた。

この二人の働きぶりは板についている。

初めて店を営業した時のぎこちなさはどこにもない。

それだけ慣れてきたということだろう。


夜。

店の営業も終わり、リビングに全員が揃った。

この期に話しておかなければならない事がある。

ドワーフとエルフとの和解を進める件についてだ。

それと、皇帝が倒れたという報告も兼ねている。


「…まず、悪い知らせから伝えておく。陛下が毒に倒れた。今は療養中だ」

「陛下が!?大丈夫なのか?」

「油断はできないが、すぐに危険という状態ではないらしい。ただ、解毒がうまくいっていないんだ。薬を必要としている」

「毒に効くお薬だよね?」


サフラの言葉を聞いてニーナは何かを思い出したらしい。

確信に満ちた顔で笑みを浮かべた。


「アイツに相談すればいい。きっと、薬を持っているはずだ」

「アイツ?」

「あぁ、かつてキミと大会で戦った男、ガウエスだよ。ヤツは毒物のエキスパートだ。同時に、自ら調合した解毒剤もたくさん持っている。きっと、陛下を治療できる薬も持っているはずだ」

「そうか…セシルも言っていたが、アイツは商人の顔も持っていたな」


以前、セシルからガウエスの事を聞いていた。

彼は自ら精製した毒を商品として売る商人の顔も持っている。

同時に、解毒に必要な薬も常に持ち歩いているため、皇帝の解毒が可能な薬を持っている可能性が高い。

問題は彼の所在だ。

それがわからなければ話にならない。

ニーナの情報では、仕事でハンターギルドによく出入りするところを目撃しているらしい。

今回の戦いにも参加していた可能性はあるが、前線で彼の姿を見る事はなかった。

おそらく、町の中にいれば、ハンターギルドから所在を調べれば見つける事ができるだろう。


「もしかして、ガウエスの所在なんて知らないなよな?」

「さすがに、私も情報屋ではないんでね。ただ、知り合いを当たればすぐに所在が掴めるかもしれない。明日、朝一で知り合いを当たってみるよ」

「そうか。じゃあ、わかり次第連絡してくれ。あと、これは別件だ。近々、再びノースフィールドに向かう。目的はドワーフたちとの和解だ。陛下から直接依頼があったんだ」

「それ…大丈夫なんですか?」


真っ先に疑問を持ったのはペオだ。

彼は聡明だが慎重な一面も持っている。

特に彼はノースフィールドに赴いていないため、ドワーフのイメージはいまだに悪いまま。

そんな彼にとって、ドワーフと和解するということ自体、夢物語のように感じているのだろう。

もちろん、僕らがノースフィールドに行っている間に、家族に加わったマオとエールはペオ以上に不安そうな顔をしている。

彼らのイメージもあまり良くはないらしい。


「何、心配するな。一度、話が出来た相手だ。あとはやれるだけの事をやるしかないだろう?」

「そう…ですね。わかりました。僕はレイジ様を信じます。だって、自慢のご主人様ですから」


ペオは三人を代表して僕を激励してくれた。

今回も三人は留守番組だ。

危険な地域を通らなければならいため、余計な人員はなるべく連れて行きたくはない。

それに、店の事もあるため、普段と変わらない生活を続けるよう伝えた。

正式な出発の日程は、後日アルマハウドと相談してからという事を付け加えておいた。

睡眠時間を削って執筆すると、昼間の眠さがハンパじゃないですね。(汗)

一応、自分の中で毎日更新すると決めているので、忙しい時期であろうと出来る限り頑張ろうと思います!




ご意見・ご感想・誤字脱字の指摘等があればよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。