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【キセイシリーズ】喚ばれた理由は『人殺し』  作者: mizuchi_0307
第一章 『人殺し』

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第8話 決断

「なるほど。ギルバードが、本当に寄生されたか……計画通り、召喚に成功したら世話係はギルバードに。万が一の時のため、対象を絞るため事前に決めていたことではあるが……あまりにやることが早すぎるな。もう一度王宮内を洗う必要性がありそうだ」


 グラムは淡々とゼウスの報告を聞いていた。


 つまり、私を召喚するという日は決めていて、世話係をギルバードにすることまで決めていた。その上で、敵が本当に周りの人間を潰すために動くのなら、異世界からやってきた人間の世話係を狙うだろうからギルバードがいなくなったら寄生されたものとして動く。極秘裏に動いていた人物こそゼウス。彼も関わった私の召喚計画は今のところすべて計画通りだ、ということだろう。犠牲者前提の計画だなんて酷すぎる話だ。


「グラム様、申し訳ありません。私が、あの時、女性の悲鳴を聞いてすぐに駆け付け、寄生されないようにしていれば、ギルバードさんは、助かったはずなのに……」


「いや、道子は気に病む必要はない。それに、寄生は一人では成り立たないのだよ。特に寄生が成立して間もない個体は、自分の中の寄生体だけで、他の人間に寄生を成立させられるだけの寄生体分体を持たない……そうだろう、ゼウス」


 そういって励まそうとしたグラムに対して、ゼウスは思いがけない一言を言い放った。


「いえ、そうとは限らなくなりました。グラム様。以前お話した通り、クロウディウス個体とグランバール個体は別物です。正確には、グランバール個体を人工的に改造したもの。これがクロウディウス個体だということが分かりました。なので、グランバール個体の寄生ルールの原則。この原則が通じるかわからなくなりました」


「なんだと!」


「クロウディウス個体は明らかに何かの指示を受けて集団として動いております。それに対して、グランバール個体。こちらはある一定の範囲内では同じ傾向がみられますが。その範囲から外れると途端に制御を失い、元々の寄生主の自我が戻るようなのです。これは、以前報告した時よりも良い報告にはなるかと思いますが……引き続き調査が必要です」


 昼間、グラムに教えてもらっていた話も、どうやらゼウスの持ち込みだったようだった。先ほど、私が寄生されなかった時の喜びようを見る限り、寄生体と敵対しているのはわかっていたが、あまりに知りすぎていて、不気味に感じた。


「逆に言いますと、クロウディウス個体に完全に寄生された人間を戻す術があるとすれば、それはその集団の大元となっている個体を殺すことでしょう。動きから見て、まず間違いなくハーゲルンの人間でしょうが」


「ゼウスさん、私はこの世界を知らないから、こんな質問をすることになるのだけれど」


 咄嗟に、私は口を挟んだ。グラムにしても、ゼウスにしても少し決めつけが過ぎると感じたのだ。国同士の争いがあるのは理解している。しかし、それにつけこむ人間がいたらどうするのだろう。そこまで考えているのだろうか。私は最終的にグラムの願いを叶えなければ帰ることもできない存在。その願いは、せめて、正しく叶って欲しかったから間違った推理で動きたくはない。


「クロウディウス個体がハーゲルンにとって利する行動をとっているからハーゲルンの差し金に違いない、というのは早計だと思います。そう思わせる何者かの行動、もしくはたまたますべてがそういう方向に向いているだけ、という可能性はないのですか?」


 私の発言を聞き、グラムが顎に手を置き、そしてゼウスは腕組みをして、頷いた。


「確かに、今までの情報だけではハーゲルンに敵意を向けさせたい第三者がいて、その者による工作だったり、ただの偶然、という可能性も否定しきれないだろうな。だが、私がこれを口にする理由はきちんとあるのだ」


 そういい、ゼウスはグラムの方をじっと見た。


「グラム。私と君の友人の話を、すべきではないかな?」


「ゼウス。彼女もこの世界にきてまだ一日もたっていない。きちんとこの世界に慣れてから、そこから説明してやりたいのだ。まさか、初日でギルバードを失うという誤算が生じるとは思わなかったがね……いずれ、話すつもりだ。だが、ハーゲルン王国によるものだと私が断定する理由はある。これだけは前提として理解しておいてほしい」


 この二人の言い合いを聞いて、理解した。グラムは説明する気はある。だけど、私がこの世界にきたばかりという事情を重く見てくれているのだ。その言葉に、私も一つの決意を固めることができた。……どうせ、向こうで私を待つ人間なんていない。


「グラム様、その言葉、信じてもよろしいですね?」


 私が真っすぐにグラムの顔を見据えると、グラムが真剣な顔で頷いた。


「この国の国王として、嘘偽りなく知る限りのことをいずれ説明することを誓おう」


 その言葉に、私は私なりにお辞儀をする。この世界の流儀のお辞儀なんて知らない。だから、私が知っている流儀で最大限の敬意を示した。


「では、この世界に蔓延る寄生体がもたらした危機を解決する……この依頼、血塗られた私の手でよろしければ、お受けいたします」


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