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【キセイシリーズ】喚ばれた理由は『人殺し』  作者: mizuchi_0307
第一章 『人殺し』

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第3話 国家機密

「私がお前を呼び出した理由は『この世界に現れた、人間にも寄生する寄生体の駆除』だ。おそらく、隣国のハーゲルンが何かしら手引きをしていそうなのだ。我が国の人間が、調べようとするたびにその人間の近辺の人間が寄生体に侵されていってしまってな……今では誰も調べられない状態になっている。そこで、この世界に関わりのない、異世界の住人に私は賭けたのだ。どうだろうか。寄生体の駆除と、元凶の討伐を願えないだろうか」


 寄生体の駆除。だけだったら、理解はできなかったかもしれない。しかし。


『人間にも』


 そして、グラムから語られる寄生体の被害者の内訳。

 ああ、なるほど……理解できてしまった。赤の他人、憎んでもよいぐらいの相手ですら、こんなに殺すこと、殺してしまったことで悩むのに……もしもそれが、それまで大切にしていた人の皮を被ったもの、と言われて殺せるのか……命令された人間は、精神的に無事では済まない。

 つまり、グラムは国を守るため殺し屋を異世界に求めただけの王様ということになる。ただ、これだけは確認をしなければならない。グラムが、本当に信じられる人間なのかを知るために。


「事情は理解いたしました。ですが、寄生体に侵された人間がもう助からないという確証はあるのでしょうか?」


 もう助からないのであればグラムの言い分は正当だと思った。この世界でゼロから関係性を構築しなければならない私ならば、弱点は少ない。異世界に頼る理由にはなる。だけど、助ける方法を見つけられていないだけなら話は別なのだ。異世界に頼るだなんて、最後の手段であるべきだ。


「正直、わからない。この寄生体について調べるようにと命じ、極秘裏に動いている人間がいる。その者の現在の報告によると寄生された人間によっては自我を保つこともわずかにあるらしい。しかし、『ハーゲルンに味方する寄生体個体』についてはこの自我を保つ、という事例は観測されていないとのことだ。こちらの個体の方が、目撃数が多いにもかかわらずな」


「特定の国が絡むときだけ症状が違うとは、一体どういうことですか?」


「バスパー、地図を広げよ」


 グラムが元々その部屋に控えていたギルバードと同じ服装をした男に指示を出す。よく見れば、召喚された時にグラムの両隣にいたうちの一人だった。バスパーは私の前に机を置き、地図を広げる。

 その地図は異常だった。グランディウス王国の首都なのだろう。グランディウスと書かれた都市が真ん中に描かれており、その南東に長い城壁。その城壁には城壁都市グランバールと書かれている。そして、東側は……大雑把に陸と海が分けられ描かれているだけ。西側も同等だ。北西に長い城壁が描かれそこに城壁都市クロウディウス。さらにその西側には陸と海が描かれたうえでハーゲルン領。そして、クロウディウスとハーゲルン領の間にコロシアムのような建物が一つだけ描かれている。


 グラムは玉座から立ち上がり、机の地図に指を差しながら説明を始めた。


「これがこの大陸の……いや、この周辺の地図だ。十年前の隕石の落下で沿岸部の都市はハーゲルンも我が国もほぼ壊滅しておるから、書き直された大陸地図は現在存在しない。ハーゲルンと協力しなければ作れぬが、この状況だしな。そこでどの街も周辺都市までの距離感や地形を記す地図をそれぞれで作って扱っているわけなのだ。全てが解決した暁には作りたいものだがな。それで、寄生体の話だな。人間の寄生体が発見され駆除されたのは大体この辺りだけだ」


 そういい、グラムはクロウディウスに丸を打つ。そしてもう一か所。グランバールの南側にも丸を打つ。


「クロウディウスで駆除された寄生体は明らかに我が国を害するような行動をとっておる。それに対して、こちら、グランバール南の個体はそこの地域から出ようとしない。引き込もうとする性質は見受けられるがひとまずそれ以上のことはしないことから、こちらの個体の研究を進めておるのだが……」


「何か問題でも?」


「クロウディウスとグランバール南ではどうやら個体差があるようなのだ。それが、最近になってわかってな。極秘裏に動いている者は、こちらの個体……そうだな。わかりやすくクロウディウス個体と呼ぼう。こちらは駆除すべきだと助言をしてきた。その頃から、やたらクロウディウス個体の動きが活発化してな」


 そこでようやく合点がいった。つまり証拠が不十分であるにもかかわらず駆除の方向性で動こうとした途端に活発化した。であるなら元凶はハーゲルンだろう、という根拠なのだ。気持ち自体は理解できる。だけど、私が聞きたいことはそこではない。


「その推理自体は多少の飛躍がありますが考えること自体は問題ないと思います。しかし、それと助からないが繋がりません。また、話を聞いて思ったのですが、自我を保っている個体は、寄生を広げることがなくなれば無害だから放置でよい。という判断ですよね? 状況的に理解はできます。ですが、重要なのはどうして自我を失ってしまうか、だと思うのです。優先度を下げる理由にはならないのでは?」


「ふむ。道子は聡明なのだな。その通りだ。だからこそ戻せる方法があるのなら隔離して戻す方法が見つかるまで耐え忍ぶのが最善手なのであろう。しかし先ほども言った通りだ……調べようとした人間の周りから潰されておるのだ。これ以上、全国民を危機にさらして行うことは、国王として出来ぬ。ここは理解してもらいたい」


 グラムの言い分も理解はできた。そして、被害を最小限にするためにも寄生され、国に害を及ぼす自我を失った個体を殺す役目を誰かが担わなければならないことも。


「どうだろうか。道子。全てをとは言わぬ。クロウディウス側だけでもよい。今早急に対処しなければならぬのは調べれば調べるだけ、周りが汚染されていくクロウディウス側の個体の処理なのだ。お前が調べて、元凶を駆除してくれぬだろうか?」


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