02 こうして“指名手配”された?
「変態?!!」
しかし、その女子高生は河馬を指さし、震える声でそう言った。
「違うんだ……」
河馬はすぐにメモの場所に手を伸ばし、その女子高生に説明しようとした。しかしメモは彼女のバッグのストラップに挟まっており、手を伸ばした瞬間、女子高生は何かを勘違いしたらしく、慌てて一歩下がり、河馬を指さして言った。
「やっぱりあなたは変態だ!!」
女子高生は耳を塞ぎ、信じられないという顔をしている。
「変態だ!ああ!!」河馬の耳にも、周囲から突然の悲鳴が届いた。
「変態?」周囲の人々も河馬を悪人を見るような目で見つめた。
河馬の瞳は、地面にしゃがみ込んだその女子高生を見つめていた。
「ち、ち、違うんだ。そうじゃなくて。」
そして次に聞こえてきたのは、恐ろしいほどの声だった。
「私、ぶつかっただけじゃないですか?それを根に持って、私にこんなことして、あんなことして……ああ、私の人生に大きな亀裂が入ってしまいそうです。女子高生にちょっかいを出すのは犯罪だって知らないんですか?怖い……すごく怖い……あああ、私、変態に襲われるの?」
「やめて……やめて……そんなこと……」
女子高生は地面にしゃがみ込み、そう言った。
「おい、君は被害妄想が激しすぎるよ……」
周囲から突然、そんな声が上がった。
「あ!なんと変態だ!」
その老人は杖をつき、重々しくこう言った。
「なぜ今、街中に変態が現れるんだ。私の時代ならすぐに刑務所行きだったぞ。」
「あなたはどこにでも口を出さないでくれますか……」河馬はもう怒鳴りたくなっていた。
河馬が説明しようとしたが、その老人は姿を消していた。
振り返ると、女子高生はもう遠くへ走り去っていた。
しかも「変態!」「変態!」と叫び続けている。
周囲の人々も無意識に河馬から一歩距離を取り、怯えた目で彼を見つめていた。
「違うんだ……」
しかし説明すればするほど、話はこじれていく。
周囲の恐怖は募るばかりだ。
「早く離れろ……変態だぞ……」
本来はどうでもよかったのだが、しかし……
河馬は自分のメモがまだあの女子高生のバッグにあることを思い出し、すぐに追いかけた。
「追いかけた……追いかけたぞ!」
「すぐに110番だ!」
「話を聞いてくれ!!」
女子高生はすぐに耳を塞ぎながら走って言った。
「聞かない、聞かない!妊娠しちゃうから!」
「話を聞いてくれ!」
河馬はなおも最後の抵抗を試みた。
すると……
彼女は走り、俺は追いかけた!
通りをいくつも越えて。
彼女は走り、俺は追いかけた!
坂をいくつも越えて。
彼女は走り、俺は追いかけた!
数え切れないほどの交差点を越え、何度も車に轢かれそうになった。
彼女は走り、俺は追いかけた!
「説明を……」河馬は息を切らしていたが、女子高生はまだ疲れた様子もない。
河馬はもう少しで追いつけなくなりそうだったが、ふと思いついた。
「そうだ……妊娠なんて簡単にできるもんじゃない……」
少しだけ足を止めたその女子高生が、突然立ち止まって河馬を振り返った。
「やっぱりあなたは変態だ!」
そしてさらに速いスピードで走り出した。
仕方なく、河馬はまた追いかけるしかなかった。
すると……
彼女は走り、俺は追いかけた!
通りをいくつも越えて。
彼女は走り、俺は追いかけた!
坂をいくつも越えて。
彼女は走り、俺は追いかけた!
数え切れないほどの交差点を越え、何度も車に轢かれそうになった。
彼女は走り、俺は追いかけた!
「俺は本当に変態じゃないんだ……」
河馬は走りながらも必死に説明した。
「嘘ばっかり。まともな人間が、女子高生を何条通りも追いかけ回すわけないでしょ。」
しかし女子高生は反論した。
「それには理由があるんだ。君が止まれば、俺も追いかけない。」
河馬がそう言うと、女子高生はさらに速く走った。
「私が止まったら、あなたの思うつぼでしょ……」
河馬は言葉に詰まり、何と言っていいかわからなかった……
太陽が真上に昇り、ひときわまぶしく輝いていた、まさにその時。
もう走りきれなくなったのか、それとも幻覚を見たのか。
目の前の光景が突然変わり、女子高生は灰色の制服を着た人物を連れて、河馬に向かって言った。
「警察官のおじさん、あの人です。何条も追いかけてきて、私に悪いことをしようとしたんです。」
光がまぶしすぎて、河馬は何を言えばいいのかわからなかった。
おそらく説明すべきなのだろうが、なぜか言葉が出てこなかった。
そして目の前のその人物……
彼がこの街に来て、一番会いたくなかった人物だった。
その人を見ると、自分が劣等感に苛まれる。
そして……
目の前の……
その人もまた、固まっていた……
つまり、その警察官だ。
河馬は説明すべきかもしれないが、なぜかその人を見ると、結局体を向き直して、一目散に逃げ出した。
その警察官は手を伸ばし、二歩ほど前に出たが、すぐに何かを思いとどまった。
突然足を止めた。
風が彼の制服の裾を揺らし、青いインナーがひらりと動いた。
彼は手を挙げて、後ろの二人の警察官を制した。
女子高生はその動作を見て言った。「警察官のおじさん、追わないんですか?」
その人は、女子高生の澄んだ瞳を見つめ、口を開きかけ、何かを言おうとした。
しかしすぐに口を閉じ、知性あふれる目で女子高生を見つめ、こう言った。
「安心しなさい。この件は我々が処理する。犯人を逃がしたりはしない。今はまず学校に行きなさい。」
女子高生は警察官の瞳を見て言った。「はい……おじさん、いい知らせを待ってます。本当に優しいんですね。ああいう教養のない犯罪者と違って。」
警察官は瞳で彼女を見つめ、気の利いた微笑みを浮かべた。
しかし何も言わなかった……
代わりに女子高生が……
彼女は警察官に携帯番号を求め、何かあった時に連絡できるようにしたい、学校に説明する必要もあるから、と言った。
警察官は特に問題ないと考えた。
渡さない理由もない。
こうして二人は番号を交換した。
しかし、女子高生が去った後、その人は河馬が去っていった方角をしばらく見つめ、やがて空を見上げ、何かを考えているようだった。
隣の同僚が肩を叩くまで。
「隊長、追わなくていいんですか?」
その人は考え込み、震える唇を動かし、拳を握りしめ、最後にこう言った。
「いや……この件は私が処理する。」その人は両隣の同僚を困惑した目で見つめ、そう言った。
彼は再び河馬が去った方角を見た。
唇を噛みしめた。
そして首を振った。
日差しの中、河馬はひたすら走り続けた。なぜか、ただ逃げ出したかった。
あの人に今の自分の姿を見られたくなかった。なぜこうなったのか、誰にも知られたくなかった。
なぜ?自分が何か間違えたのか?
河馬は自問した。
違う……違うだろう。
たぶん……あるかもしれない。たぶん……
河馬にはわからなかった。わからなかったから怖かった。わからなかったから答えられなかった。
ただ、決めてあった下宿先に戻りたかった。
部屋の番号は……第五街、日羊社区……
敷居の上に置いてあった合鍵を取り、河馬は部屋の中にうずくまり、頭を抱えた。この二十平米にも満たない部屋の中で震えていた。窓を閉めても風が吹き込む空気も気にせず、空は曇っていて、河馬は何も見分けられなかった。ただ暗い隅っこにうずくまり、さっきの出来事を反芻していた。
さっきのあの人を思い出すと、どう応えればいいのかわからなかった。
そうだ……
あの警察官は……大学時代の同級生で、確か当時……ひどく衝突した相手だ。
あるいは……ひどく罵倒された相手だ。
……
「そうだ、あのメモがなくても、ちゃんと部屋は見つけられたじゃないか。」
そう言って……
本来なら喜ぶべきことなのに、河馬はなぜか以前のような高揚感を覚えなかった。
ただ……格好悪すぎる。なぜこうなるんだ。
本来こうなるはずじゃなかった。
なぜうまくいっていたことが、こうもめちゃくちゃになるんだ。
不可抗力なのか?
違うだろう……違う……俺のせいだ……
なぜ……
河馬は頭を抱えた。警察署に行って全てを説明しようと思った。
しかし、できない……できない……本当にできない……
あの日差しの中のあの人を思い出すたびに、力がまったく湧いてこないのだ。
なぜ……
なぜ、あいつなんだ。
あいつは今、警察官になったのか。
そうだ……あいつが言った通り、俺は一生ただの虫けらかもしれない。
俺は本当にダメだ。
もっと早く気づいていれば、こんなことにはならなかった。
なぜあのメモにこだわったんだ。
そんなの馬鹿げた行為じゃないか。
本当に……
もしこんなことがなければ、今頃あいつに会わずに済んだのに。この大都会で、一生会わないで済んだかもしれないのに。
本当に……
本当にダメだ。
本当に……
そう言いながら、河馬は足に温かい液体が垂れているのを感じた。
自分は本当に馬鹿だ……
本当に……
そんな嗚咽が抑えられず、足に落ちた液体に触れようとしたが、それさえもできなかった。
なぜ……
なぜ、お前は泣くことしかできないんだ?
男らしく、きちんと問題を解決できないのか?
涙が止まらず流れ落ちる。
もしイケメンなら、それはそれで一つの風情かもしれない。
しかし河馬はまったくイケメンじゃない。無精ひげに、少し丸みを帯びた顔。子供の頃は可愛かったかもしれないが。
可愛いのは可愛いとして……
多分、どの女の子もこんな男とは付き合いたくないだろう。
そんな男が泣いたら、気持ち悪く感じるだろう。
そうだろ……
そうだよな……
しかし……しかし、どうしようもないじゃないか。河馬は泣きたくて泣いているわけじゃないと思った。
ただ、不甲斐ないから、不甲斐なく涙がこぼれてしまうのだ。
涙は窓の外の曇り空と混ざり合い、厚い雲と、なかなか晴れない風を伴っていた。風が吹くと、どこか涼しげで、湖面に靄が立ち、風の吹くままにまたゆっくりと晴れていく。世界全体がその涼しさに包まれているようだった。風が吹き、窓を叩き、閉め切っていない窓のカーテンを揺らす。
「さらさら……」
カーテンは絶えず揺れ、高層ビル群や緑豊かな公園の影を映し出しながら、風がさらさらと音を立てる。まるで世界全体がこちらに向かって歩いてくるかのようだ。
ひんやりと……
ひんやりと……
まるで故郷の風のように。
故郷の湖面の上で。
そして今、河馬の両親は、花瓶に白いカーネーションを一輪挿している。
曇り空と、そよぐ冷たい風の中で。
河馬の母親は地面に座り、何も言わなかった。
「ねえ、あなたの息子がこんな遠い大都市に行ったけど、本当に心配しないの?」
河馬はその男を見て、そう言った。
「説得したよ……意味なんてあるの?あのひきこもりが外に出る勇気を持ったんだ。止められるわけないでしょ。」
隣の青い服を着た男が、河馬の母を見た。
「でも、あそこに行っても何も得られないよ。彼の父親が……」
河馬の母はそれを遮った。
「父親の話はやめて。もともと彼に姉を見つけられるなんて期待してない。ただ、彼に姉と同じような無駄な道を歩ませたくないだけ。早く諦めて、素直に言うことを聞いて、家の技術を継いでほしいの。役に立たない空想なんかしないで。」
青い服の男は花を挿しながら、彼女に言った。
「彼は結構素直じゃないか?君が言う通りに……」
しかし河馬の母は首を振った。
「彼はここにいるけど、心はここにない。どうせただのひきこもりだ。何かあるとすぐに怖がって、弱音を吐いて、何もできない……」
「そうだな……ただのひきこもりだ。」青い服の男は首を振り、河馬の母に言った。「それじゃあ、もう一人もうけようか?」
……
冷たい風が河馬の肌を撫で、彼は思わず身震いした。
ボロボロの冷蔵庫の中の食料は底をついていたが、警察が追ってくる気配はまだない。彼はもう二度スーパーに行った。
このままでは、警察に捕まる前に、
自分が餓死してしまうだろう。
もう大丈夫だろうか……。
そうだろう……
きっとそうだ。
元々何もなかったんだ。
ただ考えすぎただけだ。
考えてみれば、女子高生を何条か追いかけただけで、たいしたことじゃない。
何もしてないし……
水面に映る、無精ひげとやつれた顔の自分。河馬はどうすればいいのかわからなかった。
「どうやら働かないといけないな……」
河馬は自分の頬を叩き、ガラスの鏡に映る自分を見つめた。
白い陶器が彼の顔色を淡く青白く見せ、外の白い空と相まっていた。
笑う……
河馬は笑ってはいるが、それでも憔悴している。
軽くひげを剃り、石鹸で顔を洗った。
どうにか、顔を少し清潔にした。
「仕事……」
河馬は空を見上げ、二十平米の部屋から一歩踏み出した瞬間。
空はまだあの惨めな白さだった。
彼と同じように、何も変わらない。
ただ微風だけが、かすかな涼しさを感じさせた。
ただ……
「どこで新しい仕事を探せばいいんだ。」
河馬はスマホを開いた。
道路沿いの塀はどこも同じようなコンクリート色で、ところどころに緑が点在し、かえって異様な静けさを際立たせていた。
前に出した履歴書は、まだ返事がない。
そんなに早く返事が来るわけないだろう……
何せ、大都会は静かな田舎と違って、競争が激しい。
河馬がスマホをしまおうとしたその時、
手の中でスマホが二度震えた。
プッシュ通知か?
「安南路西、第30号 訊司餐点館、夜間臨時スタッフ募集。給与は面談。ご希望の方はこちらまで……」
そのメッセージが河馬に届いたので、彼は気づいた。
え?
時刻は「16:30……」
今から行けば、ちょうど間に合うな……
ただし……
ただし、あの日の場所からちょっと近いな。
でも……
まあいいや……
もう何日も経って、誰もあのことを気にしていない。
きっと大丈夫だ。
そうだ……ニュースにもなってないし、大したことじゃないに違いない。
もうとっくに収まったはずだ。……
そうだ……
河馬は空を見上げ、一瞬ほっとした気持ちになった。
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