03 こうして仕事は軌道に乗った
「俺、警察に捕まらないかな……それが問題だ。本当に問題だ。」
河馬は震えながら通りを歩きつつ、そのことを考えていた。通りを行くすべての人が自分を監視しているように感じられる。しかし、それは幻覚だろう……
いやいや……そんなこと考えるな。
考えてはいけない。
今は警察の話をしている場合じゃない。今動かなければ、
警察に捕まる前に、自分で餓死してしまうだろう。
そうだ……
仕事……
仕事!
仕事場は……
安南路西、第30号 訊司餐點館。
そう……
ここだ。
河馬は今、そのレストランを必死に探していた。
ツイッターで返信して、応募すると言ったものの……
しかし……
心の中はまだ不安でいっぱいだった。
様々な理由から。
「俺、本当にダメだな……」
河馬はうつむきながら、スマホで場所を探していた。
そのレストランの位置。
写真も送ってもらったのに……
それでも見つからない。
もう周辺に来ているはずなのに。
自分って本当にバカだ……
でも、向こうからは写真を送ってほしいと言われていた。
河馬は自分の写真を送った。最初は躊躇したが、考え直した。特に問題ないだろう。自分はイケメンじゃないし。
もし店長が気にするなら、いつか顔を知られるだろう。
だからそのまま送った。
都市のビル群は方向感覚を狂わせる。河馬はまるで一枚の葉に目を遮られたカマキリのように迷っていた。
その時……
か細い女性の声が耳に届いた。
「ねえ、あなたが応募に来た人?」
河馬が顔を上げると、そこには青い店員服を着て、胸が信じられないほど盛り上がった少女が立っていた。宝石のような青い瞳をパチパチさせて河馬を見つめながら尋ねている。下半身は白いプリーツスカート、脚には膝丈の黒いストッキングが油脂のように滑やかな肌にぴったりと張り付いていた。
ただ一つ残念なのは、その少女が河馬より頭一つ分も低く、あの女子高生よりも小柄なことだった。
河馬はこういう女性に挨拶されるのに慣れておらず、一瞬呆けてしまった。
何と言うか……
独特の迫力があった。
だから一瞬ぼんやりしてしまった。
しかしすぐに我に返り、慌ててうなずいた。
「あ、はい……応募に来た者です。」
その女性はそれを聞いてすぐに笑顔でうなずいた。白くて繊細な顔に浮かぶ甘い笑顔は、どこにも文句のつけようがなかった。ただ違うのは少し茶色がかった髪。そういえば、都市の人はみんな染めるのが好きなのだろうか?ただ、姉の狂ったように長い髪とは違い、彼女の髪は異様に柔らかそうだった。どうしてだろう。
その女性は河馬を見て、両手を背中に組んで言った。
「うん……私、エイミーっていうの。ここの店員。迷ってるって聞いて、店長が迎えに来るようにって言ってくれたの。」
ねっとりとした声が、何とも可愛らしかった。
あ、違う……
「い、いや……そんな、わざわざ迎えに来ていただくなんて、申し訳ないです。」
河馬は慌てて一礼し、言葉もろくに続かなかった。
「そんなに気にしなくていいよ。私がしたくてやってるんだし、人を助けられて嬉しいんだから。」彼女は白い首に手をやり、緑のリボンを整えてから、ねっとりと笑いながら言った。
ああ……本当に可愛いな……
河馬は彼女を見つめ、またもや恍惚としてしまった。
「河馬さん、どうしたの?」
距離が近づき、ほんのりと赤みを帯びた温かい黄色い光が視界に広がり、息遣いさえも感じられるほどだった。
近すぎる……
その顔と、繊細な鼻の下の、ほんのりピンク色の唇。
熱い吐息が口元に漂っているようだ。
河馬は今すぐにでもその唇にキスして、滑らかな舌を味わいたいと思った。
しかし……
しかし!
ふと、自分は指名手配されているかもしれないということを思い出した。
そう思うと……
河馬は慌てて顔を上げ、必死に頭を掻きながら話題を変え、何か気の利いたことを言おうとした。
「ああああ……いや、ただ、都会の人がこんなに親切だとは思わなくて。」
その言葉に、河馬は自分で自分を平手打ちにしたくなった。
というのも、こんなに下手くそな誤魔化し方では、かえって怪しまれるだけだからだ。
もちろん、自分が彼女にキスしたいと思ったけど怖くてできなかったなんて言えるわけがない。
しかし幸いなことに……
その少女は自分の口元に指を当てて、首をかしげている。どうやら意味がわからなかったようだ。
そこで河馬は慌てて説明した。
「あああ……いや、ただ、さっき返信したらすぐに迎えに来てくれるなんて思わなくて。せめて面接とかあると思ってたから……」
河馬は必死に頭を掻き、さらに言い訳を重ねたが、自分でも何を言っているのかわからなくなっていた。
しかし、エイミーという少女は拳で手のひらをポンと叩いた。
「ああ、そういうことか。実はね、河馬君、気にしなくていいんだよ。」
彼女は信じた。なんと信じてくれた。
これってあまりにも純粋すぎるだろう。
彼女はそう笑いながら、河馬の背中を気軽にポンポンと叩いた。
またしても河馬はふらふらしてしまった。
君?どういう意味だろう?まあいいや、とにかくこの人は本当にいい人だ……O(≧口≦)O
「最近うちの店はいつも人手不足で、あまり堅苦しくなくてね……」
エイミーは甘く笑い、目を細めてすべてを理解したかのように言った。
「よければ、河馬君、今すぐ働けるよ……」
河馬はその言葉に一瞬固まったが、すぐに興奮した。
「本当ですか?」
エイミーは笑ってうなずいた。
「もちろん。店のみんなはいい人たちだからね。」
おお……河馬も奇妙な陶酔に浸り、このエイミーという少女は本当にいい人だと思った。
いい人だ……
本当にいい人……
あるいは、彼女は俺を見て一目惚れして好きになったのか?
あり得る……
そんな可能性も……
店に着くと、この店は決して狭くはなく、KOCのようなファストフード形式の店だった。椅子の配置やレンガのテーブルはとても丁寧に設計されている。本来、こういう温かみのある薄暗い灯りの店はとても居心地がいいはずなのに、しかし店の入り口の決まりきった灯りや、ずらりと並んだ少女たち、そしてバッグを持っていつでも飛び出せるように準備している、おさげで明らかに粗暴そうな女がいる……どうやら……
すべてが……
「つまり、すべては俺を試すためのものだったのか……」
河馬はうつむきながら、目の前の連中を見つめた。
心の中で思った。本当にバカなのは自分だったんだ。
「ほらね、エイミーお姉ちゃんにちょっかい出そうとしたでしょ。あんなに近づいた時、私はもう飛び出しそうだったよ。」あの粗暴な女の名前はメイリンという。もちろん、俺は彼女が少しも美しいとは思わない。胸の大きさが少しは心を揺さぶるが、彼女の心は黒い。だから大悪党だ。
「あの時は私も怖かったよ。もし本当にキスされたらどうしようって……でも、まあ、よかったよね。河馬君はそんな人じゃなかったしね。」
エイミーは笑いながら河馬に言った。
「ちっ……実は、君が言わなければ、この豚野郎は自分が試されてるなんて気づきもしなかっただろうね。」
メイリンは首を振り、腕を組んで胸を揺らしながら言った。スカートの下からは太ももの神秘的な領域がちらりと見え、なぜか異様な魅力を放っていたが、河馬にはそんなことを考える余裕はなかった。
しばらくして、エイミーがぼんやりと呟いた。
「ただ、こんなに無邪気な人を騙すのは、すごく罪悪感があるの。逆に、もし彼がそういう人じゃなかったら……多分、試す勇気すらなかっただろうな。」エイミーは胸のあたりに手を当てて言った。
人?
河馬は今、なぜかよくわからない悲しみを感じていた。
壁際にしゃがみ込み、泣きそうだった。
「あらあら、男の子がそんなことで泣かないでよ……」
一人の女の子が河馬の肩をポンと叩き、ティッシュを差し出した。
河馬はわざとすすり泣くふりをして言った。「俺、エイミーお姉ちゃんのことが好きになっちゃったよ。彼女もそう思ってくれてると思ってたのに。」
これを聞いて、周りの連中は「ぷっ」と吹き出した。
エイミーだけが自分の頬に手を当てて言った。「あらあら、好きになってくれて嬉しいけど、ごめんね……」エイミーは首をかしげて「もう彼氏がいるのよ。」
「ううう……」河馬は顔をしかめ、心がひどく痛むようだった。
エイミーはただ微笑むだけだった。
その後、メイリンが重々しく肩を叩いた。痛くはなかったが、河馬はわざとすごく痛そうなふりをした。
「あいたっ!」
メイリンは笑いながら、河馬の首に腕を回して言った。
「私達も安全を考えてのことなんだよ。男の人が一人もいないと、夜にここで働くのも心配でしょ。」
一番心配なのはあんたの方だと思うけど……
それに……
ああ、つまり俺だから安心なのか?
俺ってそれほど人畜無害なのか?
知ってるか?
数日前、俺は変態呼ばわりされたんだぞ!
まあ……それは誉められた話じゃないけど。
河馬は心の中でツッコんだ。
隣で揺れているその温もりに心が惹かれ、自分も顔を赤らめるふりをしたのは確かだ。実際、心がむずむずしていた。
しかし実際には……
ああ!╮(╯▽╰)╭ 全部が策略ばかりだ。
もっと誠実じゃダメなのか?
でも、その温もりと、腕から漂うかすかな香りは確かに心をちょっと慰めてくれた。いや、ちょっとどころか、本当に最高の気分だった……
次に……
少し大人びた、猫耳をつけた女性が言った。
「でも、河馬君は本当に紳士的だったね。エイミーに騙されなかったなんて。」
紳士……確かに俺は紳士だ。
でも……
紳士……これって本当に褒め言葉なのか?わからない。
自分はむしろ騙されてみたかった。
そうすれば、一生後悔しないだろうと思ったから。
なぜなら……
自分みたいなひきこもりが、一生彼女なんてできる確率は低いと感じていたからだ。
そこで彼は一つ質問を思いついた。
「ところで、『君』って呼ばなくなったのはどうして?」
突然、河馬は変な質問をした。
すると、周囲が一瞬静まり返った。
エイミーが河馬をじっと見つめ、河馬も自分が失敗したことに気づいた。
慌てて口を押さえた。
「あらら、やっぱり……河馬君はACG好きなんだね。」
「どすん!」
河馬は突然その場に跪いた。
人生を見つめ直すような表情で、まるで人生を暴かれたかのようだった。
「言わないでください……」
河馬はそう懇願した……
エイミーは髪をかき上げて言った。「それは君の態度次第だね……」
そして周りの仲間に向かって言った。「ほらね、みんなの言う通りだよ。」
河馬は両膝を抱え、屈辱的な気持ちで承諾した。
しかし実際には……
やっぱり人生は演技だ。
結論として、安心感がないなら、一つ弱点を差し出せばいい。
店は正直言ってそれほど忙しくなく、お祭りの時の家の生花店くらいのものだった。河馬の仕事はまだぎこちないが、慣れないわけではない。ただ、いわゆる仕事は注文を取るサービスマンだけなので、本当にみじめだった。何人かのお姉さんにからかわれて、河馬は真っ赤になってしまった。
やっぱり……都会の女の子は本当に奔放だ。
でも、ただのからかいだった。
河馬はその距離が思っているよりずっと遠いことを理解していた。
皿を運びながら、隣の女の子が河馬に話しかけた。
「河馬君、田舎から来たの?」
この女の子は茶色がかった髪を二本の紐で結んでいる。店員の青い制服を着ているが、胸の膨らみはかなり控えめだ。名前はイエユアンといった。
「うん……そうだよ。」
河馬はうなずいた。
「そっちの風景はいいの?」
彼女はカートを押しながら明るい廊下を歩き、そう言った。
「まあまあかな……特別いいとは言えないね。」
河馬はそう答えるしかなかった。
「でも、どうせこんなゴミみたいな大都会よりはましでしょ。」
彼女は河馬を見て、そして客と上手く交渉しているエイミーを見た。
あんな風に客と笑い合って……
あるいは、誰とでも笑い合える人になるのは、並大抵のことじゃない。
本来なら……
「どうしてそう言うの?」と聞こうと思ったが、途中でエイミーの姿とイエユアンの様子を見て、ため息をつきながら言った。「君もああいう風になりたいの?」
その女の子は深く河馬を見つめ、少し驚いた様子で言った。
「さあね……うまくやるには、そうならなきゃダメなのかな。」
河馬は微笑んで言った。「そんなことないよ。今のイエユアンも十分輝いて見えるけどね。」
イエユアンは廊下の天井の灯りを見上げて言った。「まさか、女の子を褒めるなんてね。」
「俺はあんまり嘘は言えない方だ。」
河馬はうつむいてそう言った。
「でも……確かに嬉しいよ。」イエユアンはため息をつき、笑いながら言った。彼女は河馬を見てはいなかったが、それでも笑っているのがわかった。
そして……
彼女は髪を下ろし、首を振った。
またゴムで一つ結びにした。
「あとはよろしくね……」イエユアンは河馬に言った。「彼氏が迎えに来たから。」
彼女は外の車を指した。
河馬はちらりと見て、うなずいた。
カートを受け取り、そのまま押し続けた。
イエユアンは外に出て、車のドアを開け、ベージュと白のシートに座った。
男が「あれは誰?」と聞いた。
「同僚。」イエユアンが答えた。
「楽しそうに話してたな?」男が言った。
「ああ、そうだね。ヤキモチ?」イエユアンが返した。
「ちっ、ああいう大人しい奴に嫉妬するわけないだろ。行こう、つまらない話はやめよう。」
「でも、結構面白いやつだったよ。誰かに似てたな……」
「誰?芸能人?」
「ほら、あの武装して民衆の民主的安全を守るって宣伝してる議員、あのヤクザの人。前に宣伝車を見たことあるけど、ちょっと似てた。ただ違うのは、あいつはすごくいじめられそうな顔してるってこと。」
「ああ、それなら安心だな……はは……本物のあの奴ですら近づきたくないよ。」
アクセルを踏んで、そのままUターンして走り去った。
河馬は外を見つめ、ただ苦笑いを浮かべるだけだった。
口には出さなかったが、心の中はやはり寂しかった。
何と言っても、手に入れかけの女を……いや、手に入れたわけでもないし、これからも手に入らないだろう。
自分のはっきり弱そうな顔、目立たない存在感で言えば、個室に入っても二度咳をしなければ、客にすら気づかれないようなものだ。金もないし、浪費する余裕もない。卓越した才能もない。そんな奴に彼女ができるわけがない。
「はは……慣れればいいさ。」
そう自分に言い聞かせた。
入り口に立っていたエイミーが笑いながら近づいてきた。
「どうして一人なの?」
河馬は肩をすくめて言った。「別に……イエユアンが先に帰っただけだよ。」
「彼氏と帰ったんでしょ?」エイミーは笑いながら、河馬の暗い表情を見て得意げに言った。「寂しい?」
河馬は「ぷっ」と吹き出し、大げさに言った。
「そんなわけないよ。知ってるだろ、エイミーお姉ちゃんを見た瞬間から一目惚れしたんだから。」
エイミーは驚いたふりをして、ねっとりとした声で言った。「そうなの?でも、ちゃんと働くって約束したよね?」
河馬はうなずいた。「もちろん、あなたのために働けるのは光栄だよ。」
「でも今日、お客様から二件もクレームが来てるよ。」
エイミーはねっとりと言い、声は何とも哀れっぽかった。
「それが君の約束なの?男らしさが足りなすぎるよ。」
その哀れな声に、河馬は自分自身を嫌悪し始めた。
「お客様が何て言ったの?」
「怖いって言われたよ。いつも急に現れるって。」
「ノックはしたよ。俺はもともと存在感がないんだ。俺のせいじゃない。」河馬は言い訳した。「ドアを叩けってわけにもいかないだろ。」
エイミーは腰に手を当てて言った。「だから、これあげる。」
エイミーは鈴のついた蝶ネクタイを取り出した。
「へへ、いいアイデアでしょ?可愛くもなるし。今日からこれをつけて働いてね。」
「俺はサンタクロースじゃないよ……」河馬はそれを受け取り、ポケットにしまった。
エイミーは笑いながら言った。「エイミーのサンタクロースになってくれればいいよ。へへ。」
そんな甘い声。
「じゃあ、おやすみ!」エイミーは河馬に手を振り、ショルダーバッグを提げ、緑の結び目模様の花柄スカートに白いショートベスト姿で、何のブランドかわからない小さなバッグを下げて外に出ていった。ふと振り返って「これを片付けたら、帰っていいよ。」と言った。
河馬は彼女に笑いかけて言った。「うん……おやすみ。」
そして天井の灯りを見上げてため息をついた。
親しげに話してはいるが、彼女のような女の子は一生自分には手に入らないとわかっていた。
あるいは……
触れることすらできない。
なぜなら、最も近づけたあの瞬間を、自分は無駄にしてしまったから。
ああああ……
まあいいや。
一歩ずつやろう。
何にせよ……まあ、軌道に乗ってきたと言えるだろう。
人生はずっとこんなもんじゃないだろうし。




